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ホタル、見に、来ちゃった~天秤座のきみの恋するpetit story~
きみの星座別 恋するpetit story
【 ホタル、見に、来ちゃった 】
東西に走る国道三七〇号に沿って、貴志川を上流方面に向かいました。「蛍は、今が見頃です」そう連絡をくれた彼のことが気になって、車を走らせていました。
信号も無く、外灯も無くなっていく。エアコンを切り、窓を開けて走ると、橋を渡るごとに、ひんやりとした風が入って来ます。対向車もなく、たった一台の車が真っ暗闇に突っ込んでいくような感覚なのです。そのうち、ラジオも入らなくなりました。私は、ようやく覚悟を決め、彼に電話することにしました。
「あっ、もしもし? 実は、だるま石渓谷あたりにいるんですけど……」
「えっ、今?」
「うん、今。来ちゃった。どの辺から見れるのかなって……あっ――いました。飛んでます! いっぱい飛んでます!」
暗闇と思っていたそこには、光がプラネタリウムのように広がっていました。独特のリズムで共鳴し合う幻想的な光に、今にも吸い込まれそうになりました。
「僕も、一緒に見ていい? もしよければ、少し待っててくれる?」
思い切って来ちゃった私にとって、彼を待つ時間は、長くて短い、かけがえのない夢心地の時でした。