「世界の街角」 3.チリ 3.1 プンタアレナス(Town No4 )
◆フィヨルドから砂漠まで伸びるチリ
南米大陸の太平洋側に面したチリ。
南北の長さ4329Km、東西は平均175Kmの細長いこの国は、日本の2倍の国土面積に人口はわずか1970万人(2024年5月)に過ぎない。
太平洋沿いに南北に伸びるため、海岸線の町に立って西側をみれば海、東側を見れば山という一種不思議な風景が、南回帰線から南極付近まで4,000Kmに亘って続く。それだけに自然環境の変化も面白い。
南部のバタゴニアは複雑に入り組んだフィヨルドを形成し、氷河を頂いた鋭い峰々がつづく。
内陸側はアンデス山脈がボリビア、アルゼンチンとの国境を分けて横たわる。
首都サンティエゴのある中央部には田園地帯が広がり、その南には森と湖の湖沼地帯。さらに北部にはいれば砂漠地帯が広がる。
チリ最南端の都市・プンタアレナスを訪れた時、街にでるには防寒着が必要だったが(写真左)。その5日後に訪れたバルパライソ州(チリ中央部)の都市・ビーニャ・デルマルでは、海水浴もできる暖かさだった(写真右)。
わずか6日の間に自然の変化を全身で受け止めることができた。
3.1 プンタアレナス(Town No4 )
1520年、大西洋と太平洋をつなぐ海峡を探していたマゼラン率いる船隊が新大陸を南下していた。
そしてマゼランは「世界史を変える海峡」を発見した。
そのマゼラン海峡に面した、南米大陸最南端の都市・プンタアレナスは海運上非常に重要な位置にあったため、厳しい気候にも関わらず発展したのだったが、パナマ運河の開通により、この海峡をわたる船は激減し、南パタゴニアの静かな町に戻った。
「岬の先端」を意味するプンタアレナスは、人口11万人の小さな町だが、羊毛産業と、石油の採掘基地として栄えている。
メインストリートには石油の炎を表現したモニュメントや羊飼いの像などがあり、公園のように美しい街並みだった。
■マリネス広場
中心にマゼラン像が立つマリネス広場一帯はこの街唯一の観光スポット。
大砲に足をかけたマゼランの足元には先住民であるアラカルフ族が腰をかけている。その足に触れると無事に航海を終えることができるという言い伝えがあり、転じて「幸福になる」とか「再びこの地へ戻ってくる(訪れる)ことができる」といわれており、人々に撫でられた足はピカピカに光沢を放っていた。
■カラフルな街
街の住宅はカラフルだった。特に赤や青、黄色などの明るい色が多く使われ、寒冷な気候の中でも街を明るく彩っていた。
19世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパからの移民が多く住み着き、彼らは故郷の建築スタイルや色彩感覚を持ち込み、カラフルな家々を建てたという。風が強いプンタ・アレーナスでは、カラフルな家々は、灰色の空や雪景色の中でも街を明るくし、住民の気分を高める効果もあるようだ。
■マガジャネス博物館
羊毛の貿易で莫大な財をなしたオーストラリア人実業家ブラウン・メネンデスは1806年、イタリアから運ばれた大理石を使用して大邸宅を建てた。現在は博物館として公開されている。
館内は、メネンデスが所有した家具や食器、イギリスやフランスなどヨーロッパを中心に収集した調度品の数々が展示され、古き良き時代を思わせるサロンや、ビリヤード台とマージャン卓が設置された遊戯室など当時の華やかさが伺えた。
庭にはヨーロッパから移植された杉の大木や彫刻のほどこされた立ち木など、庭全体が芸術作品だ。