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「教え方が下手なトレーナーほど儲かっている」という逆説と、その背景にある構造

まずは結論!


パーソナルトレーニング業界には、知識や指導スキルをおろそかにしているのに、営業・宣伝にばかり力を入れて顧客を集め、結果的に「儲かっている」トレーナーが存在する。つまり、教え方が下手なトレーナーほど、なぜか稼いでいるという逆説的な状況が起きているのだ。


福岡で実地調査をしてきた


実は、筆者自身が福岡市内のパーソナルトレーニングジム約10社を体験してみたことがある。多くのジムは素晴らしいトレーナーを擁していた。開始時と終了時で体の変化を実感させてくれる高度なプログラム構成や、顧客に合わせた的確なアドバイスをしてくれるトレーナーが少なくなかったのだ。
しかし、こうした「指導が上手い」トレーナーがいるジムに限って、なぜか顧客数は伸び悩んでいた。一方で、正直あまり指導がうまいとは思えないトレーナーでも、SNSで精力的に投稿し、地域イベントに顔を出し、DMを大量に送って顧客を獲得しているジムもあった。料金はどこも似通っているのに、集客力には大きな差が出ていた。


この状況の背景を解説する


この差は、「顧客がトレーナーの真価を判断しにくい」という構造的要因に起因する。トレーニングや栄養学の知識をあまり持たない顧客からすれば、トレーナーが少々教え方が下手でも「プロっぽい雰囲気」や「前後比較の写真」「明るいコミュニケーション」で、それなりに凄い人だと思えてしまう。また、意識が高い顧客は指導スキルを厳しく評価するが、そこまで知識のない顧客層には、「痩せさせてくれそうな演出」や「手厚いフォローアップを謳う宣伝」のほうが刺さりやすい。
さらに、トレーナー側から見ると、知識や指導力の向上には時間がかかり、目に見えた広告効果をすぐには生まない。対してSNS運用やDM送付、イベント参加など、営業面に特化すれば短期間で多くの新規顧客を取り込める。すなわち、教え方の質と売上は必ずしも比例しない。
以前のブログでも書いたように「顧客の知識レベル」と「トレーナーの知識レベル」のギャップが付加価値を生む。知識が豊富でも顧客を感動させるとは限らず、中途半端な知識でも、知識のない顧客には「すごい」と映る。加えて、顧客がその価値を厳しく測ろうとしない場合、宣伝力やコミュニケーション能力が売上を左右することになる。
結果的に、教え方が下手でも、顧客の目に留まるPR戦略と派手な広告で短期的に顧客を集められれば、高い収益を上げ続けることが可能になる。

改めて結論!!


この現状から学べることは、トレーナー側は純粋な知識研鑽だけでなく、自分を効果的に発信・営業するスキルも必要であるということだ。一方で、顧客側は、優れたトレーナーが埋もれないように、情報収集を怠らず、質の高い知識と指導力を備えたトレーナーを選び、応援することが重要だ。
理想は、トレーナーが知識研鑽と宣伝を両輪で回すことで、高品質な指導と安定的な集客を両立すること。そして、顧客も「派手な広告」だけに惑わされず、長期的な目線で自らの健康維持に資する、真に実力あるトレーナーを選ぶことで、健全な業界が育まれていくはずだ。

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