櫻井 仁
廊下にバタバタと走る音が騒がしく聞こえて、俺はゆっくり瞼を開けた。耳を傾けてみれば、屋敷の皆が騒がしく掃除をしたり、おしゃべりする声が聞こえて、賑やかな雰囲気にふっと微笑みが溢れた。 ああ、いつ間にか眠っていたようだ。 俺はゆっくりと起き上がり、出撃の時間を確認しようと壁掛け時計を見上げた。 まだ時間まで充分ある。 良かった、まだ美紗子の姿を見ることができる。 1分、1秒たりとも逃したくない。 時間が無限にあると思っていただけに、実際は短く感じてしまう。 時間は待って
https://note.com/kaerimihaseji_94/n/n870bc4ca6804 更新しました、良かったらどうぞ。
自室で床に横になって眠る前に、美紗子との会話を思い出しながら、つい最近のように、美紗子と初めて会った時のことを思い出した。 まだ俺が中学に入りたてで、母になる方と妹を父から紹介された。その時の厳しい訓練や戦闘の合間に、ふと心の中で彼女の微笑みが浮かぶほど愛しくて、忘れる事など出来ない。 「お前の家族になる人だ」と、言われて挨拶しようと目を上に向けた時、初めて美紗子を見た瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃を感じたのを、今でも鮮明に覚えている。 彼女は父の後妻の子で、血の繋
更新をする予定ですが、思ったより量が多いので、調整して投稿します。楽しみにお待ち下さいね。
そう言うと、美紗子は少しだけ照れたように微笑んだ。 「ありがとうございます、お兄様。それでは、さっそくお夜食を取りに行きましょう。」 美紗子が俺の手を引っ張りながら、食堂へと向かう。食堂の扉を開けると、温かい明かりが心地よく広がっていた。食堂のテーブルには、簡単なお夜食が用意されている。 「さあ、こちらに座ってくださいね。」 美紗子は席に着くと、さりげなく食事を取ろうとするが、やはり話がメインになってしまう。 「慶次郎お兄様、今回の任務はどんな任務なのですか?」
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自室に到着すると、まずは軍服を脱ぐことにした。汗で湿った軍服は、予想以上に重く感じられた。肩から外すときのゴロリとした音が、部屋の静寂の中で一層大きく響いた。扇風機の涼しい風が、汗ばんだ肌に心地よく感じられる。 「さて、まずはシャワーを浴びてさっぱりしよう」 浴室に向かう途中、ふと壁に掛けられた写真立てに目が止まった。そこには笑顔の美紗子が写っている。普段からあまり笑顔を見せない彼女の貴重な一枚で、その笑顔がどこか安らぎを与えてくれる。 「美紗子も元気でやっているかな」
Xで更新した旨のアップしたけど、bloggerはまだ更新してないから、更新したら呟きでお知らせします。お楽しみに😊😌
おはようございます、チャプター2を公開しました。良かったらどうぞ。https://note.com/kaerimihaseji_94/n/n471c3a9b4311
「ああ、もう春か……」 花弁がついた軍帽を右手で取り下げて、さっと左手で軽く花弁をはたき落としながら、俺は静かに呟いた。 もうこの付近は桜が満開なせいか人通りが多く、馬車も忙しなく走り去ってはまた違う馬車が通っていく音が聴こえてくる。 そしてその後ろからも、ハイカラに着こなした女学生達が、元気良くお喋りしながら桜並木を眺めては、俺の横にどんどん通り過ぎてゆく。 そんな光景を、俺はふっと横目で微笑みを零したが、内ポケットから懐中時計を取り出し、ぱかっと開けて時間を見た瞬
チャプター1-3を更新しました。https://note.com/kaerimihaseji_94/n/na6804656158b
「さてと、行ってきますか…」 俺は心の中で美紗子に最後の思いを馳せながら、零式艦上戦闘機が空に舞い上がっていくのを見送った。俺が零式の前に立つと、山砂上官が近づいてきた。 「梅田、最後に何か言いたいことはあるか?」 「ありません。 全力で戦い、任務を全うして参ります!」 「そうか、ならば、行け。 天命に従い、無事を祈る。」 上官の言葉を聞いた俺は、深く一礼してからコクピットに乗り込んだ。すぐにエンジンがかかり、機体がゆっくりと動き出す。風を感じると共に、自分が戦
「敬礼!やすめ!」 号令が響く最中、ちらっと横目で零式艦上戦闘機を見つめる。お前と僕は一心同体、生きるのも死ぬのも後悔はないようにやるしかない。 「梅田ァ、貴様、話を聴いているのかァ‼︎」 山砂上官の怒号が聞こえた。 俺は「ハッ、聴こえているのであります‼︎」と大声で応え、右手で敬礼の形を取ってから素早く腕を下ろした。上官は呆れた表情で集まった仲間たちに向けて告げた。 「これより、零式艦上戦闘機に乗り込む者の名を挙げる。名を挙げた者は前へ出て、横一列に並び、我々と向き
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「顧みはせじ 我が人生悔ひはなし」 そうつぶやいた俺は、被っていた帽子を外し、もう帰ることができない懐かしき故郷、大日本帝国に思いを馳せながら艦上から海を眺めていた。 波は荒れておらず、静かにさざ波が打ち寄せては返しているだけで、周りには何もなく、ただ風が緩やかに吹いている。 視線を横に向けると、共に歩んできた三菱製の零式艦上戦闘機52型が並んでいる。その中に俺は乗り込んでいくのだ。 今は俺以外誰もおらず、零式もまた俺と同じように海を眺めているのだろう。最後のひととき
夕方から夜にかけて更新する予定ですが、お昼ごろにしれっと更新するかもしれません。お楽しみにお待ち下さい。