障害者のガイド登山

今回のご依頼は、脳性麻痺の障害を持つお客様。

かかりつけのお医者様に、山行の可否の承諾及びアドバイスを得ての参加だ。

目的の山は、立山(雄山)。健常者には初心者向けの山だが、障害者にとってはその程度にもよるが、全く違った困難な山になる。

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前日の歩行テスト、高度馴化を経て、室堂山荘からいざアタック開始。

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秋なお残る雪渓の雪に興味津々のお客様。

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室堂から一の越までは、基本的には整備された石畳の登山道だ。

が、写真のような溝が何本も道を分断しており(おそらく雨水用)、バランスを欠くお客様には一つ一つが核心部だ。

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障害からボディバランス及び足の踏ん張りを欠くお客様にとって、ストックの利用は生命線だ。

コースタイムの倍の時間を費やし、一の越に到着。

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ここから見上げる雄山は、今日の我々にはまるで難攻不落の城塞のように見えた。ここに至るまでのパフォーマンスから、この先には行けない、また行ってはならないことは分かっていた。

つらい決断だが、この先に行けない理由をお客様の目を真っ直ぐ見て説明する。

幸いなことに、ここから引き返す判断をお客様も納得してくれた。

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さて、下降である。

健常者と比べかなりバランスを欠くお客様に対し、チェストハーネスを用意。これを後ろ側から引っ張れるように装着し、ハーネスとの流動分散でロープ確保。

実際には写真よりももっと近接して後続し、常時テンションをお客様の上方に引っ張り上げるような確保方法で下山した。(これによりお客様の下りでの転倒をゼロに抑えた)

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下降時の急な降雨が石畳の道を濡らして、スリッピーに。

急傾斜の部分では滑りがちになり、そのことで腰が引け気味になるお客様を鼓舞しながら、一歩一歩下降を続けた。

一の越から室堂山荘まで2時間20分かけて無事帰着。お客様の今年の立山での冒険が終わった。

障害者の挑戦的な登山。

文字にすれば素晴らしいが、実際はなかなかに厳しい現実が待ち受ける。

今回の場合、お客様にとっての立山は、厳しい難攻不落の山に見えたことだろう。これに登頂するには、相当な努力が必要だ。

軽はずみなエールは送れない。

今後どうするか。その判断は100%、お客様の手の中にある。

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