読後感想文「発達障害大全」
黒坂真由子 著「発達障害大全 「脳の個性」について知りたいことすべて」を読みました。
10年前に読みたかった本であり、あるいはK自身が書いたかもしれない本である。いや、実際には書く取材力も能力も何もないからKにも書けたという意味ではなくて、Kがこれまで本を読んだりテレビを見たり、ネットで知ったり医師に先生にOTに聞いたりしたことをまとめたらたぶんこうなる。それのスゴいやつ。そういう書籍である。
KがまとめたらASDについてになるかもだが、この書籍はADHD、LD、境界知能にも均等に詳しく、著者はLDのお子さんをお持ちだというからここに偏っていないというのもすごい。
発達障害については新書が山ほど出ていて1冊1冊に、当事者保護者の知りたいことが全部詰まっているかというとほんの一部ずつであり、知りたいことを追いかけてすべての書籍に目を通すとか時間的経済的に無理がある。しかも基本的に学者が書いていて理解するのに難しいし、後半は先生の書きたいことが書いてあって何だか分からなくなるのが新書あるある。
この書籍の素晴らしいところは、著者がこれらの関連書籍を網羅して、専門家や当事者に丁寧に話を聞いただけでなく、インタビューして考えたというまとめページがあるところ。具体例と学術的論理を結びつけ、つまりこういうことである、という落としどころがある。
例えば沖田✕華さんの当事者エピソードと岩波先生の医学的解説が結び付けて落としこむのはライターでないとできない仕事だ。沖田さんの本は読んでいてちょっとツラいし先生の本は難しい。
Kはこれを自分でやろうとしたがなかなか素人の個人ではやりきれない。
聞きたいことを平易な言葉のインタビューでまとめてあるから、各専門家の先生の著作を別々に読むより頭に入りやすい。これを読んでから先生の著作を手に取る方がたぶんとても勉強になる。
内容の方は、そういうわけで10年くらい発達障害についてかじって来たから既に知っていることは多い。しかし雑多に放り込んでおいた素人知識を体系化することができた。知らない人はこれで発達障害のことを知ることができるし、知っている人はも頭に散らかっている知識がつながるからまた新しい視点が手に入る。
知りたいことすべてを知ることができる。
分厚いから本を読む習慣がない人は敬遠するかもしれないけど、物体として触り心地のいい書籍でもある。ぜひ触って読んでいただきたい、全人類に。