モキュメンタリー「近畿地方のある場所について」の考察
Twitterでバズっていた「近畿地方のある場所について」というモキュメンタリーがある。
(モキュメンタリー=フィクションなのだがドキュメンタリーのように見せかけて臨場感を演出する技法)
元々は、回覧しているブロガーさんが紹介していたものなのだけど、めちゃくちゃ面白かったので、とりあえずまあ見て欲しい。
(ホラー系なので苦手な人は注意)
この作品は時系列どおりに並んでおらず、また「雑誌記事やネット情報の発信」という形を取っているため、表紙と時間がズレているケースが多い(2011年の書き込みに「10年以上前に~」と情報をいれるなど)。
読者は断片的な情報を繋ぎ合わせることで全体像を「なんとなく」感じる構成になっている。
いわゆる「考察したくなる作品」だ(作者もそのことを前提に書いている)。
これはまだ完結していない作品で、今後も設定がどんどん積み重なって変化していくだろうが現状において自分が感じたことをメモ代わりに残しておく。
山の神(まっしろさん)
真っ白な巨軀を持ち裸で動き回る怪異。
山の西側を主な拠点にしている。
目的は人間の女性を嫁にすることで、女性であれば幼女だろうが成人だろうが誰でもウェルカム状態で懐が深い。
山に目線を送った人間に様々な方法(多くは山彦)で呼びかけを行い、これに反応すると魅入られてしまう。
女性であれば、嫁になる使命感に駆られ山に向かい、男性であれば山に女性を誘い出す下僕になってしまう。
誘ひ出す言葉は
「おーい、おーい」
「よめにきませんか」
「こっちにおいでーかきがあるよー」
などの単純なことしか言えないようだ
現在確認されている記録で最も古いのは1984年発生の「奈良県8歳少女行方不明事件」。
また2006年掲載の「集団ヒステリー事件」では、知能はとても低く、単純な言葉の繰り返ししかできない動物に近い存在であることが語られている。
考察
「山の神である」「人間の女性を嫁にしたがる」「柿で人を誘う」「知能は動物」という特性から、正体は猿の妖怪ではないだろうか?
また後述するが、彼と思わせる存在のことを「サルのなきごえ」としている箇所もある。
また彼の体は真っ白だが、日本に残る猿と人との異類結婚譚の一つに「白猿伝」がある。
これは若い女性が白い猿にさらわれ子どもを身ごもるというものである。
嫁にした女性は、「死んではいないが、この世にいるとも言えない状態」になることから異界に属する存在になってしまうのだろう。
ジャンプ女と男の子(赤い女)
赤いコートを着た女性と男の子のセット。
女性の方は「ドンドン」と規則的にジャンプする姿と、両手を真上にあげている姿の二つが確認されている。
2001年ごろ、関西某所でいじめを苦に自殺した男の子と、その後を追って自殺した母親がベースになっていると思われる。
男の子は「首がぐらぐらしている」とのことで、首吊り自殺をしたのではないかという説もある(実際の死因は不明)。
まっしろさんに比べて異様に殺意が高く、まっしろさんは一度も身代わりでいい(推測込み)に比べて、こちらは繰り返し身代わりを求めてくる。
2014年3月発行掲載 短編「待っている」では、不動産業者が強烈に「マンション5号棟3階」をプッシュしてくるが、彼も赤い女に魅入られて生贄を捧げ続ける運命にあるのかも(一度で済まないから)。
考察
母親は●●●●●に存在していた宗教施設の信者ではないか?
宗教と言ってもただの仏教やキリスト教などであればわざわざ潜入する必要性がないので、恐らく何らかのカルト新興宗教だと思われる。
私は、この新興宗教が悪魔(ましろさま)を祀っていたのではないかと考えている。
「ましろさま」とは、●●●●●にある小学校で流行っていた遊びのことで、その中身が「赤い女」の行動と合致する
女の怪異は「両手を上げて万歳」しながら「一定間隔でジャンプ」をしている。
この「遊び」の元となったものが新興宗教の儀式であれば、一部の子ども(信者の子)がとても熱心に行っていたのもうなづける。
母親は生前にスピリチュアル系にハマっていたことが分かっている。
このスピリチュアル系というのがこの新興宗教なのではないか?
そして息子を復活させる方法を聞くために儀式を行った結果、母親は悪魔(男の子)の召喚に成功(息子の復活に失敗)した。
さて、作品内に登場する怪異の一つに「呪いのシール」というものがある。
これは、4隅に「了」と書かれたもの或いは「女」と書かれたもので、更に
鳥居とその中央に人型の絵が描かれている。
なぜシールが2種類あるのかは現在のところまだ明かされていない。
結論から言うと、「了」は恐らく自殺した子供の名前である。
作者ページでは自殺した子供の名前が「あきら」であることが示唆されている。
「了」は「あきら」と読めるので、このシールは男の子自身に関連するものである可能性は高い。
また「ネット収集情報4」ではお札屋敷(赤い女の家)の中に「了」と書かれたお札(シール?)が発見されている。
2012年にインタビューを受けた男性は、霊能者から女を媒介にして「霊よりも一つ上の次元の存在」に憑りつかれてしまったと説明されている。
さて、それが何故「悪魔」なのか?
「読者からの手紙2」では、編集部に読者から不気味な手紙が届いたが、それは「赤い女」を弾劾するような内容だった。
そして、その中に「アキラ=あくま」と解釈できる文面がある。
ジャンプ女が息子を復活させる儀式を行おうとしたが失敗し、悪魔を召喚してしまったと読める。
アキラ(了)は「女が股からではない、とほ(お)いところ(異界)から(儀式で呼び寄せた)悪魔」である。
*「赤い女」こそが新興宗教の主である可能性もある
子どもが自殺したのは2001年ごろで、その後母親も自殺をしている。
母親の自殺年は明らかではないがそう遠い年数ではないと思う。
「ましろさま」が小学校で流行していたのは「2018年発行雑誌の2年前に大学3年生(20~21歳。留年はしていないと仮定)だった人物が小学3~4年生(8~10歳)だったとき」のこと。
つまり概ね2004年ごろの話になる。
つまり(推定で)母親が自殺した後のことなので、偶然母親が悪魔を召喚したことをきっかけに新興宗教ができた可能性もある。
この説を取るならば、赤い女の「上を見て両手を上げる」「何度も飛び上がる」行為は、首吊り自殺をした息子を救おうとした行為が神格化されたものと言えるだろう。
神社の神(大きな口の男)
この記事の第一稿では、2種類の怪異(山の男と赤い女)を軸にして記事を書いたが、自分で書きながら、今一つ納得がいってなかった。
また、「読者からの手紙2」において編集部に不気味な手紙を送ったのは、男性の口調で女に対して敵対的であることから、この手紙を書いたのは山の神であるとしたが、そうだとすると手紙の中に違和感がある文面が幾つも存在している。
「西から響く音がうるさい、猿の鳴き声かと思う」
→山の神は西がテリトリー。また山の神は要求から猿の怪異の可能性。
「食べ物に毒が入っている。柿など(に)惑わされるな」
→山の神は柿で人を誘う
「あんな白痴が神なんて恥ずかしい」
→山の神とされる存在のセリフは
「おーいおーい」
「おいでー かきがあるよー」
と言った単純な繰り返しに加え、それを聞いた人の印象は、ただ人間の音声を真似しているだけと感じており、知性自体が存在していない動物か……?🐒
逆に、編集部への手紙の主は(内容はともかくとして)文面は単純ではなく、一定の知性は感じられる。
では逆にこれが「赤い女」側が書いた可能性はあるのだろうか?
しかし、この手紙ではヲンナや「アキラ」に対しても敵対的であるし、ほぼ確実に「赤い女」が送った「読者からの手紙3」の文体とあまりにも違いすぎる(そもそも手紙なら自分で書くだろう)。
となれば、本当は東西の二種類以外にも、中央に鎮座する「第三の怪異」が存在し、彼(若しくは下僕)が書いたと考えた方が色々な事象に納得がいく。
そして第三の怪異とは2005年にバイカーが祠から解放してしまった「神社の神」ではないか。
考察
「神社の神」は、元々山の中心地に鎮座する神社の祠に封印されていた。
祠の中には人形が詰められていたことから、地元の何者かが彼に捧げものをして収めていたのだろうが、何らかの理由(老衰?)で途中からこれなくなったのではないか。
少しずつ漏れ出す怪異にたまたま触れてしまったバイカーが誘われ、解放してしまったかのように思う。
この「神社の神」は様々な面で山の神と類似しているが、細かく詰めていくとやはり別の神格の可能性が高そう。
まず、「山の神」とほぼ確定している描写では、彼は「白い巨躯で裸である」ことが概ね共通しており、極めて印象に残る姿だ。
しかし、この「神社の神」(と推測される神格)は「大きな口を持つ人間の男」として描写されている。
登場しているのは「読者からの手紙1」と「短編心霊写真」の2箇所。
どちらも体の白さや特異な大きさについての記述がないので、山の神とは似て非なる別の神であることが分かる。
山の中心に位置する神社を根城とし、祠もボロボロであることから、かなり歴史のある怪異であろう。
また、彼が山の神と違うのは、彼の怪異は人の自殺願望を掻き立て、多くは飛び降り自殺に誘うというもので「嫁が欲しい」山の神とは明確に目的が違う。
(この飛び降り自殺については後述)
また、一番初めの記事であるAV女優の記事で登場する謎の書き込みの主は女性に対して「かきもあります」と誘っている。
しかし、前述の「動物のような知能のまっしろな怪異」は「かきがあるよー」と人を誘っている。
一見すると微妙な表現の違いでしかないように思えるが、実はこの二つのセリフは話し手が違うことが作者のコメントから分かっている。
AV女優への書き込みは内容はともかくとして応答はできていることから、これはやはりまっしろさんとはまた別の怪異である「神社の神」なのではないか。
実は彼を映した写真がある。
作者欄の近況ノートに「IMG_0053」という記事があり、そこにはただの真っ黒な写真が掲載されているだけなのだが、実はこの写真のホワイトバランスをいじると大きく開いた口が浮かび上がる・・・
(閲覧注意)
呪いのシール=「神社の神」への儀式説
「呪いのシール」の情報は少ないが、今のところ何者かがこれを広めようとしているというのは分かっている。
そして「了」のシールと「女」と書かれた2種類があるのは先ほど述べた通り。
推測だが、このシールは山の根源的な力の持ち主である「神社の神」から力を吸い出すものではないか。
このシールは文字こそ違えど中心に鳥居と不気味な人影があることは共通している。
これは、鳥居(神社)が全ての力の源であることを示している。
シールが2種類あるのは、もちろん「山の神」と「赤い女」の違いだろう。
山の神→「女」と書かれたシール。主が古い存在だからアナログ(手書き)で量産しようとする。
男の子→「了(あきら)」と書かれたシール。新しく生まれた存在だからデジタル(チェーンメール)で量産しようとする。(「読者からの手紙2」にも、赤い女側が電波を得意とするようなことが書かれている)
このシールの力を使って怪異たちは「神社の神」の力を奪い合っている。
だから、「読者からの手紙2」で神社の神は「山の神」と「赤い女」の両方に憤っているのではないか。
また、シール以外にも「神社の神」に関わりそうな要素がある。
●●●●●では何度も自殺が取り上げられているが、最も多いのは飛び降り自殺である。
まずは山の西側にあるダムでの飛び降り自殺がある。
また、幽霊マンションは山の東側にあるが、その5棟からは何度も飛び降り自殺が起きている。
なぜ、山の両側で飛び降り自殺がそれぞれ起きているのか?
「小沢君」は、実はこの自殺は神社に向かって行っているのではないかと推測している。
つまり、神社に向かって飛び降り自殺をさせることは、彼に対して供物を捧げることになり、これもまた力を引き出すことに繋がるのではないか。
マンションの話には「5棟3階」という数字・・・「53」がで出てくる。
この「53」という数字は前述の神社の神のものと思われる口が撮影された写真の番号「IMG__0053」と同一である。
更に「学校の怖い話シリーズ その八」では人を死に誘うチャイムが紹介されている。
夕方五時のチャイムがときどき三分遅れになり、それを聞くと死にたくなってしまうという。
「53」は「神社の神」に供物を捧げる大きな意味があるのかもしれない。
「丑三つ時」の丑が五の文字に見えるのでそれをモジったのか?
(もっとも丑と五は形が似ているだけで、全く違う意味なので割とこじつけ)
作者「背筋」について
モキュメンタリーでは、作者は往々にして重要人物である。
そもそもこの作品は「過去に残された資料を代わりにアップロードしている」だけであり、厳密な意味での作者ではない(という設定)。
コメントにも「この作者は知ると伝播する呪いを広める役割なのでは?」というものがあるが、実際そのように思われる伏線がいくつかある。
・作者の自己紹介が「たすけてください」
非常に玉虫色の表現
(真相に迫りたいので)助けてください
なのか、
(呪われてしまったので)助けてください
なのか。
・見つけてくださってありがとうございます
「赤い女」関連のキーワードだが、何故かコメント欄で数度この表現で返信コメントとをしているのが見受けられる・・・
「まっしろさん」は一度の身代わりで解放されるが、「赤い女」の呪いは半永久的に身代わりを見つける必要がある。
この表現は「赤い女」の・・・。
・「あ」
2005年に失踪したバイカーのブログには一時期不審な記事が投稿されていた。
そのタイトルは「あ」。
この投稿を行ったとき、バイカーは怪異に操られていると思料される状況にあった。
ところで、作者は近況ノートにいくつかの投稿を掲載している。
そのタイトルは・・・
食べ物に味がしない件
仏壇に供えた(神に捧げた)食べ物は味が薄くなるという伝承がある。
「待っている」に登場する母はすでに神の僕となっているため彼女の作るものは味がしなかったのだろう。
可哀想なのがキャンプ場に来ていた家族連れで、意図せずして神に捧げ物をしてしまったことになる。
この時他に客がいなかったということで、この日が「そういう日」なのは常連には暗黙の了解でたまたま来てしまったという感じか。
舞台となった山
舞台は「●●●●●という近畿地方の山」を中心としている。「県を跨ぐ山」で、「南北に連なり」「東が奈良県で東西に分かれている」とあるので、たぶん生駒山がモデルなんじゃないかな。
この山は大阪と奈良を分断するように連なっている南北の山で関西に住む人は大体ここを想像したと思う。
生駒山は霊山であり心霊スポットが多いものの、ダムはないので一か所の特定をモチーフにしたわけではなく、近畿圏の複数個所の心霊スポットを参考にしている可能性は高そう。
その他の謎
・柿の謎
柿は嫁に繋がることで「柿の木問答」というものがあるそうな。
これは新婚初夜の床入り儀式で、「柿をちぎっていい?」「ちぎって(契って)いいですよ」と答えると言うもの。
猿神であることも柿に繋げているのかもしれない。
・ビジネスサークルの謎の言葉
現在のところ全く不明。
ちなみにググったら「シーザー暗号で解ける」という5chスレッドが引っかかるがでたらめである。
ChatAIで検索してもいまいちいい答えが出てこない情報求む。
とりあえず、今のところは以上です。
本家では更新が続くのかここで終わってしまうのかが分からない状態ですが、今後の展開によってはまた内容が変わる可能性は高いです、ご了承ください。
かなりの長文になってしまって、読んだ人も疲れてしまったと思います。
ちょっと休憩します。見つけていただいてありがとうございます。
↓
山へ行きませんか?