アカデミックな豆腐屋

アカデミックな豆腐屋

最近の記事

アカデミックな豆腐屋になるためにまだ足りないこと

「豆腐屋必成合宿横浜」 主催者:和田司郎さん 1月中旬土日の2日間、豆腐業界の諸先輩方のありがたいご縁で、非常にためになる勉強会に参加させていただいた。 帰り道、自分の中での「目指したい姿」と「今の状態」とのギャップを帰り道ですごく感じていて、考えているだけだと本当にごっちゃになってしまいそうで、その曖昧なまま忘れてしまいそうだったので、詳細が頭の中に残っているうちに、心に残ったことをブログアップの形で残しておきたい。 本当はもう少し早めに上げたかったが... 勉強会の内容

    • 人工知能を使って豆腐屋が何か予測できるとしたら嬉しいことって何だろう?

      少し突飛なトピックになるが、最近色々と勉強を進めて、今流行になっているAI(人工知能)を作る側の仕事・研究を進めているのだが、その中でちょっと気になることが一つある。それは、 「予測出来て嬉しいことって何??特に豆腐屋として。」 である。 AIが活きる場面とは 僕自身は、人工知能という大きな概念の中にある一つの手法である深層学習(ディープラーニング)を使う機会が最近あり、色々と勉強させてもらっているのだが、勉強しながら実際に使える形までを一通り経験して思うのは、 「予測す

      • 大豆に含まれる、「ミネラルと結合する物質」とは

        以前、「豆乳は危険だ!!」の記事に対する科学的反論として書いたブログで、大豆がタンパク質の吸収を阻害するという説を否定した。 さらにもう一つ追加で書いておきたいのが、ミネラルと結合する物質である「フィチン酸」の影響についてだ。フィチン酸の含有量は豆腐の製造にも影響してくる。 フィチン酸についてフィチン酸は、大豆中に含まれるリンの存在形態の一つで、大豆中に含まれるリンの約80%はフィチン酸として存在することが分かっている。フィチン自体は大豆中に2~3%含まれている。 フィ

        • 草鞋は何足まで履ける?~2019年振り返り~

          2019年3月からブログアップを始めてもう10カ月目。 今までがっつり一年間を振り返ったことはなかったので、2019年のうちに今年がどんな一年だったかを振り返っておこうと思う。 僕が一年を振り返る上でのキーワードは、「何足まで草鞋を履けるのか」だったように思う。 「二足の草鞋を履く」ってどういう意味?まずはこの言葉の意味を知ることから。 改めてネットで検索して調べてみると、「二足の草鞋を履く」とは、 両立し得ないような二つの職業を一人ですること。また、相反するような仕事を

          豆腐屋の朝はなぜ早いのか

          2019年もいよいよ終盤。 12月は不覚にもブログを2週連続で書き溜めてしまったので、この年末で挽回すべく書いていきたい。1年の最後で後悔はしたくない。 さて、年末の年の瀬。 この時期は決まって、一年で最も体力が削られる。 その理由は、超絶肉体労働と、朝の早起きである。 肉体労働は特段珍しいことではないが、朝の早起きは睡眠時間が削られるので、続くと結構しんどいもの。うちの場合は、年末は2時か3時起きが恒例になっている。 今日は、「なんで豆腐屋の朝が早いのか」を自分なりに考

          豆腐屋の朝はなぜ早いのか

          Google Analyticsで嘉平豆腐店のサイト分析してみた

          10月にサイトをリニューアルしてから約2カ月、Webページのスマホでの見栄えもよくなって、通販サイトの構成もちょこちょこ買いやすくして、割と見やすいサイトにはなったかなあと思う。 嘉平豆腐店サイト↓ https://www.kaheitofu.com この際なので、Google AnalyticsというGoogleのサービスで、嘉平豆腐店のサイト訪問者の時間や場所をちょっと見てみた。今週は豆腐の科学ではないがWebページの科学をちょっと挟んでみる。 10月のサイト訪問状況

          Google Analyticsで嘉平豆腐店のサイト分析してみた

          女性の味方、大豆イソフラボンについてまとめてみる

          今週は、糖類の第三弾、大豆の代名詞にもなりつつある「イソフラボン」について、成分の特徴や機能性を、大枠解説しようと思う。 イソフラボンの機能面については、豆腐事業者も消費者も興味関心を寄せるところだろう。今回の記事が少しでもイソフラボンの理解に役に立てば幸いである。 大豆中でのイソフラボン毎度恒例、種子のどの部分にどれくらい含まれているのかだが、イソフラボンは、このように含まれている。(Tsukamoto et al., 1995) ・大豆の子葉部分に0.2~0.3% ・

          女性の味方、大豆イソフラボンについてまとめてみる

          豆乳が泡立つのはなんで?

          大豆は水と一緒に砕くと、加工時に泡を吹く。 大豆から豆腐を作ったことがある人であれば誰でも経験したことがあるだろう。 この泡が発生する要因は、実は一つの糖類が原因になっている。 糖類シリーズNo.2として、大豆の性質として非常に重要な成分になるので、今日はこれについて解説したい。 何故、泡が発生するのか?そもそも、石鹸や洗剤はなんで泡つのか? ペットボトルに水を入れて振っただけでは、泡はすぐになくなってしまうが、洗剤を数滴垂らして振ると、細かく泡立ってなかなか泡は消えない。

          豆乳が泡立つのはなんで?

          大豆/枝豆の甘さの正体について

          前回までは、タンパク質、脂質と成分の話をしてきた。今回は糖質の話をしようと思う。 枝豆、豆乳、豆腐どれにしても、やっぱり「甘い」という味は、美味しさを決めるかなり大きな要素であることは間違いない。ただ、枝豆の「甘い」と、豆乳の「甘い」は、完全に同じ成分が寄与しているわけではない。糖類にもいくつかの種類があるためだ。 知っている人は絶対に知っている内容ではあるが、豆知識程度にでもなれば。 そもそも大豆に含まれる糖質って何? 大豆にはいろいろな品種があるが、含まれている糖質

          大豆/枝豆の甘さの正体について

          豆乳に油が浮かんでいない理由

          一般的に知られているように、大豆からは大豆油が採られるように、大豆には脂質が含まれている。成分量としてはタンパク質の次に多い成分で、外国で生産されている大豆の主な用途の一つが、この油を取り出すためである。 で、大豆から作られる豆乳や豆腐、湯葉などの食品にももちろん、油分が多く含まれているわけだが、豆乳の表面で大豆油そのものが浮いているところを見たことがある人はいないと思う。なぜだろう?? 前回まではタンパク質の話をしたので、今日は脂質のお話を少し書いていこうと思う。 大豆

          豆乳に油が浮かんでいない理由

          第9回ニッポン豆腐屋サミット@岡山

          今週末の2019年10月26,27日と、第9回ニッポン豆腐屋サミット@岡山に参加してきた。参加者は200人超えたとのことで、第五回の京都のサミットの時を思い出させるようなサミットだった。 サミットの内容も個人的には今までで一番濃かったんじゃないかと思う内容で、去年の西日本豪雨で被災した後でも全力で準備を進められた実行委員の方々の努力が目に見えるようなサミットだった。実行委員の方々、本当にお疲れさまでした。 本当に学びの多かった今回のサミット、記憶の中で学びが薄れていくのは

          第9回ニッポン豆腐屋サミット@岡山

          大豆がタンパク質の吸収を阻害するって本当?

          豆腐の研究でメインになってくる大豆のタンパク質は大豆の「貯蔵タンパク質」(3回前のブログで解説した7Sや11Sといったグロブリン)だが、大豆には、貯蔵タンパク質以外のタンパク質が存在する。 それが「非貯蔵タンパク質」と呼ばれる。 非貯蔵タンパク質の中には、加工次第で生体に直接影響を与える物質も存在するが、色々と誤解のある記事も出回っているので、エビデンスをもとに解説したい。 タイトルは、よく世間で誤解されている「大豆がタンパク質の消化吸収を阻害する」という件について書いている

          大豆がタンパク質の吸収を阻害するって本当?

          嘉平豆腐店HP、リニューアル

          2週連続の時事ネタになってしまうが、今週のブログは、ようやくリニューアルした「嘉平豆腐店の新ホームページ」について書いていこうと思う。 とりあえず始めたホームページ 6代目である父親の代になって20年くらい経った頃、まだ僕がガラケーを持っていた頃の話なので10年くらい前の話だが、初めて自社のホームページができた。 ※Web制作業界では、「WordPress」というホームページ制作の無料ツールをカスタマイズして、格安でホームページ制作を請け負う制作会社が多かったころの話だ。

          嘉平豆腐店HP、リニューアル

          豆腐品評会 からの 工場の祭典2019

          10月第一週目、世間の増税・軽減税率対応で本業の仕事も立て込む中、大規模イベントも立て込む週だった。 今回のブログは一回アカデミックから離れて時事ネタを。 全国豆腐品評会本選 ※この写真は今回の10月2日写真ではないです。 10月2日は豆腐の日。全国豆腐品評会の決勝戦が決戦上野の地で行われた。2015年に京都で品評会を立て上げてこれでかれこれ5回目となる。 豆腐品評会には当初から実行委員として関わっているので、今回も主催側として参加した。 準備自体はスムーズに終わり、僕は

          豆腐品評会 からの 工場の祭典2019

          ~畑の肉と言われる所以~ 大豆の貯蔵タンパク質の種類について

          前回のブログでは、大豆のタンパク質は「貯蔵タンパク質」と「非貯蔵タンパク質」に分けられると解説し、大豆のタンパク質の大まかな分類について解説した。 ずばり、豆腐の構造の骨格を形成する主成分であり、我々が豆腐を食べたときに栄養分として吸収されるタンパク質成分こそ、「貯蔵タンパク質」である。今日は、自分自身の記憶の定着も兼ねて、大豆の「貯蔵タンパク質」について少し詳細を書いていこうと思う。 文字が多くなってしまうこと、ご容赦いただきたい。 大豆の「貯蔵タンパク質」 1970年

          ~畑の肉と言われる所以~ 大豆の貯蔵タンパク質の種類について

          大豆のタンパク質の正体についてざっっっくり書いてみる

          先週、大学院修士の研究時代に愛読していた研究本「大豆の機能と科学(朝倉書店、2012)」が届き、復習のために冒頭から読み進めている。 読み進めていけばいくほど、自分自身まだまだ大豆について知らないことが多いと自覚するし、過去の偉大な研究者の成果をたった4000円程度の書籍代で体系的に学ぶことができることには感謝しかない。 一般の消費者の中には、大豆や豆や豆腐の栄養性・機能性について、表面的な知識で書かれた記事を読んで誤解している人もいると思うが(例えば、豆乳は体にとって悪い

          大豆のタンパク質の正体についてざっっっくり書いてみる