ジャム
なんてことのないケンカだから。
いつものケンカだから。
だから時間が経てば、いつも通りの2人になる。
そう思ってた。
君が朝食を残して出て行ってから、時間がどんどん過ぎていく。
あっという間に、君の残した甘いジャムがたっぷりのったトーストは水分を忘れたように干からびる。
もう何度、スマホを見ればいいんだろう。
いつものケンカはいつも通りだろ?
なぁ?
1人で見るこの部屋は、あまりにも広くて君の残像ばかりが映っている。
戻らない君を僕は、待ち続けていいのだろうか。
毎日、君が食べる食パンが、期限を知らせる。
ああ、もう食べてしまわないと傷んでしまう。
僕等も食パンのように傷んでしまう。
そうだ、君をおびき寄せるために用意をしよう。
君の好きな淡い紫のテーブルクロスに、真っ白なお皿。
そして、君が好きだったパンに、たっぷりと君の好きな甘いジャムを添えて。
もう一度、ゆっくりと朝食を食べよう。
2人で。
終わり