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文藝春秋社の「歴史時代短編書き方講座」 開催が、暗示するもの……

 文藝春秋社が「オール読物新人賞」を、歴史時代小説に特化した。どうしてなのかと、つらつらと考えてみた。400字詰め原稿用紙換算で40枚から80枚の短編である。今年の6月締切分に応募したが、960遍余りが集まったという。この数に、どういう意味があるのか、私には分析能力は無いけれど。
 松本清張賞だと毎回、1600遍余りの応募数になる。3年前に終わった「朝日時代小説大賞」は170遍あまり。この2つは比較的長編の作品である。それに比べて「オール読物新人賞」は、40枚から80枚の短編である。それでも、千遍近くの作品が寄せられている。
 ましてやジャンルを問わなければ、小説家志望者は、インターネットが出現する前よりも多くなったように思えてならない。本来なら顕在化しにくかった志望者が、インターネット時代になり顕在化しやすくなったことが大きな要因であろう。
 さらに、もう一つ。どうして「歴史時代小説」に絞ったのか。それは、小説家志望者が増えていると同時に、従来あった最低限どの「小説作法」を守らずに、ただ書き散らかしているだけの、縄か作家志望者が、一昔前よりも飛躍的に増えたからに違いない。多分、小説家志望の裾野は広がったけど、その分、有象無象も増えて、出版社の担当者の手を、著しく煩わせているのだろう。その背もともの対策が、「歴史時代小説」への特化だったのだと思えてならない。
 歴史時代小説を書くには、それなりの下準備が出来て、質、量ともに書いて来たという自信がないと、やはり気軽には手をつけられない。作家の諸先輩方をみても、最後に満を持して挑んで来た方々が、目につく。私もゆくゆくは歴史時代小説、と40歳ごろから思っていた。
 これらの背景を鑑みての事なのか、「オール読物」の編集部が「歴史時代短編書き方講座」を行うようだ。
 時代が、歴史時代小説へと舵を切ったようだ。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。