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チャプター2-3:桜舞う帰還

そう言うと、美紗子は少しだけ照れたように微笑んだ。

「ありがとうございます、お兄様。それでは、さっそくお夜食を取りに行きましょう。」

美紗子が俺の手を引っ張りながら、食堂へと向かう。食堂の扉を開けると、温かい明かりが心地よく広がっていた。食堂のテーブルには、簡単なお夜食が用意されている。

「さあ、こちらに座ってくださいね。」

美紗子は席に着くと、さりげなく食事を取ろうとするが、やはり話がメインになってしまう。

「慶次郎お兄様、今回の任務はどんな任務なのですか?」

「まあ、いろいろとあるけど、今回は特に重要な任務だ。お前に心配かけたくないからあまり詳しくは話せないけど、無事に帰るつもりだよ」

美紗子は頷きながらも、心配そうな表情を浮かべる。

「慶次郎お兄様、どうか気をつけてくださいね。私も毎日お祈りしているので、きっと大丈夫ですよ」

その言葉を聞いて、俺は微笑みながら「ありがとう、美紗子。君の祈りがあれば、きっと大丈夫だよ」と答えた。

食堂の中で、二人は互いに近況を話しながら、楽しい時間を過ごす。

美紗子が、「お兄様が帰ってくるまで、私は頑張って待っていますね」と言うと、俺は「ありがとう、美紗子。その言葉が支えになるよ」と返した。

「お帰りなさい、御坊ちゃん。」食べ終わった食事の皿を片付けながら、執事長の石井さんが嬉しそうに話しかけてきた。

「石井さん、挨拶が遅くなって申し訳ない。ただいま帰りました。」

「構いません、ご無事でなによりです。今の任務は厳しいものだと御父様から伺っていたので、予想よりもお早いお帰りで良かったです。」

「そうですね、少し早く帰ることができました。石井さん、最近はどうでしたか?」

「おかげさまで元気にやっております。美紗子様が毎日お祈りをしているようで、あなたの帰りを心待ちにしていました。」

美紗子がちょっと照れたように微笑んだ。

「本当に慶次郎お兄様が無事に帰ってきてくれて、私も嬉しいです。毎日お祈りをしたかいがありました。」

「ありがとう、美紗子。君の祈りが支えになっているよ。」

「それは良かったです。」と、美紗子が少し安心したように言った。

「ところで、最近の沼津さんとはどうしていますか?帰ってきたときにはあまり話が出来なかったもので」

「ああ、沼津さんですか?彼女は変わらずお家のことをしっかりとサポートしてくれていますよ。最近は、特に美紗子様の学業や生活面で支援をしているようです。」

「そうなのですね。沼津さんにもお礼を言わないといけませんね。彼女の支えがなければ、家も美紗子も大変なことになっていたでしょうから。」

「その通りです。沼津さんも、再びお会いできるのを楽しみにしていると思いますよ。」

「了解しました。後で沼津さんにお礼を言いに行きますね。」

ここで石井さんが少し沈黙してから続けた。

「ところで、今日の夜食の準備は私が担当しましたが、いかがでしたか?」

「とても美味しかったよ。ありがとう、石井さん。」

「そう言っていただけると嬉しいです。最近は沼津さんがおやすみの時は私が美紗子様の学業と家事全般の支援をして、忙しい日々を送っているのですが、こうして御坊ちゃんのお帰りを迎えられるのが何よりの楽しみです。」

「そうだったのですね。俺が家に居ない間は美紗子の様子を見守ってくれているんですね。ありがとうございます。」

美紗子が席を立ち、立ち上がった俺の手を引きながら、食堂の外へと向かう。

「慶次郎お兄様、暖かいとはいえまだまだ肌寒いので、風邪を召されないように、暖かい格好で寝てくださいね。」

「ありがとう、美紗子。そうするよ。」

二人で食堂を後にし、家の中を歩きながら、まだ続く会話の中で、これからの予定や家族の様子について軽く話をした。

「そういえば、美紗子も最近何か新しいことに挑戦しているのかい?」

「はい、慶次郎お兄様。実は最近、学校で声楽を始めてみたんです。少しでも気分転換になればと思って」

「それは楽しみだね。帰ったときにはぜひ見せてほしいな。」

「もちろんです、慶次郎お兄様。」

そう言って、決して誰にも笑顔を見せない美紗子が俺にだけ見せるその笑顔を、しっかりと心に刻んだ。

そうして美紗子が自身の学校での様子を、俺に嬉しそうに話をしながら、歩いていくと自室に終着した。

「慶次郎お兄様、また帰ってきますよね?」

不安げな表情を俺に向けつつ、笑顔でおやすみの挨拶をしようか美紗子は迷っているようだ。俺は心配させまいと笑顔で「ああ」と頷きながら美紗子への返答に応える。

「では慶次郎お兄様、おやすみなさい」
「美紗子、おやすみなさい良い夢見るんだぞ」
「ええ、慶次郎お兄様もね」
「ありがとう」

ゆっくりとドアのぶを回し、ドアがギーッと音を立てながら、自室に入っていくところまで美紗子は微笑みながら俺を見守った。

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