【エッセイ】偶帳・冬雪抄 第二段『もっと自信を持てばいいのに』
偶帳・冬雪抄
第二段『もっと自信を持てばいいのに』
自分が言えることではないが、僕の身の回りには、劣等感を抱いている者が多い。「自分なんか、みんなと比べて……」、「あいつは俺らと比べて……」とか。正直、僕の知り得る限りでは、比較はすべての争いの種になるのであると考えている。
だからこそ、誰かと自分を比較する結果となる。残念ながら、他人と自分を比較することで得られるものは、つまるところあまりないのだ。
――いや、訂正しよう。比較をすべきなのは、憧憬する人物なのだ。自分の憧れている人物に追いつくために、自分はどこまで到達しているのか。比較の本来の使用用法はこんなところだろうか。比較対象は決して嫌悪対象ではない。自分より劣っているから、相手を蹴落としてもよい、相手より自分が劣っているから、自分を蹴落としてよい事由にはならない。
それで、心を壊した人を知っている。自分を嫌悪して最終的には、自分を殺した人を知っている。あるいは、それで思い悩んでいる者がいる。
でも。劣等感を抱えているとはいえ、その者に魅力的な部分がないのかと言われたら、不思議なことにそうでもないのだ。受けた痛みを知る者は、それを誰かに向けることがないのだから。
だからこそ、これを読んだ自分を卑下する者は、傲岸に胸を張って生きても良いと、この文章を通して言いたい。無責任かもしれないが、たとえ君が自分の事が嫌いだとしても、たとえ目に見える人が冷たい目をしていたとしても、そのうち一人はそう見えていないかもしれないのだから。
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