
建築プチ知識_05【今更聞けないモダニズム】
みなさん、こんにちわ。
Kaede Architectのなかむラテです。
先日会社の仕事でとある物件のイメージ写真を集め、お施主さんに見せたのですが、そのお施主さんの担当者の方からあることを言われました。
「新しい。モダンな感じで良いね」
その言葉を聞いて私はこう思いました。
(あぁ、この人、モダンの意味わかってるのかな?)と。
そこで今回は「モダン」、「モダンデザイン」とその語源でもある「モダニズム」について、わかりやすく書ければと思います。
【モダニズムってなに?】
正直いうと、「モダニズム」という言葉自体には複数の意味が込められているため、単純に「これだ!」と言うのが難しいのも事実です。
しかし、建築学生たるもの「モダニズム」を正しく理解できていないのは少し恥ずかしいですよね。恥をかかないためにも「モダニズムってなに?」と聞かれた時に、簡単でも良いので、すぐ答えられるようにしておく必要があります。
【近代主義】
モダニズムについて検索すると、こう出てくると思います。
《近代主義》
簡単に言えば、「モダニズム」とは近代、つまりは20世紀初頭に各分野(建築・絵画・文学など)で起きた芸術運動のことです。
モダニズムを語るためには、まず「近代主義」について知ならければ始まらないのです。
まず「近代」と言うのは、歴史的建築様式であるバロック以降(18世紀以降)に新しい時代へと進む上で、「過去の様式に囚われない」と言うコンセプトが流行りとなっていました。
そして「産業革命」によって、新しい材料である「鉄、ガラス、コンクリート」の大量生産が可能になったのです。
つまりは「過去と決別し、新しい材料で新しい建築形式をシンプルに考えていこう」と言うのが、近代化を推進して行った大前提になります。
【様々な芸術運動】
「過去の様式に囚われないこと」と「産業革命によって大量生産が可能になった新材料」によって、近代化は進められて行ったわけですが、「モダニズム」とはそんな時代に起きた「芸術運動の動向」をまとめて指す場合もあります。
簡単に近代化へと進んだ芸術運動や団体について簡単に述べていこうと思います。これは一級建築士試験でも出題される内容なので、押さえておくと良いと思います。
【アーツ・アンド・クラフツ運動】
1888年から始まった「芸術を人々の生活へと結びつける工芸品の生産を行う」と言う芸術運動です。産業革命によって新材料を大量生産できるようになったものの、「質の低下」を心配し、「手仕事」を重視して美術造形を商品化していこうとしたデザイン活動です。
【ドイツ工作連盟】(1907年〜)
建築やプロダクトデザイナーの団体を指します。工場生産されたものをデザインへと合理的に取り入れて規格化し、産業デザインの質の向上を図った団体であり、近代建築運動の始まりと言われています。
【バウハウス】(1919年〜)
材料、基礎造形から徐々に総合芸術へと向かうような教育を目指した美術学校です。箱状の組み合わせとガラスによって作られた校舎は有名で、「インターナショナル・スタイル」の代表建築と言われています。
【インターナショナル・スタイル】(1932年〜)
歴史的様式のような装飾を避けた新しい建築の規則性を確立し、近代建築のスタイルを規定しようとした試みです。
立方体や直方体をきみ合わせたようなシンプルな「幾何学的形態」の建築を指すこともあります。
こういった芸術運動や団体によって建築における近代化は進められ、更には、「イタリア未来派」や「ドイツ表現主義」、「ロシア構成主義」などのアヴァンギャルドの成果も相まって、「近代建築」というジャンルは「過去に囚われない」というコンセプトだけでなく、【機能性】【合理性】【非装飾性】と言った特徴を持つようになったのです。
ル・コルビジエの「ドミノシステム」や「近代建築五原則」、ミース・ファン・デル・ローエの「ガラスのスカイスクレーパー」が例となります。
【モダニズム建築】
「モダニズム」とは、歴史主義や伝統的な枠組みに囚われずに、産業革命によって得た新しい材料を用いて、近代の新しい形式を模索すること自体を指す。
そして、前項の時代の動向を経て作られて言った建築を「モダニズム建築」と呼ぶわけです。
「モダニズム建築」について、まとめて書くと・・・
『歴史的様式から離脱し、鉄、ガラス、コンクリートなどの新しい材料を用いて、機能的、合理的な理念に基づく建築のことです。』
19世紀以前の歴史主義(様式主義)を否定して、産業革命以降の工業化社会の中で、19世紀末から「新しい建築」を求める様々な芸術運動などの試行錯誤が各国で行われ、「機能主義」、「合理主義」の建築として成立していったのです。
これが「モダニズム建築」と言われるものです。
ガラスやコンクリート使い、シンプルの構成されたものを「モダンデザイン」と呼ぶこともありますが、背景からしっかりと知識を得ておくと良いと思います。
「モダン」と「モダニズム」の違い
最後に余談として、建築ではなくどちらかというとインテリア等で使われがちな「モダン」と言う言葉に置いて書いてみようと思います。
「モダンデザイン」には、「現代的で新しい」と言う意味を含んでいます。
さっきまで「近代化」とばかり言っていたのですが、「モダン」と「モダニズム」という言葉を同様に考えると間違う場合があります。「伝統からの脱却」という意味では同様なのですが、「モダンデザイン」という言葉には、新しい感覚や現代的な流行として使われるのです。
これが、「モダニズム」と「モダン」が理解しにくい理由であるとも言えます。
少し言葉の言い回しが難しい部分もあったかと思いますが、いかがだったでしょうか。
*****************
今日紹介する「建築本」
いいなと思ったら応援しよう!
