“無責任な責任感”
報道カメラマンの彼が車に乗り込んで来るなり、怒りをぶちまけた。
「フォト・マネージャーだと奴は言ったけど、俺は会場の本当のフォト・マネージャーを知っている!」
そもそも、彼の怒りの原因はこうだ。テニスの試合で奇数のゲームが終わるたびに、選手はチェンジコートをする。その時、報道カメラマンも場所を移動して良いことになっている。それでベテラン・カメラマンは、チェンジコートの間に場所を移動しようと動いた。すると、くだんの「フォト・マネージャー」だと自称するボランティアが、
「移動はできない」
と、彼を制止して、頑として譲らない。しかし、他のカメラマンはどんどん移動している。
さらに変なのは、日本人の彼を外国人のカメラマンだと思って、終始、英語で抗議してきたそうだ。彼も怒り心頭で、つい終始、英語で交戦した。ときには「S○〇〇」とか言ったとか言わないとか。「F○○○」とかまでは言わなかったが、言いそうになったとも。
「日本人ボランティアの気質として厳格なのは、良しとしよう。しかし、度が過ぎると“無責任な責任感”だとしか思えなくなる。なんら権限まで与えられていないのに、さも権限があるかのように規制しようとするのは、どうかと思う。それにしても、腹の立つ奴だった」
と、彼は散々ボランティアの「無責任な責任感を振りかざした横暴ぶり」に対する怒りをぶちまけて、車を降りた。そのとき、トランクの中の撮影機材を手渡しながら、一言いってしまった。
半ズボン姿でスキンヘッドの彼を見て、
「日本人じゃない。中南米のカメラマンかと思った」
と、つい本音を言ってしまった。(※PS.中南米のカメラマンは、カッコイイ男性が多い・・・)
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