僕は作曲という趣味が嫌いだ
「DTM」とは、パソコンを使って音楽を作ることだ。
楽器を演奏できなくても、高価な機材を使わなくても、DAWというソフトを使えば、市販のパソコン1台で壮大な音楽を作ることが可能だ。
僕はかれこれ8年ほどDTMをしている。そういうと「そこそこベテランな作曲家」のように思われるかもしれないが、そうではない。
人生で初めてDTMに挑戦してから8年経過した、というだけのこと。
所詮趣味だし、プロ音楽家の足元にも及ばない素人レベルだと思う。
それはそうと、僕はDTMが嫌いである。
趣味で8年も続けていてそれはないだろう、と思われるかもしれない。
だが本当に、今すぐにでもDTMを辞めたいと思っている。持っているソフトやデータもパソコンも捨てたい。
なぜ、嫌いなのにそんな趣味を続けているのか。
はっきり言って、自分でもよくわからない。
嫌いなところは挙げればたくさん出てくる。
「作業がつまらない、面倒臭い、難しい」
「常に頭の中に音楽が流れてしまう病にかかる」
「音楽なんて極めても将来役に立たない」
一方で、満足のいく作品を完成させたときには、すさまじい達成感がある。初めて作曲を完成させたときには、何か奇跡が起きたんじゃないかと思うほど感動した。そして、次はもっとすごい作品を作りたいと思ってしまう。
そんな魔力が芸術にはある。僕はそれに侵されているのかもしれない。
楽しいなら良い。趣味を持つのは精神衛生上よいことだろうし。
でも、DTMは作業自体は楽しくはないのだ。面倒だし、常日頃から頭の中で音楽が流れてうっとうしく、ストレスがたまるばかりだ。素直に音楽鑑賞を楽しめやしない。
ストレスがたまると暴飲暴食したりして、生活習慣が乱れてしまう。頭痛が起こることも珍しくない。
イライラしながらゲームしている人を想像してみると、わかりやすいかもしれない。「なんで遊んでいるのに怒ってるの?」とツッコミたくなるだろう。DTMでは、ゲームオーバーになったりして衝動的に怒りが湧いてくるわけではないが、じわじわと嫌な感情が貯まり渦巻いている感覚がある。
ちなみに、僕はDTMが嫌になって、一度音楽を全て捨てたことがある。
CDもデータもパソコンも音楽機器もアカウント類も、とにかく音楽に関するものを何もかも捨てた。でも、音楽断ちは半年くらいしかもたなかった。
どうしても、また音楽を聴きたくなって我慢できなくなってしまった。そして、音楽を聴くとその流れでDTMに再び挑戦したくなってしまうのだ。
何かの病気なんじゃないかと思う。でも、これをどうにかできる医者がいるようにも思えない。確実に治せるというのなら100万でも200万でも払おう。
結局どうすればよいのか、まだ良い案を出せていない。
まったくもって面倒な世界に足を踏み入れてしまった。人生一番の後悔かもしれない。今後も楽しくないこの趣味を続けなければならないのかと思うと、憂鬱になる。