シェア
篭田 雪江(かごた ゆきえ)
2020年4月14日 12:02
彼は色のうすい男だった。無愛想で無口で、表情も乏しかった。道行くひとに挨拶されても、ほんのわずか頭を下げるのみ。一応生きていくための仕事にはついているが、与えられた雑務をやはり無表情でこなすのみ。昼休みも、皆が飯と共に寛ぐ輪からはずれてただひとり、冷たく埃の浮いた長テーブルの端で、もそもそと飯を口に運ぶだけだった。仕事が終わる時間が来ると誰よりも先に机を片付け、「お疲れ様でした」も言わ