
自然を愛でる暮らしと生命の調和
人が自然に惹かれる理由。それは単なる嗜好ではなく、生命として根源的な感覚なのかもしれません。自然の中に身を置いたときに感じる「心地よさ」や「調和」それは私たちが炭素を基盤とした同じ生命体として、自然界と共通の環世界を生きていることを実感する瞬間なのです。
植物の葉が風に揺れる音、湿った土の香り、朝日を浴びるときの身体の感覚――それらはすべて、生命的なリズムを共有する存在としての共鳴を感じさせてくれます。この不思議な感覚は、特定の人だけが持つ特権ではありません。誰もが、人として自分の中にそれを持ち合わせています。
しかし現代の暮らしの中で、この感覚は薄れてしまいます。人工物に囲まれた空間、忙しさに追われる日々の中で、私たちは生命的な自然環境との調和から遠ざかっています。
そんな中で「自然を愛でる暮らし」という言葉が指し示すものは何でしょうか。
それは、ただ自然を眺めたり飾ることだけではありません。さらに深いところで、人間としての生命力を取り戻す暮らしの在り方です。たとえば、窓から見える庭に四季折々の植物を育てること。自然素材を取り入れた家で心地よさを追求すること。あるいは、都市の中でも植物や自然光を取り入れて暮らす工夫をすること。こうした「自然的で生命的な暮らし」は、現代において私たちが最も自然なかたちで生命の営みを全うできる手段なのかもしれません。
そしてその自然的な暮らしを誰かの模倣ではなく、自身の内側にある本能的な感性に基づいて”自然を愛でる”環境を導きます。自身の内面との対話については今回のコラムの趣旨とは異なるため省略しますが、基本的には自身の経験や体験に基づく自己分析が基本です。
さて、自然を愛でる暮らしを取り入れることで、人は本来の感覚を取り戻します。炭素ベースでつながる生命として、自然の一部であることを再認識できる。家づくりや暮らしの中に自然を取り入れるという選択は、単なるデザインの問題ではなく、生命の調和を求める行為そのものです。
自然を感じられる暮らしを求む。
それは、人が最も人間らしく生きられる方法なのかもしれません。