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雨が上がれば七色の道。
関東も梅雨入りしましたが、
雨上がりの空はとっても綺麗で大好きです。
雨の後だからこそ見える綺麗な空を見れる回数が多いので、梅雨も良いものだなぁと感じます。
なんだかそんな小説を読みました。
「線は、僕を描く/砥上裕將」
「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。
水墨画て、なんて美しいんだろう。
どうしてこんなに透明感があって、胸を打たれるんだろう。
主人公が水墨画を通して、様々な人と出会い、再生していく物語。
まとめてしまえば、王道小説なのです。
文庫本解説のライター瀧井朝世さん(この方の文章も大好き)も書いてました。
「水墨というのはね、森羅万象を描く絵画だ」
「花に教えを請い、そして、そこに美の祖型を見なさい」
主人公の先生の言葉が、後から後から意味を持って何度も心に訴えかけてくるのです。
水墨画では、花卉画だったり風景画だったり目の前にある命を描きます。
失敗の許されない、描き直しのできない墨で、基本はただ一色で。
たったひとつの線も、勇気を出して描く。
真剣な世界のなかで、主人公は命を感じて命を描いていく。何度も何度も。
そして自分でちゃんと意味を見いだしていく。
辛かった出来事としっかり時間をかけて向き合い、1人ではなくなっていく。
とても素晴らしくて、ページをめくる手がこんなに止まらないか…と読み終えて気づくような小説に出会ったのは久しぶりでした。
早く読みたいのに、できることならこの世界のなかにずっと浸っていたいと感じる小説でした。
墨で書くので、黒一色のはずなのに、
その濃淡が読めば読むほど、見れば見るほど何色にも見えてくるようで。
とても不思議です。
YouTubeに、「線は、僕を描く」の水墨画の動画があるのでぜひ。
読み始める前はどうして「僕は、線を描く」ではないのだろう?と思いましたが、後から意味が分かって心地よい気持ちになりました。
実はこの作品、出版されてわりとすぐに「王様のブランチ」のブックコーナーで紹介されてたので、ずっと気になっていたのです。
でもずっと、今じゃないなぁと思って読むのを先送りにしていました。
そして今週、ぼんやり本屋さんにいると
「絶対に今読むタイミングだ!」と思い手に取りました。
大正解でした(笑)。
なんだかもやもやしていた気持ちにちょっとヒントをくれるようで、内容なんてあらすじしかしらないのに本に呼ばれているような感覚。
ずっと本を好きでいると、そんなことがたまに起きるのが不思議です。
心が動く、そのタイミングで読めてなんとも幸せな気持ちになりました。
記事のタイトルは学生時代から好きな歌の歌詞から取りました。
雨が上がれば七色の道 空を駆け抜けてゆく
心がほっと素直になれる 還るべき場所がある
夢の数だけ愛が生まれて この地球は回ってる
(夢の数だけ愛が生まれる)
読んでいただき、ありがとうございました。