純粋状態の定義の公理をテンソル積に拡張する
純粋状態の定義の公理とは
純粋状態と状態ベクトルの関係を表す公理で、
清水本での5つの要請(公理)の1つです。
1.純粋状態
量子系の純粋状態は、あるヒルベルト空間の規格化された
射線で表される。
ヒルベルト空間の元(状態ベクトル)そのものではない
ことに注意
規格化が必要なことより、ヒルベルト空間の元(状態ベクトル)
には、Nullベクトルが必須ですが、Nullベクトルは、
「状態」を表さないことがわかります。
(意味のある状態がないとも言える)
何かを掛けたものも、同じ状態(射線)を表すとすると
| 何か |=1ですから、「何か」=exp(z) です(zは複素数)
2.テンソル積の状態ベクトル
状態ベクトルは1つの量子系の状態を表し、
複数の状態ベクトルのテンソル積は、
それぞれの量子系からなる合成系の状態を表す。
3.単位ベクトルはテンソル積の状態を変えない?
状態ベクトルのテンソル積において、
何かを掛けたものも、同じ状態を表すとすると
| 何か |=1ですから、「何か」=exp(z) ですが、
これはスカラーで、ベクトルではありません。
なので、「単位行列」を使うことを考えます。
状態ベクトルのテンソル積の密度行列を
ρとすると、ρの対角要素を変えない「何か」は
「単位行列 I」となります。
N次の単位行列は「等確率で干渉項=0のN次密度行列」
のN倍ですから、古典的混合状態を、N次の Σ |c><c|
とすると、そのN倍と言えます。
混合状態は、一般にヒルベルト空間を大きくとると
等価な純粋状態にでき、これは状態ベクトルで表せます。
これを「混合状態の純粋化」といいます。
(堀田昌寛「量子情報と時空の物理」1.4参照)
その結果は、上記 Σ |c><c|=Σ_{n=1 to N} |c_n><c_n|
に対して、N本の単位ベクトルを|I_n> とすると、
Σ_{n=1 to N} |c_n>|I_n> = 1/N Σ_{n=1 to N} |I_n>|I_n>
= |I >=単位ベクトル
が、単位行列と等価な状態ベクトルです。
つまり、大きいが等価なヒルベルト空間をとれば、
単位ベクトルとの積は、テンソル積の状態を変えない
のです。
したがって、状態ベクトルのテンソル積において、
「何か」を掛けたものも、同じ状態を表すとすると
「何か」= exp(z)単位ベクトル
です。(zは複素数)
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