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ロングスリーパーの夜型人間。毎朝起きられないせいで家族からブーイングを受け、肩身が狭い思いをしている。夜型なのは自堕落ではなく遺伝子によるものだと固く信じている。

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ロングスリーパーの夜型人間。毎朝起きられないせいで家族からブーイングを受け、肩身が狭い思いをしている。夜型なのは自堕落ではなく遺伝子によるものだと固く信じている。

最近の記事

【あとがき】パンデミック・ウォーズ|初めての長編小説を書き終えて

子どもの頃から国語や絵を描くことが好きで、本を出版したいな…と思いながら、物語を書くことすらせず、いつしか絵を描くこともなくなってしまった私。 何を血迷ったのか、クリエイティブとは真逆の職業に就いてしまい、若い頃は「自分にはこの仕事向いてなかった…」と苦悩したこともありましたが、そうこうしているうちに人生もだいぶん過ぎてしまいました。 平凡な生活を送ってきた私が、なぜか急に「小説を書こう!」と思い立ち、人生で初めて書いたのが、この「パンデミック・ウォーズ」でした。 投稿

    • パンデミック・ウォーズ(第10話)ついに完結!僕らが向かう混沌とした未来

      第10章 未来へ 治療薬の投与から三日が過ぎた。父さんは腎機能も低下し始めていた。治療薬の効果は以前はっきりせず、容体は一進一退だと主治医から電話で説明された。 「治療薬の効果が表れるのは、一週間が限度でしょうか。早い人はすぐに効果が現れますが、一週間を越しても呼吸状態が改善しなければ、治療薬の効果はなかったと判断するしかないかも知れません」 主治医は僕と母さんに、iPadを使った動画面会を勧めた。コロナ禍で医療機関は面会謝絶になっているため、患者と家族との面会は、スマホやi

      • パンデミック・ウォーズ(第9話)対立の源は何?治療薬開発の救世主現る!

        第9章 対立の源  サピオフロースの開催日になった。 気乗りしないながらも、少しでも治療薬開発のヒントが得られればと、19時前10分にはパソコンの前に座り、招待リンクをクリックした。 画面に並ぶ参加者の顔。 「えー、みなさま、本日もお集まりいただきありがとうございます。本日は、事務局の河瀨に代わり、私が司会進行を務めます。不手際がございましたらご容赦ください」 珍しく三木谷教授が開会の挨拶をした。やはり琉斗は研究室に来ていないのか。   「本日は、なぜ新型コロナウイルスが発生

        • パンデミック・ウォーズ(第8話)コロナで父倒れる!その時、駆は…

          第8章 コロナ治療薬の開発 「ええ……、はい。そちらでは予約は難しいんですね。わかりました。ごめん下さいませ」 プツッ。母さんがため息をつきながらスマホの通話を終了させた。 「困ったわね。発熱外来、どこもいっぱいで予約が取れないわ」 母さんがスマホでコロナ発熱外来を検索している。 「東大病院で受けさせてもらえないの?」 「父さん、そういう特別扱いみたいなこと、嫌だっていうのよ」 「そんなこと言ってる場合じゃないんじゃないの?」  でもねえ、とつぶやきながら、なおもスマホを検索

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          パンデミック・ウォーズ(第7話)まさかお前が…!裏切られた駆はどうする?

          第7章 怒りと裏切り、そして絶望   第3波を引き起こしたのは、新たな変異株だということが明らかになった。そしてこの変異株は、海外から日本に持ち込まれたものではなく、日本が変異の発祥だと確認された。この変異株はWHOによって「イデンドル株」と命名された。 そのせいで、ツイッタラーたちは色めき立った。   《位田ンドル株だってよ!ウケる! やっぱりアイツが原因か》   《ナイスネーミング》   《変異株をまき散らすイデンドル会長、 日本から消え去れ》   《WHOの元アジア事務

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          パンデミック・ウォーズ(第6話)変異ウィルスが街を襲う!その時、駆は…

          第6章 変異ウイルス   「駆、昨日夜更かししたみたいね。ダメよ。規則正しい生活が大事なんだから」 翌朝、僕は決まった時刻に起きられず、母さんに起こされてしまった。 「ごめんなさい」 そそくさと席に着く。 「ほら、早く食べてしまいなさい」 ラップがかけられた朝食がテーブルに置かれていた。母さんがテレビをつけると、いつものようにNHKニュースが流れてきた。 「このように観光地はにぎわっており、観光業界から歓迎の声が上がっている反面、救急医学会から、GOGOトラベルに懐疑的なコメ

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          パンデミック・ウォーズ(第5話)人命と経済、果たしてどっちが大事なんだ!

          第5章 人命と経済 科学者の集うサロン、サピオフロースに初めて参加した晩、三木谷研究室の助手でサロン事務局を担当している河瀬琉斗からメールが届いた。 《位田君、お疲れ様。サロンはどうだった? 今日のテーマはゲノム治療薬開発のアイディアを得るためのブレインストーミングだったんだが、理解できたかな。とはいえ君はIQ185だってね。しかも位田先生の息子さんか。もしかしたら僕より理解できたのかも知れないな。君も将来は分子生物学をやるの? 何になるにせよ、それだけ賢ければ将来有望だね》

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          パンデミック・ウォーズ(第4話)駆、秘密の科学サロンに入会!そこで出会ったのは…

          第4章 科学者たち 「駆~……、ごめん。アイスノン、新しいのに取り替えてくれない?」 リビングでNatureの最新号を読んでいると、背後から声がした。母さんが寝室からリビングに下りてきたようだ。家の中にいる時も化粧をしているほどの母さんが、珍しくパジャマのままだ。 「大丈夫? 熱は下がったの?」 僕は立ち上がってアイスノンを受け取った。 母さんは昨日から副反応の発熱でダウンしていた。ほかにも筋肉痛や倦怠感がひどいらしく、今朝からずっと寝室で横になっていた。 「うーん、

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          パンデミック・ウォーズ(第3話)ついにワクチン接種が始まった!アンチワクチン派を撃退せよ

          第3章 ワクチン  世界に遅れること2か月、日本でもようやくワクチンの接種が始まった。 欧米各国はいち早く接種に乗り出したというのに、日本のスタートが遅れたのは厚生労働省の落ち度とも言えるだろう。臨床試験をやり直すなど、手間取ってしまったせいだ。  とはいえ、接種可能になったことは喜ばしいことだ。ワクチンこそが人類が感染症と戦う最大の武器なのだから。  規定ではワクチン接種を受けられるのは12歳以上。5月生まれの僕はギリギリOKの年齢だ。当然、接種を希望した。  発達障害

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          パンデミック・ウォーズ(第2話)エビデンスをめぐる父と息子の複雑な関係

          第2章 エビデンス  それにしても、今年はとんでもない猛暑だった。8月の終わりの夕陽は、まだじりじりと窓に照り付けていたが、ほんのわずかに秋の和らぎを感じさせた。  今日も19時のニュースの時間になった。  ニュース画面がどこかの街頭を映し出している。日比谷公園の緑の中にリポーターが立っている。園内には日差しが降り注ぎ、蝉は賑やかに鳴いているが、人通りがなく閑散としていた。 「コロナで市民の生活にどのような影響があるのか、街の人に聞いてみます」 リポーターが住民にインタビ

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          パンデミック・ウォーズ(第1話) 引きこもり天才児、位田駆のコロナ禍の日常

          目次   第一章 実効再生産数 第二章 エビデンス 第三章 ワクチン 第四章 科学者たち 第五章 人命と経済 第六章 変異ウイルス 第七章 怒りと裏切り、そして絶望 第八章 コロナ治療薬の開発 第九章 対立の源 第十章 未来へ ☆☆各章リンクは随時公開☆☆ 第1章 実効再生産数   「厚生労働省によりますと、今日の東京都の新規感染者数は18,972人で、先週の同じ曜日の人数を大きく上回りました。これで、3週連続で前の週の感染者数を上回りました。全国では……」 番組のオー

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          小説の世界観に浸るむつかしさ

          本が好きで、いつかは自分の本を出版したいと夢見てきた。そう思いつつも、「手に職を」と全く違う職業に就き、実際に小説を書くことすらなく、ただの憧れとして心に仕舞いこんで生きてきた。 コロナ禍がきっかけで、急に書きたいものが降ってきた。2023年2月、生まれて初めて、10万字近くの長編小説を書き上げた。出来映えは素人作品そのものだが、10万字というボリュームを書き切れただけでも大満足だった。しかしそれきり、一年経とうとする今に至るまで、次の作品を生み出せていない。 アイデアは

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          深夜に弁当のおかずが増える件について

          ぶっちゃけると、私は朝が苦手である。筋金入りの夜型だ。 「体内時計も遺伝である」という説がある。なるほどそれが真実なら、両親も夜型なのだから、私は生まれつきの夜型人間なのであろう。実家では深夜0時でも両親がワイワイと話しているくらいなのだから、後天的につくられた生活リズムかもしれないが。 しかし、そんな私が結婚した人は典型的な朝型だ。21時を過ぎると眠くなり、たまに夜更かししても0時近くなると目を開けていられないのだという。21時を過ぎると、子どもと一緒に寝室に引き上げて

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          【掌編小説】朝茶は七里に帰っても

          「電車の時間まで、まだ時間はあるんやろう?  お茶、飲んで行かんね」 「そうやね」 と返事してテーブルの椅子に腰かけると、母が茶筒の蓋を開け、急須に茶葉を入れた。サラサラ…っと小気味よい音が響く。続いて滑らかな手つきで湯冷ましの湯を注ぎ、そっと蓋を閉めた。 「この蒸らしが大事とよ。若い人は、お茶の入れ方も知らん。蒸らしも待たんで、すぐついでしまうけん、いかんっちゃんねえ」 お茶農家の嫁として半世紀以上生きてきた母は、お茶の淹れ方にうるさい。最近町内会で見た若いお嫁さんた

          【掌編小説】朝茶は七里に帰っても