第6回 対談・「スラムダンク」に魅せられて = 語ろう!鹿児島バスケ =
山崎俊氏(鹿児島レブナイズCEO)
宮迫崇文氏(県協会強化委員長・鹿児島工業高校監督・国体成年男子チーム監督)
政純一郎氏(スポーツかごしま新聞社代表)
コーディネーター
鮫島俊秀(鹿児島県バスケットボール協会)
映画「THE FIRST SLAM DUNK」が大ヒットだという。言わずと知れたバスケット漫画の金字塔「スラムダンク」(SD)の連載終了から26年の時を経て、映画として蘇った。
日本のバスケット界に多大な影響を与えたばかりでなく、「スポーツ漫画」としても秀逸な作品であり、勝者のメンタリティー、弱者が強者を倒すジャイアントキリングを起こす極意などが描かれていて、スポーツの世界を超えて人生のバイブルにしている人も多いのではないだろうか。作者の井上雄彦氏が伊佐市出身というところにも、何かの縁を感じる作品である。
今回は鹿児島レブナイズのCEO山崎俊氏、国体成年男子監督の宮迫氏と政、それぞれが思うSDや今回の映画、バスケットの魅力、鹿児島のバスケットに対する想いなどについて語り合った。
「リアル・スラムダンク」との出会い
鮫島 いよいよ国体イヤーの2023年を迎えました。この対談は鹿児島国体への機運を高めることで、鹿児島のバスケットの発展、ひいては鹿児島の活性化につなげていくために、様々な方に登場いただいて、様々なテーマで語ってもらう企画です。
ちょうどいいタイミングでSDの映画がヒットしていることもあり、レブナイズCOOの山崎さんがSDを愛読されていたということでお呼びしました。ではまず、皆さんがリアルSDにいつ頃出会って、どのような感想を持たれたかお聞きします。
政 私と宮迫先生は同じ1974年生まれで、SDの連載があった90年代に高校、大学生でした。ちゃんと読んだのは大学生の頃でした。11歳年下の弟が持っていたコミックを読んだのがきっかけでした。それにはまって今でもコミック全巻が実家にあります。一番魅力を感じたのはバスケットというスポーツをリアルに描いている点です。
ツボだったのは最終巻の湘北VS山王工戦の勝敗が決まる場面。それまでセリフがなく淡々と描写だけが続く中で、最後に桜木花道がブザービーターの逆転シュートを決めるところで、ただ一言「左手は添えるだけ」のセリフにしびれました。
「俺が決める!」「絶対勝つ!」「仲間のために!」などのエモーショナルな表現ではなく、ジャンプシュートの基本を復唱する。バスケットで最も華やかなプレーを表題に掲げているにも関わらず、基本的なジャンプシュートで勝利が決まるところに奥深さを感じました。スポーツを表現する仕事をする上でも大きな影響を受けた作品です。
宮迫 僕は、小中学校で野球をやっていたので、バスケットを始めたのは高校からでした。高校では何か他の競技をしようと思っていたときに、最初に声を掛けてくれたのがバスケット部の先輩でした。
練習を見学に行ったら、その日のうちに走らされ、そのまま入部しました(笑)。SDに出会ったのはその後です。バスケットの華やかな部分だけではなく、日常の部分を描いているのが魅力でした。
一番好きだったのは、中学時代のスター選手だった三井寿が、ケガが原因でぐれてしまってヤンキーになり、バスケット部に殴り込みをかけながら、最後に「バスケがしたいです!」と安西先生の前で泣き崩れてしまったシーンです。今でも思い出すと胸が熱くなる場面ですね。
自分自身もバスケットをやるようになって、うまくいかないことがあるときに、SDの選手たちやエピソードを自分に重ねながら、部活をやっていた思い出があります。
週刊「少年ジャンプ」での連載でしたが、コミックになる前の連載を毎週読むのが楽しみで仕方がなかったです。
山崎 僕がSDに出会ったのは小学校の高学年か、中学生ぐらいの頃だったでしょうか? 今、40歳で宮迫さんや政さんよりは一回り下の年代になります。SDがきっかけでバスケットをやる子供が急に増えた年代だったと思います。
私自身中学時代はテニス部員でしたが、バスケ部の部員はカッコいい人が多くて、目立つ存在でした。女子の選手もキラキラした人が多かった。SDは私も「ジャンプ」で読んでいたと思います。「こんな面白い漫画があるんだ!」という感覚が確かにありました。今はスマホで漫画を読める時代ですが、その頃、漫画は本屋に行ってお金を出して買う物でした。そんなに多くのものを買えなかったですが、SDは全巻持っていました。自分の中で全巻持っている漫画はSDだけかもしれません(笑)。
バスケットボールの魅力
鮫島 バスケット経験のある方もない方も、何か雷に打たれたような経験をかつてされたということですね(笑)。それだけ、井上雄彦さんという方がバスケットを題材にして素晴らしい作品を世に出されたということです。
ではSDを離れて、皆さんが思っておられるバスケットの魅力って何でしょう?
宮迫 自分もこの歳までバスケットを続けている魅力は、局面の展開の速さ。これはどの競技にもない魅力に感じます。点数の取り合いは見応えがあります。
派手さやスマートで見栄えの良いことばかりでなく、ガツガツした泥臭い肉弾戦の部分もある。スポーツの持つ全ての要素を備えています。苦しいこと、思い通りにいかないこともたくさんありますが、何か一つでもできるようになったときの達成感は得難いものがあり、選手、指導者としてバスケットに関わっているモチベーションになっています。
鮫島 あらゆるスポーツの要素が凝縮されているところにバスケットの魅力があるというわけですね。では山崎さんにうかがいます。バスケット経験はない、鹿児島に縁がない方が、レブナイズのオーナーになられました。そこにはバスケットという競技の魅力もあると思うのですが、いかがでしょう?
山崎 バスケットの魅力をうまく表現するのは難しいですが、今レブナイズに関わってリアルなバスケットを見るようになって、試合を見終わった後、めちゃくちゃ疲れるのですよね(笑)。それだけパワーを使っていて、充実していることの裏返しなのかもしれません。
見ているだけなのに、カロリーを消費しているような感じがする。それが魅力なのかもしれません。野球やサッカーも、生の試合を観戦する機会はありますが、リアルに見た時の充実感がよりバスケットにはある。
鮫島 ご自身の日頃のビジネスも、いわば格闘技のようなものがあると思いますが、それに通じるものがあるのか、それとも別物なのか、いかがでしょう?
山崎 スポーツは必ず勝ち、負けがつきます。ビジネスは勝ち負けがとてもあいまいです。会社が倒産してしまえば「負け」ということになりますが、日常のビジネスはいわば「リカバリー」のし合いのようなものです。例え失敗しても、それをどうリカバリーしていくかも、仕事として続いていく。いわば終わりなき旅のようなところがある。
何が成功で、失敗かもあいまいです。終わりがなく数百年続く会社もあれば、数年で終わってしまうところもある。バスケットやスポーツは時間が決まっている。その時間の中で、〇か×か、勝つか、負けるかが決まる。その意味では大きく違うものではあります。
レブナイズは今ビジネスとして関わっていますが、観戦しているときは一ファンとして見ています。ビジネスとして関わっている以上は当然出したもの以上のものを回収しなければなりません。その分、どうやって本業とのシナジーを作っていくかが、今後大事になってきます。一ファンとしての観戦はビジネスとは異なる燃焼感や充実を感じているということかも知れませんね。
鮫島 いろんな競技を見られている政さんはいかがでしょうか?
政 野球には野球、サッカーにはサッカー、陸上には陸上、それぞれのスポーツにはそれぞれの魅力があります。私の場合、鹿児島でやっているバスケット、それにかかわる人たちに大いに惹かれたというのが大きいです。
まだ鹿児島にプロというかたちがどの競技もなかった頃から、独自のイベントを開催したり、広報誌を作って収益を上げる形を模索し、どの競技にも先駆けてプロチームを作った。その取り組みにはスポーツを盛り上げていくことで鹿児島を盛り上げたいという私自身のライフワークに重なるものがありました。
野球や陸上は自身の競技経験や昔の馴染みが今に続いているものが大きいですが、大人になって仕事としていろんなスポーツに関わるようになって、ここまで仕事やプライベートも含めて大きな影響を受けたのは間違いなく鹿児島のバスケットが一番です。
鹿児島バスケへの想い
鮫島 今、政さんから「バスケット」に加えて「鹿児島」というキーワードが出ました。山崎さんは「鹿児島のバスケット」をどのように見ていらっしゃいますか?
山崎 今のBリーグの構想は「都道府県ごとの天下一武道会」みたいなものを描いていると感じています。各都道府県にメーンアリーナを作り、参入基準に観客数のノルマを設けることも含めて「町おこし」をしていこうとしている。バスケットの「強さ」だけが必要なのではないということを明確にBリーグが謳っています。僕はその構想に大いに賛同しています。
「天下一武道会」で鹿児島が勝てるかといえば、僕は勝てると思っている。東京などの都会は人口も多く、いろんなエンターテイメントも充実していて選択肢も多い。リアルに見られるエンターテイメントがこれまで少なかった鹿児島で、サッカーとバスケットのプロが加速ついて動き出し始めた。
そういう意味では、レブナイズという「神輿」を担いでくれやすい状況なのかなと感じています。バスケットやスポーツだけでなく、ビジネス面においても鹿児島の持っているコンテンツは他の都道府県に負けないものを持っている。鹿児島、バスケットとも大いに可能性を感じているところです。
鮫島 Bリーグが、経済振興も含めた町おこし、別の言葉に言い換えれば新しい文化を作っていこうという発想は私も大いに賛同し、我が意を得たりと思うところです。
オンコートでの日本一、文化作りも含めた日本一をどう目指していくか。山崎さんのWizが持っているコンテンツが入ったことで、鹿児島という枠を飛び越えて広げていける力を持っているのではないか。新しい鹿児島のバスケットの、もっと大きな飛躍のチャンスと大いに期待するところです。そういうビジョンもお持ちということですね?
山崎 Wizという会社はいろんな事業をマルチにやっていますので、相性は非常に良いと考えています。Bリーグの構想を実現する過程の中に、鹿児島全体を巻き込んでいくことができたら、すごく面白いと感じています。
鮫島 オンコートの話に転じます。今後の鹿児島のバスケットはどうしていきたい、どうなりたいと宮迫さんは感じていますか?
宮迫 今、鹿児島県の小学校低学年のカテゴリーには、優秀な選手がいると言われています。私はその上のカテゴリーにある高校の指導を主としてやっていますが、そういった子たちが「鹿児島でバスケットをしたい!」と思わせるような魅力あるチームを増やしていかないといけないと考えています。
そういうチームが増えて、地元に残って「日本一を目指そう」という機運を作っていきたい。
Bリーグができて、いろんなところにチームができて高校、大学を卒業して「プロを目指したい」という子供たちが全国で増えてくると思います。鹿児島でもそういう夢を持った子供たちが出てきて、夢を成就した選手たちがその次の世代に還元する時代が必ずやってくる。こういう流れは継承していかなければいけないと思います。そのためにも高校教員として魅力あるチーム作りを継続していきたいです。
レブナイズというトップチームがあり、そこに小中高生が足を運んで、プロの世界を体感し、上を目指してみたいという土壌が出来つつあるのは、鹿児島のバスケットの活性化に大きな効果があると思います。
昨季までレブナイズに所属していた私の教え子の鮫島和人は、バスケットの技術で魅せるだけでなく、彼自身のキャラクターや発想、束ねるリーダーシップなどで人を惹きつけるものを持っていました。先ほど山崎さんがおっしゃった勝ち負けだけではない要素という部分にもつながるのではないでしょうか。「あの選手のああいうところが良い」「あの選手を見に行きたい」「自分も真似したい」…そんな選手がいるチームがレブナイズであって欲しい。そういう選手を育てて送り出すのが僕らの仕事になってきます。
山崎 レブナイズをカッコよくする。チームとしても、会社としてもカッコよくしていくのがすごく大事なことだと思っています。宮迫さんがお話しされていたのはまさにその通りで、その期待に応えるチーム、会社作りが私たちの仕事ですね!
鮫島 山崎さんとはこれまでいろいろやり取りする中で、例えば高校生のトップ選手をレブナイズの選手として活動させる。そこから別のチームや大学への進学をさせたり、最終的には大人になって正式にプロとしてレブナイズで契約したり、社員として雇用するというアイディアを持っていらっしゃいます。今の宮迫先生の話も含めたことを具現化しようとしている。
これまで鹿児島は人材を送り出すだけの県でしたが、こういったことが実現すれば鹿児島に行けば面白いバスケットがあり、バスケットが上手くなるチャンスがあり、人生を豊かにする機会があると思われる場所になれる可能性がある。そういう流れを私たちも協力して作っていきたいですね。
山崎 毎年ウインターカップはチケットを買って観戦に行きます。あそこでプレーしている選手の中にも、Bリーグで経験を積んで高校でプレーをしている選手がいました。今はもうそういう時代になっているということです。
今のレブナイズですぐにそれができるかといえば、なかなか難しいものがある。コートでは「B2昇格」という明確な目標があり、チーム運営もそこに向けて力を注いでいる段階なので、まだそこまでやる余裕がない。
しかし今後の方向性を会社でも話していく中で、話題になるのは「持続可能なレブナイズ」ということです。今はどうしても勝つことや昇格という目先のことだけに力がはいってしまいますが、これからは選んだ人材を中長期的に育てるということにも取り組んでいくことが大切になってきます。そういったことも含めた中長期的なチーム作りをどう構築していくか、そのビジョンを示す人がいないところが今後クリアすべきレブナイズの課題です。
映画スラムダンクの魅力は?
鮫島 話題をSDの映画に戻します。それぞれが感じられたこの映画の魅力はどんなところですか?
政 一番の衝撃は主人公が桜木花道ではなかったこと。単純に湘北VS山王工の映像化だけなら、展開も、結論も、セリフもほぼ分かっているので、映像の迫力だけでは魅せられなかったでしょう。
これまで全く知らなかった別の選手の生い立ちも含めたサイドストーリーから始まったことで、あの試合の見方が大いに変わりました。先ほど私が珠玉に挙げた「左手は添えるだけ」の花道の名セリフは音声がなく口の動きだけで表現していました。裏を返せば、全選手が主人公であり、いろんな見方ができるところがこの映画の醍醐味といえます。
宮迫 私は窮地に立たされたガードの宮城リョータがマネジャーの檄で奮起するシーンですね。小さい選手の生きる道はドリブルしかない、より低くいくんだと覚悟を決めて挑む場面にしびれました。
自分は身体が大きいので、小さな選手の気持ちがよく分からないところがありました。小さい選手はその小ささを武器として戦うということに心をつかまされました。
指導者として小さな選手にそう指導はしていましたが、実感として伝えられてはいなかった。宮城がそこに至るまでに、相手の深津に大きく守られて、打つ手がなくなり、苦しみ迷う中で「そこしかないんだ!」と決断する過程にグッとくるものがあって、初めてそういう選手の気持ちが理解できたような気がします。
大きな「チーム・レブナイズ」を作りたい!
鮫島 山崎さんは映画を見終わってすぐに、「ある印象的な言葉」をつぶやいておられましたね。
山崎 映画を見終わった後、「チームって良いな」とツイッターでつぶやいていたんですね(笑)。チームであの難敵・山王工に勝ったことに感動し涙しましたね。
日頃の仕事も、レブナイズだけではなくて、いろんな部署がチームを組んで取り組んでいるので、いつもは反目し合う個性の強い者同士が一つの目標に向かって突き進んでそれを達成したことをシンプルに感動できました。
レブナイズもチームです。会社であると同時に「チーム・レブナイズ」ということを意識しますね。社員や選手、スタッフだけでなく、ブースターや、将来のレブナイズを目指す中高生も含めた大きな「チーム」を作っていきたいです。
例えばSNSなどで、レブナイズに厳しいことを言う方もいらっしゃいます。私はそういう方々ともコミュニケーションをとりたい。厳しい意見を持っている方の中には、クラブを良くするための面白いアイディアがある。もし今の我々で手が足りなくて、実現できないことでも、その方が加わってくれればできることがあるかもしれない。それこそが「チーム・レブナイズ」なのではないか。そんな考えを持っています。
レブナイズにはどんな課題があり、誰が、いつまでにそれをやらないといけないのか、そういったこともどんどん開示していきたい。今のマンパワーで足りなければ、やれる人を募る。そういうアクションを起こしていくことがこれから必要になってきます。
鹿児島2003国体への想い
鮫島 今年はいよいよ鹿児島国体があります。地元国体での優勝は、長年鹿児島のバスケットに関わってきた我々の悲願であり責務です。そこに向けての宮迫監督の想いはいかがでしょうか?
宮迫 選手時代も含めて、20年以上国体に関わっています。自分たちが思う以上に、この国体は鹿児島県を挙げてのビッグイベントであるということを日々痛感しています。色んな方々の応援をいただきます。
まだ鹿児島が到達したことのない世界に自分たちがたどり着くことが出来たら、どういうことになるのかというワクワク感もあります。
山崎 国体は地元開催への想いでしょうか? それとも毎年の大会ということでしょうか?
宮迫 それは毎年ですね。その上で今年は「地元である」という特別感が加わりますね。
山崎 であれば、レブナイズのセカンドチームを作って、そのチームは今後も国体などのアマチュアの日本一を目指すというのもありですね。Bリーガーにはなれないけれども、経験を積みたい高校生、大学生、社会人の選手がセカンドチームに所属する。一番肝心な仕事はWizの方で用意する。そんなことができたら面白いですね。
宮迫 国体チームとレブナイズのトップチームのさらに深い連携が実現すれば、お互いがWin Winだと思います。オンコートの切磋琢磨に加え、鹿児島代表がクローズアップされることがレブナイズに注目を集めることにもつながる。そういう相乗効果も期待したいですね。
鹿児島のセンターピンに!
山崎 U15、18との連携もできそうですね。肝心なのはそれをファシリテーションする人が誰なのかということです。今のレブナイズは「人」「モノ」「お金」はそろいつつありますが、プロジェクトごとのファシリテーターをどうしていくかが、課題です。そういう人材が出てくれば、いろんなことが動き出し、回っていくようになると感じています。
就任当初から話していますが、私はレブナイズを鹿児島のセンターピンに育てていきたい。そのためには先ほど宮迫さんに話したように「カッコいい存在」にならなければならない。分かりやすいキャッチフレーズとして「カッコよくなっていく」ということです。
熱き想いよ、届け!
鮫島 スラムダンクへのあこがれから、鹿児島のバスケットボールの未来への夢に繋がる大変興味深いお話を聞かせていただきました。この鹿児島バスケの熱き想いが、井上雄彦さんにいつか届くことを祈って、結びに替えさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
【つかさの射的】
スラムダンクを入り口に、レブナイズ、鹿児島国体、鹿児島のバスケットをどうしていくか、鹿児島をどう盛り上げていくかなど、様々な話題が広がった。新年がスタートして、これからの鹿児島の未来をどう切り開いていくか、そんな明るい夢や希望を感じさせる対談だった。
これまでの長い鹿児島バスケットの歴史を振り返ると、コートでの日本一、全国にも先駆けてプロ化を掲げた取り組みを始めながらも、それをかたちにするのはいばらの道だった。崇高な理念や熱い想いがあり、プロに関してはレッドシャークスからのレノヴァ鹿児島、鹿児島レブナイズというかたちを作って船出したが、山崎氏の言う「持続可能」という壁にぶち当たり、B2参入1年目にしてチーム存続の危機に立たされたこともあった。
それでも歯を食いしばって存続を模索し、知恵を絞り、汗を流し、お金を出し、物心両面で支えてくれた人たちがいてチームは存続した。そこに東京からITを中心とした新しいノウハウを持ったWizという会社がオーナーとなり、「持続」を「可能」にする体制がようやくできつつある。
まずレブナイズがやるべきは、鹿児島でバスケットをする人たちにとってのあこがれやこうあって欲しいという想いに応えられる存在になること。国体チームの母体になるセカンドチームやジュニア世代の普及・育成・強化のアイディアまで山崎氏の構想にあることに心強い思いがした。それぞれ活動する分野は違っても「鹿児島」「バスケット」というキーワードで底はつながっているという方向性を確認できた。
かの渋沢栄一氏の「論語と算盤」にあやかれば、「日本一」「地域の活性化」「鹿児島のセンターピン」などの理念や理想=「論語」はもともと明確なものがある。これまで難しかった持続可能な経営という「算盤」の課題にようやく明るい展望が開けてきた。あとはこれがかたちになるまでトライ&エラーを地道に続けていくのみである。
2023年、鹿児島国体の年は、日本バスケットボールのバイブル・スラムダンクを生み出した井上雄彦氏を輩出した鹿児島の底力を示す元年にしたい。
(文責・政純一郎)