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ここにはきみの風が吹く~山羊座のきみの恋するpetit story~
きみの星座別 恋するpetit story
【ここにはきみの風が吹く】
「あっ、玉子持った?」
「玉子? 何するの? 茹でてくれるの?」
地域の人のご厚意で、お参りするとお雑煮が食べられると聞いていたので、僕はそんなことを言ってしまった。玉子は、蛇岩大明神さんへのお供えだという。
地域の人たちが支える、観光マップにも載らない小さな社。そこに初詣に行き、お雑煮を食べる。それが、彼女のお正月の過ごし方だという。僕も彼女に倣い、今年はそうすることにした。
「確かに、生卵をお供えするのは、珍しいかもね。ずっとそうしてきたから、馴染んでしまっていることもあるかな。蛇に出くわしたら、道を渡りきるまで、待つ、とかね。環境で、無意識に刷り込まれたことって多いかも。思い込んでることも多いし、窮屈だったらごめんね」
「僕は、蛇に出くわすことも無かったからね。でも、地域独特の風習に倣ってみるのは、好きだよ。ここは、ここなりのもの。ローカルルールも、面白い」
「楽しんでくれていて良かった。私も、今でこそ、楽しくなったこともあるかな」
もし、ここで生まれていても、僕は、彼女を好きになっただろう。狭くても、広くても、きみの暮らす町だから。