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実家がごみ屋敷だった話
私が社会人になり上京したくらいに、
父は母と離婚し、他の女性と再婚した。
相手には連れ子がいたので、
実家はその家族のものとなった。
数年ののち、その女性とも離婚した。
破天荒な父だ。仕方がない。
その後、父と1~2年連絡が取れない時期があった。
父が住んでるかもわからないし、
独り身にしては広すぎる。
管理費も固定資産税もかかるので、
売りに出そうと名義人の祖母と決めた。
不動産の査定が入る前に部屋を確認しなければと、
勇気を出して十数年ぶりに実家の扉を開けた。
言葉が出なかった。
私が暮らした実家は、どこにもなかった。
肉の取り合いで妹と喧嘩した食卓も、
母が弾いていたピアノも、
写真やアルバムも、
バカみたいに遊んだプレステも、
何もかも、思い出も、埋もれていた。
やっと父と連絡がつながった。
家を売りに出すというと、
力なく「わかった」と言った。
不動産業者に連絡し、
清掃を含めた売却の手続きを進めた。
しかし清掃の日、
憤慨した父が清掃員を追い出し、
結局売却の話は流れてしまった。
一番何がむかついたかって、
ビールがスーパードライだったこと。
働きもせず贅沢しやがって。
ちくしょお!
それ以来、実家に戻ってはいない。
今もどうなってるのかわからない。
私に実家はない。
でも、「いつでも帰っておいで」と言ってくれる人がいる。
大学のとき働いた居酒屋のとうちゃんとかあちゃん。
この話は、また今度。