映画の感想

『プロメア』『来る』『ミッドサマー』『パラサイト』『グエムル』

なぜだか急に映画を一気見したので、適当に感想書いていきます。

『プロメア』 ★☆☆☆☆

TRRIGER製作のアニメ映画。
なんかびっくりするくらい自分には刺さらなかった。
熱いバカっぽい感じとか嫌いじゃないけど、それ以前にストーリーを見せる気がなさそうなのが良くない。
派手な画面で派手に動いておけばいいんでしょ?みたいのが見ててきつかった。ここぞとばかりにタメてそれを発揮すればいいのに、ずっとそのテンションのままなのが食傷気味。

キャラクターには設定だけがあって中身が無いように見えるのは何でだろう。原因はおそらくバックボーンを口と一枚絵で説明してるから。
つまり、心境としてではなく説明のバックボーンになってる。単なる設定公開。
OPでバーニッシュの話を紙芝居的にやっちゃうところとかもそういう原因。
前日譚なら前日譚で物語の中にうまく組み込んで欲しい。

あとは全体通して映画じゃなくて、TVの作法で作ってしまっている感じ。
特に世界の設定もそうだけど、レイアウトとアクション。
レイアウトは顔や目のアップとが多い。キメツを映画館でみた時も思ったけど、画面が近い。
アクションは3Dを馴染ませるためなのかコマ落とし過ぎ、動き(幅)激し過ぎで見づらい。27インチの画面で見てそれを感じたので、劇場で見たら耐えられないかも。

多分、自分の見方が間違ってるんだと思う。
ストーリー見せる気がないのはいいとして、そこを開き直って、デウス・エクス・マキナって名前のロボットが出てくるのが余計にムカついた。
だからと言ってアニメーションの動きに心地よさすら感じなかったので、単に相性が悪いんだと思う。
ただ、曲はかっこいい。


『来る』 ★★★★☆

中島哲也のオカルト映画。
面白かったし好みの映画だった。最近呪いに興味があるのも加勢して。

老若男女の霊能力者大集合や除霊に除菌スプレー使ったりするところが、個人的にベストつぼ。幽霊探知に電子機器を使ったり、いろんなことをない交ぜにするやり方は大好き。
あのシーンだけでもこの映画の価値は高い。
古くから伝わるものだから古いままなのではなく、伝統として受け継ぐための環境への適合。どこへ行っても重要なことです。
というか、幽霊が電話使えるなら、良く考えたらこちらも物理干渉可能ですよね。いや、でも物理的に接触してきているのに、非物質的というズレも恐怖のタネか。

妻夫木聡、黒木華、岡田准一の視点の3部構成も面白い。(原作小説がそういう風になってるんですね)
多角的、多視点的に見ることで「来る」奴について視聴者に情報が集まって来るのは、襲われる当事者と謎解きをうまい具合にずらせて良い手法かも。
ただ、妻夫木パートはダレる。のちのカタルシスのためと分かっていても薄っぺらい男の話をずっと見せられるのは辛い。
ラストは賛否あるらしいが、至極真っ当な終わり方をしていたと思う。
「生まれてしまった子」に場所が与えられたエンディングかな。

幽霊の正体など明かされないものの、「ネグレクト」「生まれなかったもの」「生まれてしまったもの」のようなテーマは伝わってくるので良い。
間引きや、流産のような子供を殺すことに対しての呪いって勝手に日本特有な気がした。何でだろう。
イザナミとイザナギも確か一番最初の子生みに失敗して川に流していたはず。その辺の日本人の根源的な子供への恐怖や呪いがベースにあるのも見やすい理由だったのかも。

エンタメ映画とするならもう少しテンポあげてもらってもよかった。
映像表現含め普通のホラーとの差別化されていて独自性があるので暇があったらもう一回見るかも。


『ミッドサマー』 ★★☆☆☆

アリ・アスターの「明るいホラー」
ホラーなのに明るいっていうので面白そうだなとずっと思っていた。見たら全然ホラーじゃないけど。
前に『へレディタリー』は見ていたので、どんなグロ描写をするかの心構えはできていた。

率直にいうと、つまらなかったです。
特異な儀式など、面白いこと考えるなーとは思いましたが、通して映画で見せられると途端につまらなく感じた。
カルトっぽいというか、民俗的なもの、神経症的なものは好きだけど何が良くなかったのかなと考えてみる。

一番は、不快な描写とそれが軽薄化してしまうことかな。
割とはっきり死体を写したり、観客が見たくないと思ったものを見せてくる。つまり不快。嫌なところをつかれるのを不快というんだから。
もちろん意図的なものだと思うし、監督のやりたいことだと思う。はっきりした哲学があるから不快描写をするのはわかる。

しかし、これが軽薄に見えてしまう。
舞台のホルガ村の人々の独自の死生観に基づいて殺人が行われるなら良いけど、それはあまりにも計画殺人的、猟奇的すぎる。罠にはめて捕らえて皮を剥いで被って、また襲って。ここに違和感を感じた。皮被る意味ある?ここで一気に陳腐化。
そりゃ、計画殺人がホルガ村の哲学なら良いんだけど、どうしても観客を「不快にさせるための不快」にしか映らなくてしまって、不快の哲学的なものが軽薄化されてしまっているように見える。
ホルガ村の人々に仲間が殺される理由をわざわざ作っているのもその原因の一つだと思う。聖なる木に小便をかけたり、禁止されたのに聖なる本を写真でとったり。こいつ殺されますよー。普通に不条理に殺された方が面白いと思う。

おそらく監督は不快描写にエクスタシーを感じているが、それをやるだけでは映画にならないので、哲学的なものを入れ込もうと頑張っているんじゃないかな。そこのズレがずっと気になってしまった。どっちかにしてくれ。
軽薄な不快ってただの迷惑行為ですもんね。

他の人の感想で「動物的な人間を見せられる不快感」というなるほど良い言葉があったんだけど、終始その動物性を基盤にしてもらえれば良かった。さっき言った計画的、猟奇的なのは「人間的」で「驚かし」的すぎる。

自我が共有されるような没個性主義的な描写や設定は面白いと思った。
薬物による他のものと一体化するトリップや、白夜という昨日今日の”境目”のなくなる季節設定など。

前作の『へレディタリー』もそうだけど、もったいぶった絵作りが見てるとだんだんイライラしてくる。画面の後ろで変なことしてるホルガの人々など、2、3回やったらそれで良くないか?。
「ミッドサマー 考察」ってgoogleサジェストに上位に出てくるほどに考察要素がたくさんある。しかし、劇中にあまりにも「ここ考察要素ですよーこの絵良く見てくださいねー」という観客に向けての視線が常に画面に写っている。メタ視点がずーっと感じられて正直疲れる。これも「不快」を軽薄化してる原因かも。一辺倒な演出がずっと続くのも見ててダレてくる。

音楽は良い。

アリ・アスター作品てハリウッド版の洒落怖ですよね。


『パラサイト』 ★★★★☆

ポン・ジュノのやつ。
話題通り、面白い映画だった。ただ前評判は過剰すぎるかも。

この映画は設定で勝ってる。地形構造がそのまま作品の関係構造になっている図形的なわかりやすさ。ユーモアも冴え渡っていて飽きずに見ることができた。

各エピソードも面白いけどやはり2時間映画としてのまとまりも良いし、何より伝えたいことがはっきりしてる。誰でもわかることだけど富裕層と貧困層の文字通りの上下の格差。それでもいやらしく説教臭くなくブラックユーモアのエンタメに落とし混んでいる。

なんでこういうことができたのか。
おそらく社会問題要素を作品構造に落とし込んだことでそれがうまくいっている。構造さえキマってしまえばその中で遊び倒すことでエンタメに落としこむことができる。そうなると突飛な展開も考えやすい。(見てる側も良い意味で安心して見れる)
エピソードで問題を提起するのではなく設定で提起しているのだ。

エピソードで提起しようとすると、その論説にたどり着くために心情や背景を説明しなくては行けない。それが説教臭くなる原因だと思う。
しかし、『パラサイト』は構造で提起しているので説教臭さを取り除き、エンタメに昇華させることができたのだろう。
なので設定で勝ってるのだ。大変参考になる。

各キャラクターも立っていて良い。

ラストのカオスっぷりは正直どうかと思うけど、エンディングはこの作品設定では真っ当だと思う。


『グエムル』 ★★★☆☆

ポン・ジュノのやつ2。
こちらも面白かった。怪物どうこうよりも家族の話。

冒頭のアメリカ人の指示に従って毒薬を流す韓国人や、勇敢に怪物に立ち向かうアメリカ人など、社会描写的にちょっとワザとらしい感あるけど、怪獣映画と思って見たときのギャップの面白さはある。こっちもキャラクターが立ってる。
怪獣についてもあまりどうこう言わないのも高ポイント。『パラサイト』もそうだけど、監督は自分の作品の絞るべきポイントをはっきり理解してる人っぽい。

自分はSFはこういうものが好きです。人間を描くためにSFガジェットがある。非日常パニックを持ち込むことで、そんな状況でも延長される日々の問題を掘り起こすことができる。
ビジュアルがチープとか豪華とかそういう話じゃないんですよね。

監督は元漫画家志望だったらしく、『パラサイト』もだけど随所に漫画感溢れてますね。

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