blossomdate【04 アールグレイな午後】
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04 アールグレイな午後
あの日は確か、午後2時15分を回ったところだった。店の客も落ち着き、ネルドリップ用の布を切ってセットしておくようにとのマスターの指示に、タカは黙って従っていた。
スコールのような雨が降りだした時、事件は起こった。
それまで楽しそうに小石と話していたピンヒール女の顔が凍りついた。小石は初めて、その常連のお客を強い口調でたしなめたのだ。その声は奥で作業しているのタカにも、マスターにも届くほどだった。
「お客様、申し訳ございません。どうぞお帰り下さい。お代は結構です。今日は僕が出させていただきますから」
「あんたね、客に向かってその言い方はなんなの! 私、もうずっと小石君の珈琲ばかりを飲みに来てるのよ。あんな子と付き合って、何がいいのかしら。二股してんじゃないの?わたし、この目でちゃんと見たんだからね。縁日で、あの子とイチャイチャしてる誰かさんをね」
ピンヒール女はそんな捨て台詞を吐くと、火をつけて間もないタバコを灰皿にねじ込み、カツカツと床板を鳴らしドアを乱暴に開け、代金を払わずに立ち去った。
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