短編小説/悪役(ワルモノ)Episode1
悪役(ワルモノ)
影山零
Episode:殺人鬼
大雨の降る夜だった。
そこに怯え、後ずさりをする男。やがて、行く手を阻まれると、口を開きこう言った。
「金だろう?幾らだ?命と交換なんだ、ケチったことはしない。好きなだけ言えば良い。」
怯えた男の前に1人立っていた。灰色のスリッパに深くフードを被った男。右手には虹色のナイフを持っていた。
ため息をついてこう言った。
「素直なあいつがなんで…」
一方、怯えた様子で財布を胸ポケットから取り出そうとした。だかその手を手首から切り落とした。
🗡️Naifu
誕生日に妹が一人暮らしの俺の家に訪れてきた。ケーキを持って満面の笑みで抱きついてきたのを覚えてる。あの時だけは幸せだった。
だがその3日後に亡くなってしまった。事故として処理されたが、あれは間違いなく殺人だった。たとえ訴えを起こしても、「公平・公正」という肩書きを持つ憲法は「不平等に人を助ける」ということをわかっていたので意味はないと知っていた。
そして犯人はあらかじめ定まっていた。妹の社長だ。妹と同じ会社の従業員に訊いた。某世界企業に入った妹は当然、俺より頭がよく、愛想もいいことだから、みんなに好かれてた。 そんな中で社長に呼ばれたとき、世界の何処かで起こるテロに荷担しているということを妹は知ってしまったのだ。
その次の日、妹は亡くなった。
その事実は妹だけにとどまらず、何処が情報源かわからないが何人かの同僚にまで広められていたのだ。だが、そのせいでたくさんの命が社長の的になった。その的は外すことなく倒れ、隠れていた一つ以外残らなかった。それが教えてくれたあの会社員だ。
その時はじめて人を殺した。家の包丁で腹を刺した。
あの日から"悪役"を殺すようになった。
✻
仕事も請け負いはじめたころ、公園である出来事があった。
女の子が迷子になっている様子だったから、声をかけた。すると、少しはなれたところからすみません、と声が聞こえたので振り返ると、どうやら父親らしい男性が走ってきた。
怯える様子で自分の背中に隠れると、怒らないで、ぶたないで、と口を開いた。
その女の子にこう訊いた。
「お母さんは好き?今どこにいる?」
すると、こう答えた。
「ママすきぃ~。かいしゃではたらいていてるんだって。」
お父さんと彼女の見えないところで相談…し、母親が帰ってくるまで一緒に遊ぶことにした。
平和な時間は刻一刻と過ぎていく。こんな時間を過ごしていると、やはり嫌でも妹のことを思い出してしまうのだ。忘れてはいけない思い出、人生を変えた思い出。
時間が近づいたので家に向かう途中、拳銃を構え、発泡してきたあの警察が乗ったパトカーが真横の道路を通る、ゆっくりと。無意識にフードを深く被り直し、左肩が焼けるように痛くなり、冷や汗と鼓動が止まらない。やがてそれはパトカーが死角に行くまで収まることはなかった。
短い時間が過ぎ、平和な時間は終わり夕方のチャイムと同時に終了した。
その日以降、彼女達の家であの父親が現れることはなかった。
⌚️時