世の中のほとんど全てのものごとは複雑にできているが、現代はそれを無理やり単純に解決しようとして更に複雑化している:物理学や数学の線形と非線形の考え方

世の中には様々な物事があり、それから発生する様々な問題がある。
物事に対処したり、問題を解決するとき、それをどのように理解するかで、対処や解決がとても簡単になったり、とても複雑になったりする。

厳密に見れば、世の中の物事はほとんどが複雑なものだ。
人の気持ちが単純ではないため、人が絡む物事は全て「単純ではないもの」になるからだ。

物理学や数学的に言うと、単純なものは線形、複雑なものは非線形と分類される。
線形の問題の典型的なものは、直線でできた方程式を解くようなものだ。
小さじ1の塩と小さじ3の塩では、単純に言えば、小さじ3の方が3倍多いので、3倍塩辛い。
だが、人間の味覚は鈍感な部分があるので、単純に「3倍塩辛い」と感じるわけではない。
つまり、「量が3倍だから3倍塩辛い」と考えるのは単純な線形的考え方で、「量が3倍だからといって、正確に3倍塩辛くなるわけではない」と考えるのは非線形的な考え方といえる。

どんなに電車が混んでいても、「必ずこの時間にこの電車に乗る」という人は線形的だが、「電車の込み具合で利用時間を変えたり、乗る路線を変える」という人は非線形的だ。
通勤電車を使う人は、厳密には非線形的な人がほとんどだと思うが、大まかに見れば、線形的な人が多いと言えるだろう。
これを敢えて線形的と見るか、非線形的と見るかという、どちらの見方を好むかによっても、物事の処理の方法や、問題解決の方法が大きく変わってくるのだ。

現代社会では、物事の単純さ、複雑さを無視して、問題解決の方法としてとても単純なものを短絡的に選ぶ傾向がある。
いわゆる、「忙しい現代人」という言葉に甘えた大多数の一般人が、問題解決方法を真剣に探さず、問題の分析も行わないままに、単純な問題解決方法が提示されれば、すぐさまそれに飛びつく傾向にある。

この傾向はあらゆる分野に浸透している。
ITシステム業界では、社内や業界の実質的な問題に目を向けず、社内のシステムに無知なまま、「とりあえず、このシステムを導入すれば全て解決するから!」といって、不用意なシステムに手を出す経営層が多い。
医薬業界では、「とりあえずこの薬を飲んでおけ」とか、「とりあえずワクチンを打っておけ」と言われると、薬やワクチンの中身に何も危機感を抱かずに、製薬業界の言うとおりの問題解決が得られると思って手を出して、健康上の複雑な問題を抱える人が多い。

何も考えずにむやみやたらに単純な問題解決方法に飛びつくと、更に問題は複雑化するものだ。
物事を適切に処理して問題解決方法を的確に導く、物理学的・数学的に言えば、線形か非線形かの処理を適切に行って、問題解決方法を的確に導くことが今、求められているのである。



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