ほんとうにあいしてる？

「ほんとうにあいしてる？」
遠い昔のことで一体いつの話なのか全く記憶にないのだが、サザエさんかちびまる子ちゃんが放映される時間帯に、そんなことを呟くCMがあったのを覚えている方はいらっしゃるだろうか。

ほんとうにあいしてる？
一体彼女は何を疑問に思っていたというのだろう。
まだいたいけな少女のはずなのに、その言葉はその言葉だけの重さで、重くもなく軽すぎることもなく発音し、それは全国に放送された、はずだ。

ほんとうにあいしてる？
彼女はいったい誰に愛されたかったのだろうか？
父、母？それとも彼氏？飼い猫のタマ？犬のポチ？それともかつてはピンクのひよこだったニワトリのがっちゃんだろうか。

ほんとうにあいしてる？
愛さなくても愛してるふりだけを完璧にしてほしいのかもしれない。
クラスメイトの女の子たちはいつもキャアキャア楽しげに騒いでるけど、誰しもがそんなフリをするだけ。本当は誰も楽しくない。
つまらないつまらないつまらない。
だからアンタだけは私と本気でぶつかってくれない？
きっとそういうことなのかもしれない。

ほんとうにあいしてる？
最近柔軟剤変えたでしょ。
ズルいズルいズルい。
私だけしか信用しないって言ったくせに。
そんな大容量のヤツ買ってきて。
ひどいひどいひどい。本当にひどい人。
でもあの子はいいわ。どうせ夏だけの付き合いでしょ。
どれだけ入れても洗濯物がバサバサで、絡まって呆れてるあなたの姿みて、私笑いが止まらなかったわ。
あなた、デリケート衣類だけは私に任せるって言ったけど、もういいわ。
私はそういう女なの。誰かに消費されないと生きれない女。だからもう好きにして。
私だけへの愛なんて、信じた方がバカだった。

ほんとうにあいしてる？
どうして俺のことを買わない？
こたつがなくなったからなんて、嘘なんだろ。
夫がいる？子どもができた？
それが俺たちの愛と、何か関係あるのか。

ずっとお前の熱くなった身体を見てきた。
ねっとり絡ませあったあの日、忘れたわけじゃないだろ。
俺はお前を満足させられる、唯一の男。
甘いだけじゃない。なあ、そうなんだろ。
最初は硬いけど、だんだん柔らかくなるのが好きって、よく舐めながら言ってたよな、オマエ。
あんな舐め方をするのはオマエだけ。
俺も好きだったんだよ。
中に入って2人で溶け合ったじゃないか。
またあの時に戻ろうよ。

俺はいつもお前のちかくにいる。
スーパー、コンビニ、ドラッグストア。
いつでもお前の目に入る、クールなヤツ。
戻るのはいつでもお前次第だぜ。
俺はずっと待ってるから。
また俺を溶かしてくれよ。

ほんとうにあいしてる？
私はあの瞬間、自分が愛されていないと確信してた。でももうどうしようもなかった。
もうどうしようもなかったの。

あなたに愛されるのは、正直嬉しかった。
ずっとずっと好きだったから。
触られるのも嫌じゃなかった。
怖かったけどそれ以上に興味があった。
触れられたら自分がどう変わるのか、単純な興味。あなたがどう、変わるのか。
その未知の面白い反応の数々に、私はすぐに夢中になった。

あなたは全て知っていた。
私の身体をどう触れば良いのか、どうすれば感じてしまうのか。
手加減しているようで手加減しない、そのやり方は、愛ではなくだだの興味だったのだと、その日から随分と経ってから知った。
あなた以外にもね、同じように触る人がいたの。
男の人は、自分のことが好きな女の子を抱くのが好きなのね。
私、知らなかった。
きっと2人とも、私が彼らを好きでなかったら、全然楽しめなかったはずで、あの時の、あの人たちの快楽は、いつだって私次第だった。

ほんとうにあいしてる？
ずっと聞きたかったけど、そんな分かりきったことは聞きたくなかった。
ずっとうそつきって思ってた。
代わりにこう聞いたの。
どうして愛してるっていったの？
彼は言った。
なんか満たされた気がしたから、だって。
出してるのに満たされるんだ。
男の人って羨ましいなって、私そう思ったの。

ほんとうにあいしてる？
時々あの子に聞きたくなる。
でもそんな愚かなことはしない。
今日も愛してくれている。
それだけは分かっているから。

ほんとうにあいしてる？
愛なんて曖昧なものより、確かな温かいご飯と味噌汁と、お布団と風呂と、住居が欲しい。欲を言えば清潔な衣類も必要。
愛はいらないから、毎日準備してくれない？
したら俺、頑張れるから。

ほんとうにあいしてる？
ほんとうにあいしてる？
ほんとうにあいしてる？

ねぇ。
あいってだれ？
わたしに、おしえてくれる？

※CMの正体が分かりました。
それはカルビーさんでした。
しっかし、カルビーさんも罪なCMをお作りになります（笑）うさぎちゃんがかわいい。