万年筆、持つ手は大人か未熟ものか
万年筆を書き物やスケッチにちょくちょく使っている。
扱いに気をつかうような高級な品ではなく、本屋の文具コーナーで買えるようなカジュアルなものとはいえ、やはり時々手入れは必要。 ペン先を軸から外しざっと流水でインクを洗い流したのち、小さな瓶などに入れた水に浸けこむ。 中にたまっていたインクがジワジワ出てくるので新しい水に替えること数回、数回、すう…かい… っおーい、まだ出てくるか!
この数センチのペン先の中にどれほどの量のインクが残っているのか、水を替えても替えてもすぐに染まってゆく。 万年筆という名を誇るかのように無限に湧き続けるインクを出し切るのに一日はかかるので、手入れをする際はかなり根気が必要になる。
万年筆のインクはそんなぐあいに水に簡単に溶け出すから、それを利用して水彩画風のスケッチを手軽に描くこともできる。 線をひいて水筆でさっとなでれば手早く陰影を描ける。
水に溶けやすい、なのにこのインクは指につけてしまうと、いくら手を洗っても落とすことができなくなってしまう。 今まで石鹸、化粧落とし、除光液、油、砂糖! などあらゆる方法を試してみたものの、きれいに洗い落とすことはできなかった。 徐々に落ちるまで数日は指先が染まった状態ですごすはめになる。
カートリッジ式の万年筆はあまり手を汚すことがないけど、コンバーター式でインクを瓶から吸い上げて使うタイプのものは確実に指を染めてしまう。
ペン先の手入れを終えて、新しくインクを吸い上げて、さあ、これでまたペンが使える! とうきうきしつつ、ふと指先を見ると… あーあ… 、というのがお決まりのパターン。 インク瓶のフチや、瓶から引き上げたペン先を拭くときなどで手を汚してしまう。 それなりに気をつけているのだけど。
万年筆は大人の文具の代表ともいえるもの。
私は手を汚すことなくスマートにインクの詰め替えができてこそ、この文具を持つにふさわしい大人だと思っている
今も5本の指先を見て思う、わたくしは未熟ものです… と。
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