書物巡礼 2021.5.26
『コジコジ』
「正月君、飛べない時はゆっくり休めば良いじゃん。
仕方ないよ、飛べないんだから。」
「でももう、あなたのことで泣いてばっかりの自分より、もっと自分自身のことで喜べる人生を歩みたいと思ったの。
……..今までありがとう。」
多くの方々が惹かれる要素であるように、私も、”ギャップ”というものが大好物だ。”ギャップ萌え”という感情には、”多面性があるものに魅力を感じる”、という側面の中に、”化けの皮を剝がした”、という快感もどこかに潜んでいるのかもしれない。
”ギャップ”にも色々なパターンがあると思うが、私は”表面のほほん穏やか深層エモクレバー”というパターンに惹かれる。(自らで勝手にジャンル分け。)
コジコジが好きなのもそこが大いなる要因の1つで、「メルヘンの国」という漫画設定、そして各キャラクターの見た目のファンシーさによりかなり中和されているが、内容は大人向けの精神世界の高い物語になっている。作者であるさくらももこさんの精神世界が濃いめにブレンドされていて、さくらさんのエッセイファンである自分にはコジコジの言動・思考回路はとても腑に落ちる。さくらさんは常にニュートラルなのだ、他人にも自分にも迎合しない。全部が一直線上に並んでいて優劣がない。十代の頃からさくらさんのその考え方が大好きで憧れだった。
コジコジはその思考回路の究極体で、クラスメイトの次郎君やコロ助君からは「こいつの存在自体が無駄」とまで言わしめるほどのマイペースさ。その分誰より深く本質を見抜く名人で、クラス1クールなおかめちゃん&ドーデスペアからは「コジコジには無駄なことが1つもないわ」という称号をもらうのだ。
私にとって、コジコジは”生き方教科書”の1つ。すぐに肩肘張ってしまう自分にぴったりのお手本なのだ。
そして、コジコジは隠れた”恋愛見本帳”でもある。女性サブキャラ達の恋愛への向き合い方は皆潔くカッコいい。書かれたのは20年以上前だけど、今の時代に合っている、というよりすごく今っぽい。これもさくらさんの恋愛感そのものであるように思う。私は「ひなこさん」が大好き。美人で気配りができる上に自分の意見があってそれを相手にまっすぐ丁寧に伝える。思いやりと自分らしさのバランスが絶妙。イイ女なのだ。3巻のエピソード「正月君お見合いをする」は恋する女の子に是非読んでいただきたい。2巻「てるてる坊主のテル子」も名作だよ。
可愛さの中にある狂気、ファンシーでナンセンス、哲学もチラホラ。肩の力を抜きたい時には是非に。
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