何度も何度も(HANAちゃんストーリー6話)
「離して!!もう離してよ!!」
玄関先で揉めている咲と母親の洋子。
洋子は咲の腕を掴んだまま必死に引き留めようとしている。
「もう、時間ないんだから、いい加減離して!」
咲はおもいっきり洋子を突き飛ばして外に出て行ってしまった。
「痛い・・・」
床にうなだれながら壁にぶつけた肩をさすっている。
***
次の日、咲の部屋を覗くと咲はベットで眠っていた。
顔にはたくさんの包帯が巻かれていた。
「はぁ」とため息をついて洋子はドアを閉めた。
この光景はもう5度目。
何度も何度も繰り返してしまう。お金も精神的にもギリギリだった。
***
小さい頃は愛嬌のある可愛い顔をしていた。特別美人というわけでもないが、それなりに可愛い方だと思っていた。なのに、いつからか、自分の顔が嫌いになり、嫌いというか、醜い。好きになれない。コンプレックスばかりが目に付いて外を歩くのすらままならなくなった。そこで思い切って整形をすることにした。もう5年も前の事。初めての整形はとても満足した。なのに、その満足はいつまでも続かない。もう1回、あとここだけ、そう心に決めては打ち砕かれる。何度メスを入れても心は埋まらない。
咲はベットの中で泣いていた。
毎回こうだ。いつも包帯は涙でぬれる。
そんな日は必ず、私のベットの上で眠る愛犬がいる。14歳の老犬だ。
愛犬のはなちゃんは私が何度顔を変えようと、どんな顔になろうと、毎回同じようにベットの上で眠る。関係ないと言っているかのように。
何も変わらない。
私とお母さんもこんな風になれたらいいのに。
何度手術をしても、変わらない。
お願い・・・お母さん・・・私のこと・・・。
いつかきっと、素直に話せる日が来ることを夢見て、今日もメスを入れる。
おわり