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海外にもいる?1人外食ができない女性

 学校や職場で友達ができず、1人で昼食を摂るところを周りに見られることがストレスとなり、ランチを摂らなかったり、「便所飯」をするまでになる心理状態になる人がいるようです。これって日本だけなのでしょうか。海外でもランチを1人で食べられない人はいるのでしょうか。それとも海外の人は他人の眼は気にしないのでしょうか。 


日本女性に多い1人外食ができない人


 便所飯まではしなくても、日本人の多くは、学校や職場、レストラン等で1人で食事をすることに抵抗感があり、特に女性にその傾向が強いと言われています。「友達や彼氏がいない寂しい女」とか「1人で食事するなんて魅力のない女に違いない」と周囲の客に思われないかと、「他人の眼」がとても気になるのです。事実、1人で牛丼屋に入れない日本女性はたくさんいます。

 私は20代にアメリカ留学や欧州バックバッキングをして、1人でいることの自由と気楽さを味わいました。独身時代は1人で外食や映画は無論、ハイキングにも1人で行っていました。日本で仕事をしていた時は、お弁当を部下といっしょに食べるのがとても苦痛でした。カナダの職場ではもう何年も1人で昼食を摂っています。ランチの時間まで人に合わせるのが面倒だというのもありますが、カナダの職場は転職する人が多く、友達を作ってもすぐにいなくなることに疲れたというのも大きな理由です。 

海外では主に十代が悩む


 高校生の頃までは私も、学食に1人で入ることが恥ずかしくてできませんでした。遠足や修学旅行の時期になると、1人になることを恐れて周りの同級生はさっさと一緒に行動する友達を決めていましたが、私は友達作りに遅れて、1人で遠足のお弁当を食べたり、修学旅行を1人で行動したことがありました。そんな時はとても恥ずかしかったことを覚えています。

 英語で検索すると、海外でもランチタイムに友達がいないことを気にする投稿があります。便所飯をする人もいるようですが、それらはほぼ十代の悩みで、大学生や社会人にもなると勉強や仕事で忙しく、ランチまで人に合わせていられなくなるのが実情です。 

海外女性も人の眼を気にする


 ただ、ディナーとなると話は変わります。私が欧州バックパッキングをした30年前は、レストランでのディナーは複数が原則で、1人旅行者は入り難かった思い出があります。しかし、それも昔の話で、カナダのレストラン予約サイトOpen Tableの調べによると、今では1人でディナーをする人は、2015年~2018年の3年間で85%増えたそうです。

 それでも、1人でレストランやバーに行くことに抵抗感のある女性は海外でもまだたくさんいます。女性が1人でいると彼氏を探していると思われ、実際バー等では電話番号を渡されたりするので面倒だという側面もありますが、やはり日本女性と同じで、人からどう思われるかが彼女たちも気になるのです。 

人は1人外食をどう見ている


 実は海外でも、映画やレストランは1人でいくところではなく、友達や彼氏、彼女と行くところというステレオタイプな考え方は根強くあります。この考え方は男女ともにありますし、1人で食事をする女性のことを批判するような人も中にはいます。

 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校で社会心理学を教えるベラ・デパウロ教授は、「シングルライフ」について長く研究しています。氏はあるリサーチをしました。女性または男性が1人、またはカップルやグループで食事をしている写真を参加者に見せ、写真に写る人たちについて意見を聞きました。結果は、写真の人物が1人でもカップルでもグループでも、男性でも女性でも同じで、人は誰に対しても「寂しそう」とか「疲れていそう」等、ジャッジメンタル(批判的)になるということです。

 そして大事なことは、1人で食事をする女性に対して批判的になる人は、「誰に対しても批判的」なのです。また、参加者は意見を訊かれたのでじっくり写真を見て考えを述べただけで、中にはもちろん、「リラックスしている」や「食事を楽しんでいる」等の好意的な意見もたくさんありました。

 訊かれたからジャッジメンタルになるけれど、「人は自分が気にするほど他人のこと等見ていない」ことはすでに学者が研究を済ませています。周りの人はきっと自分を見ているはずと自意識過剰になり、他人の眼を気にしすぎるのは自分の問題であり、周囲の客の問題ではありません。

1人で行動することは自由を意味する


 レベッカ・ラトナーとレベッカ・ハミルトンのリサーチで、1人であまり期待せずにアートギャラリーに行った生徒も、友達と連れ立って行った生徒も、両方同じようにアートを楽しむことができたという研究結果があります。「1人は恥ずかしい」や「他人はどう思うだろう」となかなか1人で行動できない人も、1度やってみたら十分楽しめるということを証明しています。

 高校時時代は自意識過剰で1人で学食さえ行けなかった私も、今では世界中に1人で行くことができ、誰にも邪魔されず気ままに旅行や食事を楽しむことができます。夫や家族との旅行ももちろん楽しいのですが、子どもたちが成長した今、またあの自由な旅を楽しみたいと現在計画しているところです。
 
参考:
Dr. Bella DePaulo, ‘What Do People Really Think of You When You Dine Alone?’ Oct 19, 2020 荒川裕美子・吉田浩子「大学生の対人的疎外感と昼食行動」2011年



この記事はカナダ日本語情報誌『TORJA』連載コラム『カエデの多言語はぐくみ通信』2021年12月号に寄稿 https://torja.ca/kaede-trilingual-22/

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