「世界の街角」 2. フォークランド諸島 2.1 ペンギンの街(Town No 3)
■フォークランド悲話
アルゼンチンから僅か480Km。しかし、ここはイギリスなのだ。
1982年4月2日、アルゼンチンの軍隊が英領フォークランド(アルゼンチン名マルビナス)諸島の奪回をはかって首都・ポートスタンレーを占領した。 フォークランド戦争の開戦である。
人口はおよそ3千人、面積は200余りの島々を全て足しても12,000㎢にすぎないが、海底に埋まる石油資源や、還流がもたらす豊富な水産資源がこの戦争の根底にあるという。
英本国からも艦隊が出撃し、激戦をきわめたこの戦争は、国連やローマ法王庁を巻き込んだ末にアルゼンチン軍降伏により停戦した。
以後英国とアルゼンチンの国交は回復しているものの、両国共が領有権を主張している状態で、アルゼンチン製の世界地図ではフォークランド諸島もサウスジョージア島もアルゼンチン領となっている。
日本人にとっては、日本の裏側で起きた局地紛争にすぎないこの戦争は、日本中に衝撃を走らせた別の事件の原因となった。
五大陸最高峰を世界ではじめて征した冒険家・植村直己は開戦当時、南極のアルゼンチン基地に滞在して極地冒険の準備を進めていたが、戦争勃発で帰国を余儀なくされた。
アルゼンチンの協力を断念した植村直己は、アメリカの協力のもとに厳冬期のマッキンリー登頂をめざした。
1984年2月12日世界初の厳冬期単独登頂を果たすも、それを知らす無線連絡のあと消息を絶った。フォークランドはそんな曰くつきの地だ。
■ペンギンコロニー
フォークランド諸島は、世界有数のペンギン生息地として知られる島だ。
首都スタンリーの中心部以外は手つかずの自然そのもので、整備された主要な砂利道から外れると、でこぼこの荒地の中、道なき道を進まなければならなくなる。
その道なき道には、フォークランド紛争の時に埋設された地雷25,000~30,000個が今も地中に残されているという。
ペンギンコロニーへの道も例外ではない。島内の唯一の交通手段である四輪駆動車は地雷を避けながら道なき道を疾駆する。スリル満点の30分だった。
この島には1千羽余りのペンギンが生息しているそうだが、コロニーは数箇所に散在しているため、1箇所にいるのは100~200羽くらいだった。
西フォークランド島のペンギンコロニーは、多種類のペンギンが生殖しているが、次の種類が多い。
●キングペンギン:
体長約1メートルに達し、エンペラーペンギンに次いで2番目に大きな
ペンギン。鮮やかな黄色とオレンジの模様が特徴。
●ジェンツーペンギン:
両目の上に白い模様があり、活発に動き回る姿が見られる。
●マゼランペンギン:
小柄で、海岸近くに群れを作る。
写真を撮る前にペンギンたちの行動を観察した。
よちよち歩いたり、仲間と追いかけっこしたり、つつきあったり、空へ叫んだり、ぼぉっとしたり、腹ばいで寝たり、卵を温めたり、子供を守ったり、いろんなペンギンがいるので見てるだけで楽しくなった。