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「世界の街角」 6.エクアドル 6.1ガラパゴス諸島・サンタクルス島プエルト・アヨラ(Town No12)
1.プエルト・アヨラ
◆諸島観光の基地として栄える港町
ガラパゴス諸島のサンタクルス島の南端にプエルト・アヨラという街がある。諸島最大の街として知られるが、人口は約12,000人、街全体を歩いて回れるほど小さな街だ。
約300メートルの円弧を描くアカデミー湾の根元に開かれた港を中心に、プエルト・アヨラの街が作られた。
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港の沖合には諸島内の各島に向かう夥しい数のクルーズ船が浮かぶこの街は、ガラパゴス諸島周遊の基点として観光客向けのインフラが整い、ホテル、レストラン、ショップが多く立ち並んでいる。
港の周辺は、朝には未知の島に向かう人々の期待に満ちた表情、夕方には珍しい動植物に出会った満足感溢れる表情が溢れ、夜には道にもテーブルと椅子が並び夕食を楽しむ人たちで賑わう 。
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◆人と動物が共生する街
街を歩くと、イグアナやカニ、アルバトロスと言われる大きな鳥たちと遭遇する。
ホテルに隣接する浜辺にはウミイグアナが巣作りや繁殖に精を出したり、魚市場では野生のアシカやペリカンがおこぼれを待っていたり、近くの港ではすぐ足下をマンタやサメが悠々と泳いでいる姿も見えるこの街は、大自然の上にお邪魔するように作られた人間の街なのだ。
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2.チャールズ・ダーウィン研究所
1964年、ガラパゴス諸島の調査・研究を行う施設がにプエルト・アヨラの街に設立された。
この諸島で進化論を着想したチャールズ・ダーウィンに因んで「チャールズ・ダーウィン研究所」と名付けられた。
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◆研究所で見聞したこと
その1.カメの雄と雌は孵化温度で決まる
研究所にはゾウガメやリクイグアナの孵化場と飼育場が作られ、それらが著しく少なくなっている島から親を連れてきて産卵させ、数年間飼育してまた島へ帰しているそうだ。
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ゾウガメ孵化場では、400Lの冷蔵庫位の大きさの箱が二段に仕切られ、上の段と下の段、別々の温風器で温められていた。
案内してくれたネイチャーガイド(ガラパゴス諸島専任の案内人)の説明によれば「ゾウガメは卵を孵化する温度によって産まれる子亀の性別が決まるのです。低温だとオスが、高温だとメスが産まれます」という。
その時は、「え~っ」と半信半疑だったが、後で調べてみると、これは「温度依存的性決定」というそうで、トカゲやワニも卵の孵化温度によって性が決定されるそうだ。
その2.絶滅したピンタゾウガメの話
絶滅したと考えられていたピンタゾウガメがダーウィン研究所の小さな池で飼育されていた。
1971年12月1日、ピンタ島で一頭のオスが発見され、この研究所で保護された。この種の子孫を残そうとイサベラ島から二頭の近縁種のメスを連れきて交配させようとしたが、20年近く成果はなかったそうだ。ロンサム・ジョージ(独りぼっちのジョージ)と呼ばれる所以だ。
このロンサム・ジョージのいる池へ案内してくれたネイチャーガイドは 「最近は奥のほうに引きこもっていることが多いので姿を見ることができるかどうか……?」と言っていたが、幸いにもバッチリとカメラに収めることができた。
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この写真を撮った日から4か月半後の2012年6月24日、水飲み場に向けて体を伸ばした状態で死んでいるジョージが発見された。
かくしてピンタゾウガメは絶滅したのだった。