「世界の街角」5.ペルー 5.3クスコ(Town No9)
インカの遺産を残す街・クスコ
ケチュア語で「へそ」を意味するクスコは、かつては、インカ帝国の首都であったが、スペインの征服者フランシスコ・ピサロは、リマが太平洋に面しており、海上交通や貿易に便利な場所だったことと、リマの方がスペインの植民地支配にとって戦略的に有利だったことから、1533年、首都をクスコからリマに移した。
そして、クスコにある数多くのインカ帝国の建造物、寺院、宮殿を破壊し、インカによって建設された巨大な石の壁の上に数多くの教会、女子修道院、大聖堂、大学、司教区を建設した。
かくして、栄華を極めたインカ帝国の中心として君臨した古都は、その豊かさゆえに征服者によって略奪され、土着の文化と植民地文化、双方が息づく魅力的な街となった。
リマとクスコを旅して、リマがスペイン植民地時代の影響を受けた現代的な都市であるのに対して、クスコはインカの遺産とアンデス文化が色濃く残る歴史的な都市であること実感した。
■アルマス広場
クスコを占領したスペインは、町の中心にアルマス広場とそれに面して教会(カテドラル)を作り、そこから町づくりを始めた。
もともとここにはインカ帝国時代から2つの中心広場があり、それをつなげてアルマス広場が造られた。周囲にはカテドラル、レストラン、お土産屋が多く、観光客に人気のスポットとなっている。
■サント・ドミンゴ教会
「サント・ドミンゴ教会」は、インカ時代に建造された「太陽の神殿」の土台の上に、スペイン人が建てた教会で、インカの高度な石組み技術が見られる。
太陽の神殿は、クスコの初代国王「マンコ・カパック」によって1200年に建設が始まり、その後、インカの9代目皇帝「パチャクテク」が、黄金をふんだんに使って改築し、「黄金の神殿」と呼ばれるようになった。
ここにもインカとスペインの融合した文化が残されている。
■サクサイワマン遺跡
クスコ市街を見下ろす高台にある巨大な石組みの遺跡・サクサイワマンはケチュア語で“満腹のハヤブサ”を意味する。
インカ帝国の第9代皇帝パチャクテクの命令によって1438年以降に建設が始まり、その約50年後、第11代皇帝ワイナ・カパックの統治中に完成した。
1993年にユネスコ世界遺産に登録されたが、未だに謎が多く建造の目的も明らかになっていない。
■ 12角の石:
インカ帝国の中心地であったクスコの建物の礎石は、そのほとんどがインカ帝国時代に組まれた物がそのまま使用されている。
アトゥン・ルミヨク通りにある「12角の石」は、幅が1メートルもある巨石で、それが緻密に計算されたように12角に加工され、隣り合う石とぴったりと合わさっている。 インカ文明の石造技術の高さがうかがい知れる場所として多くの観光客が訪れる。