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ポーランド旅行記・13日目(ウクライナ3日目)

タイトルはポーランドですが、11日目~13日目まではウクライナ・リヴィウ探訪記です。そして今回は少し長め。お茶の用意をどうぞ。

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ウクライナ最終日。11時のチェックアウトまでホステルにいることにする。ポーランド行きのバスの出発は夜の10時。

下のベッドのお姉さんと話す。昨日の夜はロシア語だったが、今朝は英語。りんごをもらった。

ぎりぎりまでベッドでごろごろし、着替えて11時ちょうどにチェックアウト。まっすぐ市庁舎の塔に向かう。今日は開いていた。市庁舎の3階まで行き、そこから塔の入り口に入る。市庁舎の中は普通に市庁舎。日本の市役所とは違うが、こざっぱりとした公的機関の雰囲気はある。

四角い塔の内側に沿った階段を登る。朝食もなしでホステルからそのまま来た身にはなかなか辛い。汗が出る。


階段の最後は螺旋階段だった。ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂を思い出す。あれに比べればまだマシな方だ。

着いた。中途半端に雪の残った屋根に白く煙った空。とはいえ昨日の丘とは違い、流石旧市街中心の塔。いかにも「一望」である。昨日の晴れた時に来たかったな、と改めて思うがこればかりは仕方ない。晴れてきたらまた来よう。昨日登った丘も見えた。

標準、望遠、広角、一通り写真を撮ってしまったらあとはやることがない。登ってくる人を待って降りる。帰りは速い。上りの3分の1くらいの体感時間で下に着いた。

やりたかったこともやりきったので腹ごしらえ。見つけて気に入っていたグルジア料理レストランに行く。世界三大料理にはぜひグルジア料理を入れて欲しいと思うくらいには好きだ。ロシアにいた頃出会ってすっかりハマってしまった。
ハルチョー(スープ)、ハチャプリ(チーズパン)、ヒンカリ(水餃子)、タルフン(飲み物。説明は難しいが一応レモネードの枠らしい)を頼む。物価が高くないことをいいことに豪遊である。ハチャプリは卵が入っているアジャリア風にした。このタイプは初めてだが期待通りおいしかった。

ハルチョーもタルフンもおいしく、ヒンカリに至ってはめちゃくちゃおいしかった。上の生地が固まっているところを持ち手にして食べて、そこは残す。生地が詰まりすぎて食べられないというか、そもそもそこを食べるようにはできていない。

食後にヨーグルトまで頼み、満足。行くあてもなく近くに建っている大聖堂付属の宗教博物館に立ち寄ってみた。ウクライナの歴史から始まり、と思ったらそれはほんの少しでその後はユダヤ教の展示がありキリスト教があり、突然イスラム教の展示になったかと思えばその向かいはブリヤート共和国(ロシア連邦内の国)の仏教の話、小部屋を見つけたと思ったらアルメニア正教の部屋、など(その辺りの)古今東西の宗教についての豊富な展示物が、雑多ギリギリのところでまとめられているという印象だった。博物館を出たら、閉まっていた大聖堂の扉が開いていた。中は荘厳。空気が重かった。

行くあてもないのでぶらぶらとする。シナゴーグがあるらしいから見てみようと思ったらそれらしい建物はなく、携帯の地図が指す場所には遺構のようなものが。そばにあったレリーフを見ると「1942年にナチスに壊された」とのこと。そういえば遠い場所の話じゃないんだな、と思う。

カフェに行った。初日に行ったのと同じところ。午後だったので「Evening Coffee」にした。キャラメルとミルク入り。

窓側の席に座れたのでぼーっとした。徹底的にぼーっとした。外を行き交う人たちがよく見える。向こうにもこちらがよく見えていることだろう。向かいの建物の壁にはウクライナ国旗が掲げてある。はためき具合で風の強さがわかる。空港みたいだ。

コーヒーを飲んだ後もしばらくぼーっとしていた。旅行記を書き進めようかと思ったが何をする気も起きない。次の目的地を決める気も起きない。ひたすらぼーっとした。

外に出た。はしごするぞ、と思って昨日行ったカフェに行ってみたが、人が多そうだったので諦めた。あてもなく旧市街をぶらつく。もう地図も要らなくなっている。

地図で見かけるたびに気になっていた教会を見つけた。シンプルなクリーム色の大きな建物で、扉が半開きの半分くらい開いていた。帽子を取って中に入る。普段ならカメラをバッグに入れるのだが、雪避けにコートの中に入れていたのでそのまま。
中は暗かった。暗かったのだが、眩しかった。東方正教独特の装飾が、外からかろうじて入ってくる光や、あちこちに灯されたろうそくの明かりを受けてきらきらとしている。外側がシンプルなだけ内装の凄みは増す。観光客はいなかった。静かに座っている人、立って十字を切る人、それだけだった。静かにうろうろとする。一歩一歩の音が響いては空間の中に吸い込まれていく。ものすごいエネルギーが凝縮されている場所だ。信仰のパワーというものなのだろう。

外に出た瞬間雑踏に包まれた。静謐さに圧倒されていたことを感じる。
晩ごはんを食べようという気はしないがやることもない。昨日チョコレートを買った店のカフェに行くことにした。角のソファ席に座る。オレンジ入りのチョコレートケーキとコーヒーを頼んだ。ケーキはもちろんおいしかったのだが、コーヒーについて来た小さなチョコレートの方が存在感がしっかりしていた気がする。どちらかというとダークチョコレートなのだが、ずっしりとした甘みもある。一息ついてみると、周りのテーブルがおしなべて2人以上でいることに気づいた。そういえばひとり旅なんだなあ、と思う。

中央広場を通って晩ごはん兼時間つぶしの場にしようと決めていたレストランに向かう。途中で本屋に寄る。めぼしいものはなかったが、広くはない店内で意外と多くの人、しかも若い人がウクライナ語小説のコーナーにいたのがなんとなくよかった。

レストランは初日に入ったセルフサービスの店だ。晩ごはんにはまだ早い気がしたのでとりあえず地下のデザートコーナーで紅茶だけを頼み、座る。お湯に市販のティーバッグを付けただけのスタイル。いさぎよい。
コンセントがあちこちにあるが誰も使っていない。けれどこれで使って怒られることはないだろう、と思う。「怒られたらやめればいい」という大学の先生の言葉を思い出す。

結局紅茶1杯で過ごすことになった。外に出てUberを呼ぶ。しばらく待つと来た。建物の中で呼べばよかった。来た時に通った覚えのある道を走る。このルートは地元のドライバーに共有されているものらしい。バス出発の45分前に着く。来た時よりも明るく、人の気配もある。路線バスだって動いている時間だ。心なしか明かりも強く感じる。

来た時には謎だった建物が長距離バスターミナルであることに気づく。ぼんやりと変な形だな、と感じていたくらいだが合点がいった。しかしここにいれば安全というわけではない。オンラインで受け取ったバスのチケットには「路線バス乗り場」と書いてある。確かに、着いた時もバスは外の路線バス乗り場の方に停まった。リヴィウが始発じゃないとそうなのだろうか。

ロシアにいた頃乗った覚えのある会社のバスが停まっていた。こういう時に知っている大手というのは頼りになるな、と思う。今回はどんなバスが来るかもわからない。バスチケットに記してあるバス乗り場と、バスの前に掲げてあるだろう始発と終点の表示だけが頼りだ。聞いた覚えもない名前の街発、見覚えのある名前の街行き。リヴィウもクラクフも通過点だ。チケットを信じて路線バス乗り場で待つ。

21時40分。バスが来た。バスターミナルには入らず、路線バス乗り場に停まる。始発も終点もチケットの表記と一致している。チケットによると出発時刻は22時15分。やけに早い。

乗務員のおじさんに予約票を渡す。このバスで合っていた。力が抜ける。
パスポートを出せと言われて面倒臭がってアメリカの免許証を出したら怒られた。そういえば国際線だもんな、ごめんなさい、と反省。パスポートを渡すと「こいつはビザが要るのか?」と他の乗務員にウクライナ語か何かで聞いている。「日本人はビザ要らないよ」とロシア語で伝えたらわかってもらえたらしい。バスの写真を撮ろうと思いつつ22時15分出発だよね?と一応確認。「すぐ出るぞ!」 慌てて乗り込んだ。写真は降りたときに撮ろう。

乗り込むと乗客は数人。比喩ではなく片手で数えられる量だった。がら空きの後ろに座る。座席を目一杯倒す。隣の座席も倒す。

出発。22時ちょうど。予定より15分早い。これで逆方向に行ってたらどうしよう……と思ってしばらくGoogleマップをにらんでいたが杞憂だった。国境まで1時間ほどは寝ないで過ごした。

国境。ウクライナ出国は来た時と同様、パスポートが乗り込んできた国境警備隊に持っていかれ、判子が押されて返ってくる。この後はポーランド入国か、なんだか気が抜けないな、と思っていたはずが寝てしまっていた。乗務員が何か言い、皆がさごそと出て行く。またタバコ休憩か?と思ったが様子が違う。みんなに倣って荷物を抱えて降りる。寒い。

どうやらポーランド (EU)入境には厳しめのチェックがかかるらしい。バスは開くところは全て開けてチェックを受け、人間は隣の建物に入る。

パスポートコントロール。別の便の乗客が連行されていた。ビザを持ってなかったりでもしたのだろうか。ビビりそうになったがEU入境なのでその必要はない。案の定何事もなく通過し、次は荷物のチェック……と思ったら誰もいない。一緒に来たおじさんが先まで行って人を呼んできた。いいのか。

リュックに服やらお土産やらを詰めていたので出せと言われたら面倒だな、など考えていたら「君はしなくていいよ」とのこと。日本旅券パワー?

バスに戻るとすぐに寝た。ふと目を覚まして地図を見るとクラクフ郊外。ずいぶんタイミングがいい。地面が濡れていることに気づく。いない間に雪でも降ったんだろうか。


バスターミナルから駅の反対側に抜けてUberを呼んだが、なかなか来ないのでキャンセル。2台目もそこそこ待って乗った。

Airbnbとはいえ帰れる家があるというのはすばらしい。朝の6時前に帰宅、リュックから寝間着を引っ張り出してさっさと寝た。

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Yas  Hig
本とか買います。