書評:反結合性軌道の役割
読んだ本
M Orchin, H. H. Jaffe 著、米沢貞次郎 訳、反結合性軌道の役割、第1版第7刷、東京化学同人、1979年、102頁、(現代化学シリーズ, 53).
分野
量子化学、分子軌道法
対象
学部生以上
評価
難易度:易 ★★★☆☆ 難
文体:易 ★★★☆☆ 難
内容:悪 ★★☆☆☆ 良
総合評価:★☆☆☆☆
単なる量子化学の本
内容紹介
感想
量子化学の成書は、和書に限っても腐るほど存在している。しかしながら、反結合性軌道に焦点を当てて書かれたものは珍しい。少なくとも、私は当書の他を知らない。そのため、読む前は非常に楽しみにしていたのだが、いざ読んでみてがっかりした。はっきり言えば、単なる量子化学の本との違いがあまり感じられなかった。第1、2章は、原子軌道や分子軌道に関する説明で、中身は一般的な他の成書と同じである。第3章以降はカルボニル錯体や光化学、Woodward-Hoffmann則についての説明がされ、この点では他の成書との違いが表れている。しかし後半は駆け足でそれぞれの応用分野の説明がなされ、はっきり言えばそれぞれの分野の専門書を読んだほうがいい。
つまり、一般的な量子化学の教科書と、光化学、有機軌道論などの教科書を一緒くたにし、100頁まで濃縮したのがこの本である。”簡潔”と言えば聞こえはいいが、はっきり言って当書で何かを理解しようとするのは難しい。また、後半の応用分野も統一性がなく、まるで自分の好きな食べ物だけ食い散らかしているようだ。ただ、どうやら訳者も似たようなこと感じたらしく、以下のように述べている。
普通、訳者序では中身をべた褒めするのが普通である。しかし訳者の米澤先生は、若干貶した書き方をしている。最後に多少擁護はしているが、流石に苦しさが隠しきれていない。
はっきりいって、令和で当書を読む価値は感じない。現代で同様のタイトルの書物を発行するのであれば、せめて超共役やσホールなどに対する記述が欲しいところである。
購入
どこで購入したのかは定かではない。現状、値崩れしているので数百円で買える。
参考サイト
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