発達しすぎたプリプレイとセッショントレーラー

例としてセッショントレーラーを数種類書く。
例なので、かなりおざなりである。内容は全部一緒で、
・舞台は現代日本
・PCは少女と出会う。その少女は事件現場になぜかいる
・彼女と目があった時、周囲の時が止まった
・シナリオ名は「Time hop」
・システムはクトゥルフ
とする。

トレーラーA
舞台は現代日本
探索者たちは近所の火事現場で奇妙な少女と出会う。
彼女と目があった瞬間、周囲の人も家から上がる火花も一瞬止まっていたのだ。
これが一体何を予兆しているのか
クトゥルフ神話TRPG「Time hop」
推奨技能:目星、考古学

トレーラーB
時は現代日本
君たちは近所の火事の野次馬だ。そこには不思議な少女がいた。
彼女と目があった瞬間、周囲の人も家から上がる火花も一瞬止まっていたのだ。
これが一体何を予兆しているのか
クトゥルフ神話TRPG自作シナリオ「Time hop」

トレーラーC
君たちは近所の火事の野次馬だ。そこには不思議な少女がいた。
彼女と目があった瞬間、周囲の人も家から上がる火花も一瞬止まっていたのだ。
これが一体何を予兆しているのか
クトゥルフ神話TRPG現代日本シナリオ「Time hop」


この3つのトレーラーに対して、セッショントレーラーがいつ誰が読むのかを考えると4段階考えられる。

時間1.シナリオ作成者がユーザーに、シナリオを手にとってもらう時
時間2.GMが全体に、GMがPLを募集する時
時間3.GMがPLに、PLが集まったキャラ作成などする前に
時間4.GMがPLに、オープニング開始前に

更に、セッショントレーラーがどこに存在しているかを列挙する
場所イ. Youtube、ニコニコ動画、TikiTokなどの動画
場所ロ. コンベンションの告知
場所ハ. コンベンションやPL募集でない内容のtwitter
場所ニ. シナリオの本文中
場所ホ. シナリオ扉絵
場所ヘ. 通販サイトの製品概要

列挙してみて、いつ読むのか、どこに存在してるのかのマトリクスを考えると適応しないトレーラーが出てくる。

まず、トレーラーAでは「探索者」と主語が三人称となっている。物語へ没入する【時間4】の時点で「探索者」という文章は不自然。一方でトレーラーBは主語が二人称である。これだと、【時間1場所ヘ】の文章では不自然。

次にゲーム名の部分、トレーラーAではゲーム名のみ、トレーラーBでは【自作シナリオ】、トレーラーCでは「現代日本シナリオ」としてある。トレーラーBの「自作シナリオ」は、自己顕示欲でぶった切っていいのだが、例えば【時間2場所ロ】、【時間2場所ハ】などだと「これは私が作りました」とアピールできるが、【時間1場所ニ】、【時間1場所ホ】では全く無駄な単語(シナリオ書いた本人がトレーラー書いてるんだから)。トレーラーCの「現代日本」、ここに入れることで「時は現代日本」の文を削っていて、どの時間でも違和感はない。
しかし、トレーラーB同様に違和感のある単語もある。「ソロシナリオ」は【時間4】には全く必要ない。同様にトレーラーAの「推奨技能:目星、考古学」の一文も【場所へ】や【時間4】には必要ない。

Star Warsのの冒頭の文を考えてみよう。
【時間1】【時間2】では人寄せとしてキャッチーな文章であるエピソード8の「It's time for the Jedi to end.」だが、【時間4】ではこれからの導入という意味でエピソード7の「The First Order reigns.」も成り立つ。

またトレーラーBとトレーラーCの「現代日本自作ソロシナリオ」は、セッショントレーラーとしての絵を作成した際に変わってくる。
「これはトレーラーです!」と画像を出されたときに、本当に上、右から読んでいくのか。普通そういったトレーラーの画像は『クトゥルフ神話TRPG現代日本自作ソロシナリオ「Time hop」』をフォントを変え、文字サイズを大きくしているため、そこが一番最初に読まれるデザインであることを考えると、トレーラーAのように補足説明として「舞台:現代日本」と記してあるのとは異なる(読まれやすいところに配置して足切りをしている)。

明らかに【時間1】【時間2】ように書かれているセッショントレーラーというのは告知のための文であり、セッションには使っていないとしか考えられない(ここで言うセッションは、遊ぶ人間が既に決まっていて、集合してからシナリオを完結させ解散するまで)。

ここ数年のトレンドを追いかけきれていないが、セッショントレーラーや今回予告ってでき始めたころでは、シナリオの概要を伝えるのをオープニング開始前だったりに話すものであったがが、シナリオ本の扉絵やtwitterでの画像、各種動画などでのトレーラーは、ほぼ販促資料となっており、そのようなものはオープニング前などのセッション時に使えるような代物ではない。

いわゆる創作勢がシナリオを発表し、「自分が書いたトレーラーをコピペしている!著作権違反だ!」と憤っているのもよく目にする。本人にとっては【時間1場所ヘ】という認識であるが、TRPGユーザーにとってのトレーラーは【時間2~4】のものである。トレーラーはシナリオの一部であり、シナリオを遊ぶ上でどのように使っても構わないもの、であるのか、販促の文章であるためシナリオの一部ではないという差がある。

総括して言うと、プリプレイが発達しすぎて、セッショントレーラーが必要な部分が増えすぎている。それに応じてトレーラーの書き方が異なってくるはずである。

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