blossomdate【02 Iced Coffee】
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02.Iced Coffee
「あ、それ、咲ともう観た。俺さ、咲ちゃんと付き合ってるんだよね。まだ言ってなかったっけ?」
小石の一言が透子に突き刺さったのは、午後の講義の前だった。窓からストレートにやってくる太陽の光はシースルーカーディガンを透過し透子の肌にジリリと当たっている。右斜め45度に置いてある小石の飲みかけのアイスコーヒーのプラカップの中で上の氷がカクッと下に落ち、カップ周りの雫がつたって机を濡らした。
興味ありそうな映画に誘ってみただけなのに、オマケで付いてきた返事が銃弾のように透子の柔らかい真ん中を貫いた。すでに知っていた見たくない答えを、真ん前で合わせられてしまった。
冬頃から「透子は小石と付き合っている」という噂が流れ、小石を男として先に意識してしまったのは、透子のほうだった。バイトのシフトも良く合うし、履修科目も、好きな作家も、好きな音楽もピッタリ合っていた二人はお互いのマンションを行き来して徹夜でレポートを仕上げたこともあった。傍目からはカップルに見えたのだろう。
否定も肯定もせず、二人ともがその噂を流すままにしていた。大学でもバイト先でも小石はいつもと変わらなかった。小石は、授業もドリップも表情を変えず、味も変えずに坦々とこなす。その姿に透子は安心感を覚え、いつもと変わらない関係がそこにあるように、己から湧き上がる何かは必死に抑えて込んでいた。
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