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きつつきを見た
朝ばたばたと家を出ると、何やら「こっこっこっこっこ」という音がしていた。気がする。
中途半端な表現なのは、その時はあんまり意識していなかったから。でも多分していた。していたけれど、気をそっちに向けるほどのことじゃないな、とも思わない程には気を向けず、いつものように車に乗り込もうとして、携帯を忘れてきたことに気付いた。
無くても困りはしないけど、やっぱりあった方がいい。居場所はわかっているのでぱたぱたと取りに戻ってもう一度家を出たら、「こっこっこっこっこ」という音。
ここでようやく気が向く。そういえばさっきもそんな音がしていたような……?目の前の木のどこかからっぽいぞ……と思い見上げてみた。
きつつきが、木をつついていた。
きつつき!初めて見た。
「本当に木をつつくんだなあー」と、しみじみと当然の反応。当然そうなんだけど、その『当然』に『経験』が覆い隠されてしまっている気がする。
あちこち赴かずに知識を蓄えられるというのはベンリだし、そうでもないと得られないものももちろんあるんだけど(自分の目で土星を見られたら死んでもいいと思っている)、やっぱり生身での経験だな、これで「きつつきは知ってる」と胸を張って言えるな、などなど、来たるべきかどうかもわからない未来を思い描きながらばたばたと、車に乗り込んだのでありました。
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