君といた世界
あのね
抱き上げた
君の後ろ頭を見ること
年老いてよく眠るようになった
君の寝顔を見ること
ゆっくり歩く君と
いつもの道を行くこと
それが幸せだったんだ
けれど
春の日に
君は
長い長い散歩に
出かけた
もう会えないんだね
あの日から
心を
真綿にくるんで
しばらく
ぼんやり
しているんだ
君から受け取った愛
愛おしい
耳に馴染んだ
君がたてる色々な音
忘れない鼻先から尻尾までの手触り
ずっと
家のすみずみに
必ず
君の気配と
君がいる風景があった
写真を見ると
赤ちゃんの君がいて
はつらつとした若犬の君がいる
でも今は
この数か月の君の姿しか
思い出せないんだ
ありがとうとごめんねを
ずっと反芻しているんだ