『くらやみガールズトーク』がタテスクロールコミックになりました
『くらやみガールズトーク』を漫画家のウラモトユウコさんがタテスクロールコミックにしていただきました。現在配信されています。……ってけっこう前からなのですが、告知できておりませんですみません。
ということで、なんとなんと初のコミカライズです!
タテスクロール漫画は市場が拡大しているジャンルなのですが、まさか自分の作品をそこへ旅立たせてもらう日がこようとは……。
私の小説を読んでくださる方って『わたし定時で帰ります。』が好きですっていう方と、『対岸の家事』が好きですっていう方と、派がわかれるのですが、『くらやみガールズトーク』にもじつは「これが一番好き」って言ってくださる方がいます。
10年以上前に書いた短編たちということもあって、会議のときに担当編集者さんに「これはフェミニズム作品ですよね」と言われたりもして、たしかに今読んだらそうなのだけど、でもやっぱりこれは「怪談を書いてください」っていうオーダーに応えるために生まれた物語です。
私はこの通り面倒な性格なので、小学校では友達がほとんどおらず、図書室に行くことが多かったのですが、そこで出会った「お化け文庫」を繰り返し読んでいました。「見えない存在にされている」とか「穢らわしいものとされている」とか「禍々しい心を抱えている」とか「成仏してほしいと思われている」っていう幽霊たちの存在がひとごとに思えなかったのを覚えています。
なので「怪談」を読むたび「どうしてみんな幽霊に出てこられてしまった人間(被害者側)の視点なんだろう」と思っていました。自分だけは認知症にならないとか鬱病にならないとか人に迷惑をかける側にならないと思っている人が多いのと同じで、自分が幽霊(加害者側)になってしまうリスクをみんな考えてなさすぎじゃない?
幽霊になるプロセスがわからないのも怖い。ほらこれも「人間(被害者側)の視点」からばっかり描かれることの弊害ですよ。そもそも幽霊って生きているあいだは弱者だったり、敗者だったりと、不遇だった人が多い。だから死ぬ瞬間に『四谷怪談』のお岩さんのように「末代まで祟る」と願った人がなるのはいいのです。本人の強い希望なら。でもうっかりなってしまうこともあるらしいじゃないですか。六条御息所パターンがこれです。なりたくないのになってしまう。死後にAIの自分をつくられてしまうくらい怖くないですか。しかも成仏できるまで永遠に彷徨う……いやすぎる……。
そういう話をしたら朝宮運河さんに「怪談作家さんは数多くいますが、“幽霊になるのが怖い”という方は珍しい」と言われたのですが、でも怪談を読んでいると「成仏させてほしい」と希望してる幽霊ってけっこう多くないですか? 「ああ、やっぱりうっかりなってしまうことがあるんだな」ってすごく怖かったのを覚えています。
だけど、幽霊にならなかったとしても、生きたまま「自分が自分でなくなってしまう」恐怖ってありますよね。結婚して姓を変えられてしまったり、恋愛をしておかしくなってしまったり、出産して肉体がトランスフォーメーションしていったり……。
女の子たちがそういうものにのみこまれていくとき、そこまで追い込んできたものたちを打ち砕くのがフェミニズムなのかもしれないけれど、この作品ではあえてくらやみにのみこまれていくガールズたちも描いています。
だって、弱者がいつもいつも正しさを持ち続けていなくちゃいけないなんて不公平じゃないですか。
そういう原作者の思いを受け止めつつ、ウラモトユウコさんは新しい『くらやみガールズトーク』の世界をつくりだしてくれました。原作短編集に出てくるガールズたちがより可愛らしく、より親しみやすく、より元気よく、くらやみのなかにいます。時代が少し進んだのにあわせて、彼女たちはさらに強くなったみたい。ぜひお読みください。
そのほか、現在配信中のストアはこちらです。
そしてさらに告知なのですが、『くらやみガールズトーク』(漫画・ウラモトユウコ/原作・朱野帰子)は「タテ読みマンガアワード2024」の国内作品部門にノミネートされました。すごい! 読んでみて面白いなと思った方はぜひ投票よろしくお願いいたします。
ウラモトユウコさんに手によって生まれ変わったこの作品がどんな人のもとに届くのか、原作者として楽しみにしています。
12/19追記
さらにさらに告知です。ちょっと先なのですが「くらやみガールズトーク」(漫画:ウラモトユウコ/原作:朱野帰子)が紙のコミックスになります!
こちらもお楽しみに。