【Ss/sSコマ撮り】 金属の音
■金属の色とFMラジオ?
音と形のコマ撮り企画第3本目。今回の素材は「金属」
日常の中でよく見る金属たち。彼らにはどんな音が潜んでいるでしょう。
くっつける音のテーマはなんと「FMラジオ」
いやはやどうなることやら……
「金属の音」早速、視ていきましょうか。
■ 金属の色
何気な〜くみてる金属だけど、いざそれを絵に描くのって難しいですよね。
困るんですよね「金属の色って何?」って。
あなたは金属の色と言われてどんなものを思い浮かべますか?
銀色、灰色、白、黒、などなど。キラキラと変化するその色を形容する語は一体なんでしょう。
ズバリ「周りの環境」です。
モノの色とは、そもそもどの色の成分を「反射」するかです。
赤いリンゴであれば、赤色の成分をよく反射します。
オレンジであれば、オレンジ色の成分をよく反射します。
したがって、金属の色とくれば金属が反射しているものです。
金属が平面であれば素直に反射しますが、球体であれば形を歪めて反射します。「金属そのものの形によって変形された環境」これが金属の色なのです。
* 「形」から取り出したもの:環境に影響される金属の色
■ FMラジオの仕組み
ここになぜFMラジオが関わってくるのか。順を追って説明します。
今回、環境に影響される金属の色を表現するために、周りの音に影響される音を作る必要がありました。そこで思いついたのがFM音源。
シンセサイザーには様々な音作りの方法がありますが、ある独特な方法によってできるのがこのFM音源です。
この「FM」に環境依存の音を作るヒントがあります。
・FMとは
Frequency Modulation(周波数変調)の意。ざっくり説明で
元になる音の周波数(高さ)に、別の音で影響を与えるシステム(※1)
のことです。
元の音は別の音源の影響によってその高さが上がったり下がったりします。
下図のように、元の音は変換されます。
波が密になっているところは音が高く、広がっているところは音が低くなります。
細かい波に長い波でFMをかけると、高低の変化するビブラートのように聞こえます。これがFMの仕組みです。
先に出てきたシンセのFM音源の場合は、影響を与える波がとても細かくなっており、複雑な波形を作り出して独特な煌びやかな音となります。
FMラジオも名前の通りこのシステムが使われています。
・ラジオの場合は電磁波(=光)を音(声)の情報で影響を与える。
・ある特定の電波の周波数に音声の波で影響を与えたものを発信する。
・リスナーはラジオを使ってそれを解読し、元の音声を手にいれる。
話は戻って。FMでは以下のことができることがわかりました。
「ある音がある音に影響を与えて変調した音を作り出す」
* 「音」から取り出したもの:音に音で影響を与えるFM
※1
(ここでは音波に限るので「音」と言ってますが、正確には一般的な「波」についての話です。音は空気の振動という波です。)
余談
ちなみにAMはAmplitude Modulation (振幅変調)の意で、FMとは違い波の振幅に影響を与えます。音の場合は、影響を与える波によって音が大きくなったり小さくなったりします。
■ 実験 金属の音を視る
形と音それぞれから取り出したポイントをあげる。
* 形:環境に影響される金属の色
* 音:音に音で影響を与えるFM
これを対応するように書き換えます
形:周り環境がある金属に影響を与えて変形した金属の色を作り出す
音:別の音がある音に影響を与えて変調した音を作り出す
さて、これらを今回の映像でどのように表現したか。
・形:金属
色面のアニメーションを金属に反射させてコマ撮りをしました。映像には様々に色が変化して行く様子が映し出されていますが、画面に映っているのは実際は金属のみ。色を変形させているのは、映っていない画面外の色面のアニメーションなのです。
こうして周りに影響される金属の色を表現しました。
・音:FM
ピロピロピロと不安定な音がずっと鳴っているのがわかりますか?
これが基本の音に周りの音でFMをかけた音です。
シャラーンという煌びやかな音やドラム、ベースなどの周りの音に影響され、音の高さが絶えず変化します。また、人の耳にはほぼ聞き取れない低音も入っておりそれも基本となる音に影響を与えています。
映像が白くなり色がなくなった時に対応して、音楽の方も周りの音が消えます。その時聞こえるのが基本の音の本来の聞こえ方です。 (※2)
ちなみに、シャラーンという音はFM音源です。
奇しくもFM音源は「金属的な音」と表現される。金属自体を叩いて鳴る音に近いのでしょう。
こうして、周りに影響されてその様相を変える金属の色を、FMに因る周り音に影響を与えられた音で表現しました。
金属の形を聴くこと、FM変調された音を視ることができました。
※2
若干のトリック。金属が真っ白になった時、本当は、「真っ白」を反射しています。「映像の世界では黒と白は「無」を表現してるので問題ない」というのは今思いついた言い訳。金属だけ単体で取り出してみるのは我々には不可能です。残念。無念。
■ おまけ 撮影方法
今回、映り込みを使った撮影ということで、以下の図のような撮影セットを組みました。
カメラの四方をパネルで囲み、映り込みを最低限に。性質上カメラはどうしても写り込んでしまう。(映像の中心にある黒い丸)
撮影手順としては
・パネルの箱の内側に色紙を貼り付け、アニメーションをさせる。
・そのアニメーションが金属に反射される
・カメラに映る
といった感じ。
パネルの一面を開き、色紙を動かしては、パネルを閉じて撮影→パネルを開き……を延々と繰り返す。
金属に映った絵を見て動かしているので、実際の色紙とは左右が反転していたり、形が歪んでいたりでなかなか難しかったですが、おかげさまで不思議な映像ができたと思います。
終わり
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