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仕事はじめの日に、サラリーマンに『労働廃絶論』を配ろうとした結果・・・【出版社を作ろう】



※注:配れなかったという話です。



きっかけは、1/5(日)にとあるポストを目にしたことだった。

以前『14歳からのアンチワーク哲学』を献本した書評家の方が、レビューを書いてくれて、その紹介ポストをXにアップしていたのだ。

その投稿日が、あしたから仕事はじめという絶妙なタイミングであり、それに合わせてコメントも工夫されていた。

明日は仕事始め。あなたにとって“働く”意味って何ですか?

人びとがせっかく労働を忘れて休日を楽しんでいたところに、徐々に労働の足音が聞こえてきて、そして絶望とともに訪れる瞬間こそが「仕事はじめ」である。

人が労働をもっとも憎む瞬間と言っても過言ではなかろう。

その瞬間こそが、ゲームチェンジのチャンスである。


なら・・・



仕事はじめにカマさないなら、アンチワーク哲学者の名が廃る!!




やるしかない。

ではなにをやるか? 僕のなかには答えは一つしか用意されていなかった。





仕事はじめに絶望するサラリーマンに『労働廃絶論』を配る。




・・・・これしかあるまい。



とはいえ、何も考えずに断行するのは早急すぎる。少し冷静になって、僕はまとも書房ディスコ―ドにて、こんなふうに呟いた。

まずは、どう思うかを聞いてみたかったのだ。おもしろいと思うか、「つまらないからやめた方がいい」と思うのか。あるいは、あわよくば誰か一緒にやってくれないかという期待もあった。そういういろんな思惑を含めた軽いジャブであった。


すると、返事があった。


もし、実行するなら手伝いますぜ、兄貴。


コメントの主は、まとも書房の活動をいつも手伝ってくれていて、1/17に探偵ナイトスクープに出演することでお馴染みのセントくんである。


声をあげてくれたならやるしかない。


「よし、やろう!」ということで、淀屋橋か肥後橋、西梅田あたりのオフィス街であさ8時半からやろうということになった。

とはいえ、その時点で一抹の不安が漂っていた。

5日夜の時点で翌日の天気予報は雨。決行を予定していた8時半ごろは降っているか降っていないか微妙なラインであった。とはいえ、労働を廃絶しようという男はプランBを用意するほどの要領の良さはない。「降ったらまた考えよう・・・」ということで、僕たちは希望的観測のもと眠りについた。


そして、翌朝の僕は優雅な雨音に起こされ、目が覚めた。

※イメージ

まるで労働の神が必死で抵抗しているようだった。

やめようかな。どうしようかな。でもやりたいな。

そんなふうに迷っていたところ、阪急淡路駅であれば人通りがあって雨に当たらない場所もありそうだという意見があった。

僕たちは藁にも縋る想いで向かうことにした。途中、電車が遅延していたり、そのせいで満員電車にすし詰めされたり、傘を電車に忘れたりするトラブルを乗り越えながら、僕は阪急淡路駅へ向かう。

とはいえ僕は向かいながら考えていた。僕も学生時代に阪急淡路駅はよく利用していたので知っていたが、おそらく雨に濡れない場所とは、商店街の入り口線路下の高架である。

商店街の入り口は、商店街組合あたりの土地だろうし、高架下は鉄道会社の土地であろう。さすがに私有地でモノを配るには、所有者の許可が必要になる。許可が必要ないのは公道だけなのだ。



閑話休題:道路で本を配るのは合法か?

道路交通法的には、交通を著しく妨害する場合は警察の許可が必要ということになるらしい。だが、1人か2人でビラや冊子を配る行為が交通を著しく妨害していると言えるのか? これは意見が分かれているようだが、僕が調べて解釈する限りで言えば、表現の自由の範囲内ということになりそうだし、東京高判的にもオッケーという判例も出ているらしい。

「道路交通法第77条1項4号により公安委員会が定めることを委任されている行為の範囲は、法自体において明示するところの、一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為であることを前提とするものであることは、法文上疑いをいれる余地がない」

「『一般交通に著しい影響を及ぼす』ということが意味する一般交通に与える支障の程度は相当高度のものを指すと解さなければならない。」

https://j-c-law.com/gaitousendennojiyuu/ 

まず日本では憲法で表現の自由が保障されている。法律の王様である憲法で保障されている以上、誰がどこでどのように表現しようが自由であることが大前提なのだ。そのなかで例外的に、しぶしぶながらも、表現の自由が認められない状況を仕方なく決めておく・・・的なニュアンスで道路交通法が制定されている。だから、「一般交通に著しい影響を及ぼす」というのはよっぽどでないかぎり適用されないというわけだ。

狭い路地で10人とか20人でやれば著しい影響があると言えそうだ。だが1人や2人がやったところで、「著しい」とは逆立ちしても言えないだろう。

この前、新宿でやったときは一応警察の許可をとった。それは5人もの大所帯だったし、「念のため」という側面が強かった。今回は時間もなかったし取らなかった。



さて、困った困った。本を配るのに必要なのは、公道でありながら、雨に濡れない場所である。先に淡路駅に到着した僕はあたりをいくらか見渡していたが、どうにもそんな場所は見つからなかった。

その後、セント君が合流して、僕からの第一声はこうだった。




諦めよう・・・・





朝から来てくれたセントくんには申し訳ないが、あきらめた。そして、『労働廃絶論』をプレゼントして、朝マックを食うことにした。

涙の朝マック。

せめてもの償いとして僕は彼にたくさん朝マックをごちそうしたかった。だが彼は「本配るために気合入れて朝ごはん食べてきたのであんまりお腹空いていないです」とのことだった。


ごめん・・・。




文学フリマ京都の話や、探偵ナイトスクープの話、セントくんがユーチューバーデビューを計画している話など、いろんな話をした。つまり駄弁った。そして不完全燃焼感を抱えながら帰った。僕たちにできたことと言えば、ちょっとした茶番劇を撮影することくらいである(この茶番劇はまた、YouTubeにアップすることにしようと思う)。


これじゃ終われない。次は、仕事はじめの一週間が終わったあとの金曜日にやりたい・・・。できるか。できるだろうか。


乞ご期待である。

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久保一真【まとも書房代表/哲学者】
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