blossomdate【last café mocha】
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last café mocha
「――って、ちょっと待ってください。『透子』さんって誰っすか?」
「俺が頼んだのは。咲との結婚パーティ用のサプライズっすよね。これじゃ、小石先輩の恋バナじゃないっすか」
すっかり甘党になったタカはコンビニで買ったスティックタイプのカフェモカの甘い息を漂わせながら小石の脚本に突っ込んだ。結婚パーティを来年2月に控え、タカの頭は咲へのサプライズのことでいっぱいだった。
「と、思ってたんだよね。だからさ、そっちの原稿はボツ。タカのために編集したムービーはもうできてるよ。はい、こっちね」
「なんなんすかー、先輩。先にそっちをくださいよ。全部読んじゃったじゃないっすか。もう時間無いんすよ?」
二人暮らしのために独り暮らしの部屋から引き上げる最後の日、タカの部屋に残っていたのはキッチン用品とコタツだけだった。その上にはパソコンとコンビニで買ってきたカップ麺、みかんが3個とタカの好きな甘ったるいインスタントのカフェモカ。それらがまるで難解なパズルのように配置されてあった。
「はは、わりぃわりぃ。タカの筋書きがよく出来すぎてるからさ、直すとこなくて……。僕も書いてみたかったんだよね。理想の女性ってのを。結局、咲ちゃんはタカを選んでタカと結婚するって決めただろ。タカが卒業したら咲ちゃんと結婚するって宣言したのもさ、実現するわけだし」
「えっ? もしかしてヤキモチっすか。先輩モテそうなのに、そういや大学時代は俺ら以外と全然つるまなかったっすよね。いやでもこの話、架空の人物『透子』ってのを除いたら、俺らの大学時代のバイトや授業のエピソード、まんまっすね。あのマルコ教授も出てくるし。読み終えた後はマジで『透子』って綺麗な女の人が一緒にいたように思えてゾワッっとしましたわ。先輩、今からでも小説家いけるんちゃいます? 特にほら、第2話では先輩と『透子』は映画デートしちゃったりなんかして。コレ、映像化したいっすわ。いや~っ、でも俺が覚えてる限り、こんな人いなかったですけどね。実際こんな人いたら惚れそう。それ以外は、忠実に俺と先輩と咲の性格が投影さ……」
「――っと、おかえり、咲ちゃん」
サプライズターゲット咲の突然の帰宅にも小石は慌てなかった。
「寒―っ。だいぶ冷えて来たーっ、外、静かだし、外の椿も明日あたり咲きそうかな。ホンマに今日は雪降るかも。センパイっ。今日も片付け来てくれたんですか?いつもスイマセンっ。タカちゃんがこんなだから」
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