電気設備の保守点検について考えてみる③遮断器の点検どうしてる?
電気設備点検のお話、続きましては「遮断器」のことを書いていこうかと思います。m(_ _)m
まず初めに「遮断器」って何?ということですが、ざっくり言うと
「家のリビングの電気をつける壁のスイッチ」
とほぼ一緒です。(今はアレクサとかの方が多いんですかね…)
ようは「電気を送ったり切ったりするもの」の一種で、「開閉器」と呼ばれるカテゴリの中の一つです。家庭用の開閉器は皆さんが「ブレーカー」と呼んでいるあれです。電気の使い過ぎとか雷で「飛ぶ(トリップする)」あれのことです。
そのブレーカーのでっかい版を「遮断器」と呼びます。(細かい話は省略)
見た目は…
こんな感じです。おそらく見たことないでしょう。
何で「遮断」なの?電気送るものなんでしょ?
と最初思いましたが、役割をよく知ると「遮断」で間違ってないんです。
確かに電気を送るものなんですが、どちらかというと
「事故が起きた時に即座に切り離す(遮断する)もの」
というのが正しいのです。
電気の事故というのは、保護継電器の話の時にも少し書いたのですが、けっこう大規模になることが多いです。なので少しでも事故の影響範囲を小さくするべく「保護継電器」で事故を検出して「遮断器」でその事故になった部分を切り離します。
この切離しというのが、事故の規模にもよりますが、とても大きなパワーが必要になるので、使っている電気の大きさに見合った「遮断器」を使って、ちゃんと切離しができるようになっています。
で、例のごとくこれも年に1回点検するんですが、基本的に中身の詳しい点検は製造メーカーさんしかできません(操作電圧、真空チェック etc)。自社のノウハウとか色々あるんでしょう。
ただ、納品された時についてくる取扱説明書には、けっこうちゃんと簡易点検のやり方が書いてあります。なので機械系が得意な方は割とすんなりできてしまいます。結局のところ、中身はギアやらフックやらの組み合わせで機械なので。
大体どんなメーカーでも共通しているのは
①絶縁物の清掃
②機構部・可動部への注油、グリスアップ
③絶縁抵抗測定
です。
①は本体の白い大理石みたいな柄の部分を、アルコールで拭くだけです。こげ茶色のモールドのものもありますが、ようするに掃除です。見た目が綺麗でも、ウエスで拭いたときに引っ掛かりがあるなら汚れていますので、キュッキュと音が出そうなぐらい磨いて下さい。慣れてくると、拭いてるだけで汚れてる場所が分かるようになります。
③はただ測定するだけなので、何も考えません。自分の絶縁抵抗計で測定してください。
問題は②です。極論言うと
「動きそうな場所に油刺して動きやすくする」
ってことなんですが、メーカーさん毎で機構部の作りが若干違うので、油を刺す場所が違います。説明書に細かく書いてあるんですが、正直練習しないとかなり大変です。
メーカーさんによっては
「この箇所は注油してはいけません」
「この箇所はこの油を使ってください」
なんてこともあり、全部覚えるのは中々労力がいります。
そうなると何が起こるか
「大体動くとこ刺しといたらいいやろ?」
「油?グリス?全部 KURE5-56 でいいんじゃない?」
と考える人が出てきます。私も一時そうでした。
ちなみにKURE5-56とは、呉工業㈱さんから出ている
「安くて錆も防げる潤滑剤」
です。機械屋さんなら、お世話になっている人多いんじゃないでしょうか。
確かに何にでも使えるので、遮断器もこれでいんじゃないかと私も思ってました。ステマじゃないですよ。
ただ分かっていただきたいのは、メーカー取説にある点検方法は、メーカーさんが工場で研究・検討を繰り返した結果、これがいいと決定したものなんです。
自己判断で油の種類を変えたり、刺してはいけない場所に注油した結果、耐用年数より早く故障したという事例が意外とあるんです。まぁそれで仕事貰ったりする機会も無くはないんですが……
結局、故障してしまって困るのはお客さんなので、点検される方は一応取説一通り読んで、材料揃えてからやってください。というお願いでした。
「何で5-56だとだめなんだ」とか
「ここは可動部なんだから注油しないとダメだろ」
という意見はあると思いますが、
「一時的にはいいが既存のグリスとの相性が~」
「電磁コイルに油がかかると~」
などなど難しい話になるので、割愛します。
「遮断器」は受変電設備で、最も大事なものだと個人的には思ってます。ちゃんとした点検をして、安全に安心して使っていただきたいなと思います。
既に今点検をしている方への内容になりました。苦情・質問お待ちしております。m(_ _)m