誰のことも知らない
おはようとリビングに行けば朝食の準備をしてくれる人がいる。その端っこ、永遠と酒を体内に取り込み、タバコ吸い、この部屋の秩序を保ちつつ、部屋を一枚の絵画にする男がいる。
いまわたし、現代のこと、何も知らない。外の情報も、この瞬間のことも、積極的には、分かろうとしていないので、分からない。
ネットを閉じて、全ての通知をオフにして、世界とわたしを遮断して、ログアウトできたら、遺書をしたためて一度死ぬ。
全ては、一度死んでからもう一度。
鏡月の緑茶割り、水割り、白ワイン、これは自分の血液(赤ワイン)、喉を熱すウイスキー、水のように飲み干す缶ビール、規則正しく正方形のお皿に並べられるチョコレート、あなたの鼓動で、あなたの呼吸で、体現されるあなたの音楽、言葉。どうにもできないほど感情的になって泣く。
私は今日の私というものをこの日、一日のみの消費期限でやる。そうだ、それでいい、それでいいんだ。私は今日の私をやりきるだけで良い。難しいことはかんがえなくていい。今日かぎり、わたしはこの日の私を全うする。明日に引きづるものは何もない。明日は明日のわたしがわたしを全うしてくれる。亡霊のように引きずった今日のわたしはいなくなる。明日のわたしだけが明日の賞味期限内で、消費されるだけ。そのように日々がすぎてゆけば。
交わることで生まれるものが中途半端になる場合のことを考えて壁を作っていく。その壁についての想像力をはたらかせて、避難しないで、あなたはあなたに夢中になればいい。月日は長くないから。ずっとそこにないから。そのままが永遠に続くことはないから。懐かしいと思う前提で今を嗜むんだって。
冷水をコップに注ぐ。アルコールをさらに体内に取り込む。パンを食べる。音楽を聴く。猫と戯れる。程よく差し込む光を浴びる。埃まみれの街を想起しながら、タバコの煙に包まれて微睡む。いつかの風を思い出して程よく切ない。
レスポンス、不安が付きまとう、呟くのは簡単だ、空白の中に問いを投げるだけ。
せせら笑い。そのようにして、私の表情というものは、顔面の表情筋をつかい、様々なところからシワを寄せ、煩雑な地図を描いて、笑顔を浮き上がらせる。あなたに、通わせている、表情筋は、素直だ。(表情筋をつかって、シワを中央に持ち寄っているよ)
水を得た魚のようにわたしは、あなたは、唸る。夏を、(で)会いで、愛を憂い、愛で言葉を喘いで、この瞬間のじぶんを全うする。
強制的に作っている、緊張感、ダウナー感、だるい足、切り刻まれた腕、刻まれる(とき)
僕に伝う衝動、その全てが、僕を、自由に、この水槽の外側の世界に意識を向けて、空白をなくしてゆく。そして、僕はこの夏を全うする。
2015、夏。2021、夏。行ったり来たりして、ずっと鳴り止まない、言葉、音楽、衝動というもの、つまりは、活路ではなく、発露を見い出せということの示し。ずっとずっと鳴り止まない、パニックになる脳内、いつまでも終わらない自分自身、過ぎてゆくようで、決められている日々、きめられた毎日なんていらない。
夜を作ろう、ログアウトをしよう。
アーメン、返せない借りを
この血肉と交換して
身体を維持するための箱庭は
負い目があるから続いてゆく