JSTQB AL テストマネージャ試験にほとんど勉強しないで一発合格した話
2019年8月にJSTQB Advanced Level(テストマネージャ)資格試験(以下、JSTQB AL(TM))を受験し、一発で合格しました。
少し昔の話(今は2021年初頭)なので記憶が曖昧な部分もありますが、経緯や当時感じたことをまとめてみました。
受験を予定・検討している方の参考になれば幸いです。
※試験の概要やJSTQBに関しての基礎情報は割愛しています。ご容赦ください。
事前準備
Foundation Level
Advanced Levelの試験を受けるにはFoundation Level試験に合格している必要があります。自分は前年の2018年8月に受験、こちらも一発合格しています。
このときは公認書籍「ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation」をベースに、それなりに勉強したと思います。
JSTQBによるAdvanced Level過去出題問題の解説セミナー資料
Advanced Levelは過去問が公開されておらず、公認の参考書もないため、シラバス以外に参考にできる情報が極端に少ないです。
(英語が読めれば海外にはもっと情報があるのかもしれませんが・・・)
JSTQBのサイト内に過去問をベースとしたセミナーの配布資料があり、その中にテストマネージャの過去問が3問だけ載っています。
それを解いてみて「簡単だな」と感じたため受験を決意しました。
業務経歴申請書
受験には3年以上の業務経験が必要で、それを証明するための経歴書を出すのですが、自分はQAの経歴は浅いもののゲーム開発に20年近く携わっているので特に苦労することなく書けました。
申請書の業務分類によると
1. ソフトウェアテストに関する業務
2. プロセス改善を含む品質保証に関する業務
3. ソフトウェア開発に関する業務
4. ソフトウェアの研究開発(R&D)に関する業務
ということで、テスト関連の業務経験がゼロでも大丈夫なようです。
参考になるか分かりませんが受験時の業務経歴申請書を貼り付けておきます。
学習内容
シラバスを1回読んだだけです。いやマジで。
知らない用語が出てきたときに少し調べたぐらいで、特に引っかかることはありませんでした。所要時間は2~3時間だと思います。
なぜ合格できたか
受験記録を公開されている方の記事をいくつか拝読しましたが、かなり勉強されているのにも関わらず何度も落ちている方も多いようです。
自分のどこにアドバンテージがあったのか、分析してみます。
・試験慣れしていた
・情報処理技術者試験の知識
・PMの知識とPMBOK
・業務経験
試験慣れしていた
学生の頃からIPAの情報処理技術者試験を中心に多くの検定や試験を受けていたので、学習以外の試験対策(テクニック)が身に染み付いているようです。
JSTQB ALの試験時間は180分と非常に長丁場です。
他で長時間の試験には例えば「基本/応用情報技術者」が午前・午後とも150分あります(結構大変です)が、1回の長さではそれを上回っています。
試験中、180分も集中力を高く保てる人はまずいないと思うので、時間配分がとても重要になってきます。回答ペースは少しずつ落ちていく想定で計算しましょう。
ひとつひとつの問題も長文が多く、要点を短時間で理解するテクニックが求められます。問題文のラストと回答を先に読むことで「何を聞かれているか」を先に知る手法が有効だと思いました。
なお回答は4択ですが、ほとんどの問題は消去法で2択に絞れます。
あと、これはテスト熟練者が陥りやすいのですが、問題文に書いてあること以外のことは考えてはいけません。テスト業務では疑り深く、想像力を働かせて潜在的なバグをあぶり出すことも重要ですが、試験ではこの「もし○○だったらどうなるんだろう」という想像力が邪魔になります。ツッコみたいシチュエーションも出てくると思いますが、グッと堪えて素直に読みましょう。
体調管理も重要です。試験中にベストを尽くすため、前日は睡眠時間をしっかり取り(一夜漬けでなんとかなる試験じゃないです)食事やトイレのタイミングにも気を遣う必要があります。
試験会場の独特の空気にアテられてしまい体調を崩す人もいます。マークシートも慣れないと記入に時間がかかったり、ミスすることがあります。
このあたりが不安な人は他の検定試験(受験料が安いやつ)で練習すると良いかもしれません。
情報処理技術者試験の知識
職務経歴にもあるとおり、ITパスポートから高度試験まで、情報処理に関する幅広い知識を有しており、ソフトウェアテストに関しても基礎的な素地があった、というのは大きいと思います。
これは高専で「広く浅い知識」を習得できた恩恵かな、と感じています。(じゃなきゃエンベデッドシステムスペシャリストなんて受けようとも思わない…)
PM(プロジェクトマネージャ)の知識とPMBOK
PMの実務経験は無いものの、プロジェクトマネージャ試験に挑戦するために、PMBOKを中心に学習していた期間がありました。
(試験は午後IIの論述試験で落ちましたが…)
PMとテストは決して無関係ではなく、PMBOKの知識エリアにはプロジェクト品質マネジメント(つまり品質管理)が含まれています。他の知識エリアと合わせて学習することで、プロジェクトを上位から俯瞰的に捉えるための目線を得ることができました。
PMBOKについて学習してみたい方はこちらの書籍がオススメです↓
業務経験
品質管理部を始める前は、エンジニアが1~2名の開発案件を多数経験しており、プロジェクトを1から10まで見られる機会に恵まれていました。
プロジェクトでは品質だけでなく納期やコストも重要、つまりQCDバランスを考える必要があり、またクライアントや外注との折衝によりステークホルダー・マネジメントの経験ができました。
また、部長という立場において目標設定や目標管理、人事評価、採用などのマネジメント業務も長く経験しています。
特に人事評価では絶対評価と相対評価を使い分け、常にフラットな目線を意識しています。
何が言いたいか
前置きが長くなってしまいましたが・・・
JSTQB AL(TM)の問題の内容を振り返って感じたのですが、この試験はテストマネージャではなくプロジェクトマネージャに近い目線がないと難しいのではないでしょうか。
テストマネージャの役割をもし、「テストを完遂させること」とか「品質を上げること」とか思っているのであれば、この試験に合格することは恐らく無理です。
テストプロセスは、プロジェクトまたはプログラム全体の成功に対する貢献によってのみ(または、より深刻な故障を防ぐことによって)価値を付加できるので、テストマネージャはそれに基づいて、テストプロセスを計画しコントロールする必要がある。
別の言い方をすれば、テストマネージャは、他のステークホルダ、その活動(たとえばテストが行われるソフトウェア開発ライフサイクルなど)、およびその成果物(たとえば要求仕様など)のニーズと状況に応じて、他の関連する活動と成果物を含むテストプロセスを適切に準備する必要がある。
※テスト技術者資格制度 Advanced Level シラバス日本語版 テストマネージャ「2.2 状況に応じたテストマネジメント」より一部抜粋
テストの現場では「如何にテストを上手くやるか」というプロセスに注力しがちですが、テストマネージャに求められるプロセスはそこではないのです。
このあたりがテストの熟練者が何度受験しても不合格になってしまう要因なのでは、と感じています。
テスト計画と実施結果だけでなく、他に必要なものがあればそれも含めて「ニーズと状況に応じて適切に準備する」という、非常に曖昧な表現をされています。
このあたりの匙加減を理解するには、PMに近い実務経験をするか、経験者と一緒にシミュレーションを何度もやるぐらいしかないのかもしれません。
蛇足 - 合格ラインについて
JSTQBのサイトのFAQによると
ISTQBの「ISTQB Exam Information」に従います。
ということで案内されているリンクに飛び、さらに辿っていくと、
Advanced Level»2012 Advanced Level General Files の中に「 ISTQB - 2012 Advanced Level Syllabi Exam Structure and Rules 2012-1.2」というPDFが見つかります。
3.3. Passing Score
3.3.1. A score of at least 65% is required to pass.
(3.5.2. Advanced Level Test Manager Exam Structure - NOTES: より抜粋)
The total number of points for this exam should be set at exactly 115 points.
Therefore, a minimum of 75 points is required to achieve a passing score.
つまり合格ラインは65%・・・合計115ポイント中、75ポイント以上で合格ということらしいです。(配点バランスは書いてない模様)
FAQに直接書いとけよと言いたくなる情報量ですが、何かしら事情があるんでしょう、きっと。
最後に
JSTQBに限らず、(資格取得が目的ではない)試験・検定の必要性については意見が分かれるところだとは思います。
社内でもJSTQBや情報処理技術者などの受験の強制はしていません。
会社としてチャレンジの推奨はしています(支援制度もあります)が、必要かどうかは人それぞれ異なるため、個別に判断をしています。
試験や検定は合格・不合格に関わらず、受けること・準備することによって知識やスキルをレベルアップできるものだと考えます。合格のテクニックを磨くだけで終わらせず、意味のある受験をしたいですね。
(そして受験料と時間が勿体ないので一発合格を目指しましょうw)
執筆している間にJSTQBの広報ワーキンググループのTwitterが開設されました。
正直JSTQBの知名度は致命的に低いと思っているので、啓蒙活動をしていただけるのは大変ありがたいです。
自分も業界の一員として、情報発信を続けたいと思います。