大阪城西の丸薪能2024
去る10月12日に開催された大阪城西の丸薪能2024に行ってきました。
番組は「二人静」「佐渡狐」「土蜘蛛」
昼間の「釣狐x萬斎」のあと、ダッシュで大阪城へ。萬斎さんや裕基くんがお出になるのだから絶対間に合うはず!とスケジュールを決めたのですが、狂言はそうね、二人静のあとだから余裕あるわよね……と会場についてから気がつく有り様。
「二人静」 前シテ/里人・後シテ/静御前 大槻文藏
シテ/菜摘女 大槻裕一
ワキ/勝手宮神主 福王茂十郎
女が菜摘をしていると、美しい女に声をかけられます。ふしぎに思った女は戻って神主に伝えます。神主は、それが遠い昔にこの世を去ったはずの静御前だと気づきます。勝手宮にのこされた静の装束を身に着けた女は舞い始めます。その後ろにはかげろうのように静も舞っています……
シテが二人並んで同時に舞わねばならないので、高い技量を備えた者が二人揃わなければならないという難しい曲とされます。これが見たくて観世会館から駆けつけたというわけです。大槻裕一くんの若々しく瑞々しい舞と、文藏先生の積み重なった歴史がにじみ出る重厚な舞。これを見ずしてどうする!? 幻想の世界、夢と幻。これこそが能だなぁ。後ろのライトアップ大阪城よりも、月よりも、お二人の舞は美しくきらめく光をまとう。きらきらと。
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「佐渡狐」 シテ/奏者 野村萬斎
アド/越後の百姓 野村太一郎
アド/佐渡の百姓 野村裕基
佐渡には狐はいないんだって? いやいますって ほんとにぃ~??
いるって!ね、奏者さま!(袖の下~)
昼間の釣狐とはうってかわって、ずっと楽しそうな萬斎さん。なんだかのびのびしている裕基くん。落ち着いた風情で要所要所をしっかり押さえる太一郎さん。袖の下のやりとりがすごく面白い。
佐渡にはほんとに狐はいないのかしら。江戸文化面からは佐渡はたぬき(むじな)・越後は狐、が定番のようです。
以下日文研のサイトから
狐のいるいないは横におき、とにかく楽しい狂言でした。
つぎは「土蜘蛛」です。
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土蜘蛛 前シテ/僧 後シテ/土蜘蛛ノ精 観世三郎太
ツレ/源頼光 大槻裕一 ツレ/胡蝶 笠田祐樹
ツレ/頼光ノ従者 上野雄介
ワキ/独武者 福王知登 ワキツレ/従者 喜多雅人
ワキツレ/従者 矢野昌平 アイ/独武者の下人 中村修一
よく知られた頼光の土蜘蛛退治のお話です。
療養中の頼光を襲う土蜘蛛、退却する土蜘蛛の血の跡を追う従者たち。北野天神の裏の塚に隠れているところを発見し、見事退治するといったお話。
ところで頼光の住まいはどこだろうと検索してみたら、一条戻橋近辺だったとのこと。設定としてはちょうどいいあんばいの距離ですね。ただ、北野さんや裏でもよく遊んでいたわりには土蜘蛛のうわさは聞いたことなかったな……
※ちなみに戻橋から今出川通を通って北野さんに向かうと、途中に世阿弥が住んでいたという屋敷跡(西陣中央小学校)があります。今は観世稲荷神社が残っていて、小学校の許可があればお参りすることができました(多分いまもお参りはできるんじゃないかな…)。
この曲で一番びっくりしたのは大槻裕一くんのとんでもない色気とイケメンっぷりです。裕一くんは映画やテレビに出てくるいわゆる「トンデモイケメン」ではないはずなのですが、一旦舞台に出ると「え? なに?」というほど輝く。リアル北島マヤです。浅葱色(多分…)の袴にふんわり肩にかけた真っ赤の狩衣。脇息にもたれる姿に釘付けです。もうそこしか目がいかない。あたりを完全に飲み込む存在感。「大槻」の名を継ぐにふさわしい若者だと、演能をみるたびに思います。いやあ、ほんとにすごかったです。
あと、ワキの人はいつだってすっごくかっこいいのですが、やっぱり今回もかっこよかったですー!
追記:配布されたアンケートに感想を書こうとしたのですが、どこにもないんですよ、感想欄。ただただ大阪にきていくらお金を落としました??という質問ばかり。さすが大阪~ 一番大切なのは楽しめたかどうかではないかしら。楽しければなんどでも来るし、なんどでも観る。おかねの話ばかりで困っちゃうな。
それから地謡座より右側(見所から見て)のSS席S席の人がなんだか気の毒で。スクリーンがあったとしても見づらかったろうな。