あの頃の季節。
野球部の部室の前で、いつも彼を待っていた。
春の終わりの頃から、部室が並ぶ棟の一番左。屋根が少し出ているこの場所が私のお決まりのポジションになった。
夏になると汗と泥にまみれた彼が、匂うからと1M以上も離れて歩いた。
秋になると、公園で時間が許すだけ2人だけの話をした。
冬になると坊主頭の彼に、ニット帽をプレゼントした。
そしてまた、晴がやって来る。
もう、この場所にとどまれない私たちは、不安と期待が入り混じる心を隠しながら、2人でバイバイをした。
離れていても大丈夫だよね、なんて言いあいながら。
でも、現実はそんなに単純じゃなく、自分たちなら何て幻想だった。
繰り返す毎日に、心も体もすり減らし、お互いを抱きしめ合う事すら忘れて行った。
もう2年も会っていない。
彼はきっと私の事など忘れている。
私が忘れていたように。
でも、こうしてフッと思い出す。
あの頃の季節の中の私たちはキラキラと笑っていた。
懐かしくもあり、羨ましくもあり、戻れないという絶望と、
少しの安心感が今の私を奮い立たせている。
もう一度、彼に会えたのなら、私たちは新しい道を歩けるのだろうか。
大丈夫だよねって、笑いながらあの頃の2人が言っている。
あの頃と違う私に。
終わり